わがまま 【3】

はーとふる・ぷち わがまま
【3】



富田さんの『手作りチャーシュー』のおかげで、美味しい夕食を済ませ、

久しぶりに日向さんと『世界遺産』のDVDを見る。

私は、世界遺産の中でも、ヨーロッパにあるものを見るのが、結構好きになった。

お城や、王子様、お姫様が想像できるのは、やはり楽しい気がするんだよね。


「史香……」

「はい」

「今日さぁ、舞台演出の黒島先生から、直接電話があったんだ」

「黒島先生?」

「うん……ほら、一人舞台とかを演出する、『劇団輝石』の」

「あぁ……」


大好きなDVDを見ているのにも関わらず、どこか日向さんの表情が固くって、

これはのんびり見ていられないかもと思いながら、お茶に口をつける。




『劇団輝石』




自らも俳優として舞台に立つ黒島先生は、

日向さんに来年早々の舞台にチャレンジしてみないかと、電話をよこした。

舞台なんて、日向さんはまだ、経験したことは無いはず。

いや、ライバルと言われている畑山さんだって、舞台に立った話は聞かない。


「正直、驚いたけど、嬉しかったんだ」


日向さんがこんなふうに話をするときは、きっと前向き。

嫌だったら悩むことなく、その場で断っているような気がするんだよね。



……でも



「田沢さんには……」


そう、私なんかよりも、日向さんにとって大事な田沢さんの意見は、

どうなのだろう。


「今日、ちょっと話をしたら、会社を通さずに、
直接僕に話をするのは失礼だって言って、怒っていたよ」

「まぁ、そうですよね、ルールから言ったら」

「でもさ、黒島先生は、僕にその気があるのかどうかを確かめたかったみたいなんだ。
そうでなければ、空回りするだけ、時間がもったいないからって。
その気持ちもわかるよ、配役が決まらないと、演出だって、色々と決まらなくなるし」


『世界遺産』のDVDはどんどん進んでいく。

あ……私の好きな『モンサンミシェル』が……


「聞いてる? 史香」

「聞いてます。それに、見てます」


私は画面を指差し、日向さんの積み重なる指導の結果、

『世界遺産』に興味を持ち始めたことを告げようとしたのに、

あれ? なんだか機嫌が悪そうなんですけど。


「田沢さんは、次は映画でいいって言うんだ。『相良家の人々』とは違って、
今のドラマの雰囲気を保てるよな作品を選ぶって譲らない」


そうか、そういうことなんだ。

日向さんは『舞台』にチャレンジしたいけれど、田沢さんはそれをOKしない。

史香はどう思うのか、自分の意見に従ってくれるのか、

それを聞きたいのだろう。


「日向さんの気持ちも、よくわかります。でも、田沢さんの気持ちもわかります」

「ん?」

「チャレンジしたい気持ちもわかるし、守りたい気持ちもわかるんです」


どっちつかずの意見だけれど、でも、本当にそう思う。

『BLUE MOON』の成功と、日向さんの誠実な人柄が幸いし、

今、業界人がもっとも主役として使いたい俳優というアンケートで、

1位を取ったばかり。

田沢さんにしてみたら、さらに地位を固めるためにと思うのは、無理もない。


「史香は、僕に舞台なんて無理だとそう思う?」

「いえ、無理だなんて思いません。日向さんは何をやるにも前向きだし、
一生懸命取り組むし、確かに初めてなのは不安もあるでしょうけれど、
誰だって、最初は……」


日向さんは真剣な顔で、私を見てくれている。

自分の思いを、ちゃんと伝えてあげないと。


「よし! 史香は賛成だね」

「へ?」


あれ? 私、すっかり誘導尋問にはまってる?

日向さんったら、急に鼻歌なんて歌いだして、わざわざDVDを止めて、

『モンサンミシェル』を呼び出してくれた。



ばっちり、しっかりと解説つき。



「あのね、日向さん」

「史香……」

「あ……あのですね」

「いつかは一緒に行きたいな、史香と」

「いえ、日向さん」


ずるいんだから……

私が耳元でささやかれるの、弱いの知っているんだもの。


「あ……今日も『BLUE MOON』ちゃんとつけてくれているんだ」


日向さんの人差し指が、『BLUE MOON』に触れて、それで、私のボタンに触れて、

そして……

素肌に届く頃には……





とりあえず、『モンサンミシェル』もどうでもよくなってしまって……

なんだか顔がポッ……となって……





「はぁ……」


気付くと、私はいつも、日向さんの腕の中にいる。

日向さん、子供みたいにかわいい顔で、寝ちゃって。


でも、これだけ日向さんが舞台にチャレンジしてみたいと思っているのなら、

私、ちゃんと背中を押してあげないといけないのかもね。



だって、日向さんの夢なら、私にも夢だし……





舞台に立つ、日向さんか……

それはまたそれで、格好いいこと間違いないし……





うん……







「バカ! 史香、何余計なことを言ってるんだ!」


次の日、『丸代青果』の事務室で、携帯を握る私の耳に届いたのは、

専務の声でも、社長の声でもなく、怒りに満ちた田沢さんの声だった。





 【4】 はこちらから……


史香と淳平、恋する二人の成長記録……
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コメント

非公開コメント

ああ~

淳平ったら、史香のせいにして田沢さんに言ったんだあ~
あらら~

困ったね、史香。
でも、ごめんね、私このラストに思わず笑っちゃってたわ。

職業婦人の私には、このお話が癒されるんです~♪

昨日はありがとうございした

昨日は訪問頂いてありがとうございました。

日向さん、史香の責任になってますよ~笑。ってかんじですね。
これからまたいろいろ始まりそうな予感ですね。

「わがまま2」の保坂さんのくしゃみに笑ってしまいました。

続きも楽しみにしています(^_^)

ありゃりゃ(^^;)

舞台は俳優の夢なんでしょうね。
ドラマや映画もそれはそれで素晴らしい場所ですが、
一発勝負、的な感じが役者魂を掻き立てる?

『史香が舞台の僕を見たいんだって』とか言ったのかな?

『モンサンミシェル』
湖に浮かぶ城、幻想的だわ~~
いつかは私も行ってみたい!!!!

余談ですが昨日の↓認証キーワードが5443(GO!yonyonさん)爆、爆、

うん、うん

れいもんさん、こんばんは

>淳平ったら、史香のせいにして田沢さんに言ったんだあ~

ねぇ、淳平君、史香を利用してようです。
あたふたする史香は、まぁ、いつものことですが。

>職業婦人の私には、このお話が癒されるんです~♪

ありがとう。
色々なパターンで書けたらと思っています。
れいもんさんにあうものを、選んでおつきあいください。
史香が癒しになるのなら(いや、淳平がか?・笑)嬉しいです。

お互いに

天川月乃さん、こんばんは

>昨日は訪問頂いてありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。
お互いに楽しく、続けましょう。

>「わがまま2」の保坂さんのくしゃみに笑ってしまいました。

はい、直接話を動かすキャラではないですが、
こういった『個性的』なキャラを描くのが、
好きなんですよ。

また、よかったらお付き合いください。

湖の城

yonyonさん、こんばんは

>舞台は俳優の夢なんでしょうね。

よく、そんな話を聞きますね。
一発勝負で、反応も直接来ますから。
快感も大きいのでしょう。

>『モンサンミシェル』
 湖に浮かぶ城、幻想的だわ~~
 いつかは私も行ってみたい!!!!

私もここは好きです。
史香に代わりとなって、発言してもらいました。
映像を見るたびに、惹かれます。
(パスポートないんですけどね)

5443……思わず笑ってしまった。
その通り、突っ走ってくださいませ。

プンプン

yokanさん、こんばんは

>こりゃ~波乱がいっぱいありそうなな感じが
 プンプンしますわ(笑)

プンプンしてますか?
今回の『はーとふる・ぷち』は、
小さなお話をちょこちょこと続ける方法です。
一気に全ては解決しないと思いますが、
のんびりつきあってやってください。