わがまま 【4】

はーとふる・ぷち わがまま
【4】



田沢さんから、怒りの電話が届き、朝からどんよりした気分になった。

日向さんはきっと、昨日史香と話をして、頑張ろうと盛り上がったくらいの内容で、

語ってしまったのかもしれないな。


ダメだな、私。

日向さんの作戦に、まんまとはまってしまって。


田沢さんの気持ちもわかるって話を、ちゃんと伝え切れなかった。





あれ? 彩花さん。


「彩花さん、何か」

「別に、ちゃんとした野菜を持っていっているのか、見ただけよ。
傷んだような野菜を詰められていたら、うちの信用に関わるでしょ」

「あの、それ、もう配送先ごとにしてあるので……」


伝票を取って、スチロールの箱が並ぶ前に戻ると、めずらしく彩花さんが立っていて、

私の配送用の箱をちらりとのぞいていた。

彩花さんがこっちに顔を出すなんてこと、珍しい。


「何よ、私が中身をいじったとでも言いたいの? そんな証拠ある?」

「いえ……そうではなくて」


時計を見ると、出発時間が迫っていた。

今日の1件目は、頑固なおじさんがいる店だ。富田さんのお店とは違って、

遅れたりなんかしたら、大騒ぎになってしまう。


「それじゃ、行って来ます」

「はい、史香ちゃん、気をつけてね」


事務所の奥から、社長の奥さんがそう声をかけてくれた。

『丸代青果』のみなさんは、本当にいい人が多い。

長男で専務の慎司さんも、一部だけ痛んだ野菜があると、従業員に分けてくれる。

パートのおばさんたちからも評判がよくて、

社長や奥さんも、明るく元気な人たちだ。



彩花さんだけが、少し違う。

いや、私にだけなのかもしれないけれど。



『彩花は、モデルを続けたかったんだよね、本当は』



『丸代青果』に入ったとき、慎司さんからそう聞いた事がある。

でも、社長の姪っ子だから、売れなくても居場所があるとか、

優先的に仕事をもらえるのではないかとか、陰口を叩く人も出てきてしまい、

奥さんがきっぱりと辞めさせた。


本人が納得できるまで、やり遂げられていたら……

もう少し、違った顔を見せてくれたのかもしれないな。


小雨が降る道は、いつもより車の数が多かったけれど、

予定より10分も早く、店に到着した。

コック見習いの男の子が荷物を運んでくれる。


「おはようございます、『丸代青果』です」

「おぉ!」


いかにも腕はあるが、ちょっと性格に難がありそうな男の人が、厨房の真ん中に立ち、

受け取った荷物の確認をする。次は駅前の料理教室だったな……


「おい、なんだよ、これ。足りないじゃないか、材料が」

「足りない? いえ、そんな……」

「そんなも何も、見てみろよ」


そんなはずはない。私は出発前に何度も数えなおした。

最後の伝票を取って、それで……




……それで




「これじゃ、足りないんだよ、どうするんだ営業途中で中止か?」

「いえ、あの……」




確信はない。絶対にとは言い切れない。

でも、もし、可能性があるとしたら……




彩花さんが……




今は、そんなことを考えている場合ではなかった。

私は、足りなくなった材料を、最後に回る店舗から抜き出し、しっかりと謝罪する。


「ったく、気をつけろ」

「はい、すみません」


何もここまで怒らなくてもという目で、見習いのコックさんが私を見た。

大丈夫ですという笑顔で、彼にもしっかりと頭を下げる。

もし、同じことが起こったとしたら、うちの父だって怒るだろう。

料理人にとって『材料』は、自分を表現するパーツの一つ。

そして、その材料が『料理』となったとき、思いが完成するのだから。


私は店を出て、すぐに会社へ連絡を入れた。

専務の慎司さんが出てくれる。


『わかった、いいよ。俺がこれから『SABON』には配達するから、
前島さんはそのまま続けて』

「すみません、専務。以後、気をつけますから」

『あぁ、そうしてくれ。でも、よかったね、同じ材料が積んであって』

「はい……」


私は慎司さんとの電話を切った後、沈みそうになる気持ちをしっかりと入れ替えて、

次の配達に向かった。





「ありがとうございました」

「いや……」


慎司さんはそういうと、私の洋服のすそをつかみ、店の奥へと引っ張った。

何を言われるのかわからずに、そのままついていく。


「申し訳ない」

「専務……」

「おそらく、彩花だと思う」


どうして慎司さんがそんなふうに犯人を決めるのかわからずに、

私はサインをもらった伝票を、しっかりと握り締めた。





 【5】 はこちらから……


史香と淳平、恋する二人の成長記録……
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コメント

非公開コメント

難のある彩花にも何かありそうですね。
史香をねたましく思わなくちゃいけない過去があるのでしょうか?!

ああ~、今日は淳平が出てこない。。
これがとっても残念だと思ってしまうので、
やっぱり淳平がいいんでしょうね、私♪

再びごめんね、史香(笑)

八つ当たりじゃん

えーと、これは『はーとふる』だよね、ももドラじゃないよね(笑)

なんだかな~彩花さん、棘あるな~
そりゃ色々有ったかもしれないが、他人に意地悪したって変わるものではない。

前にも有ったのかな?

おおおおお

さっそく嵐の予感が。
彩花は何かあったのかな。
う~ん。史香は耐えてますね。
史香と彩花のこらからが楽しみです(^_^)

淳平は……

れいもんさん、こんばんは

>ああ~、今日は淳平が出てこない。。

あはは……
1話を短くしているので、出ないこともありますね、確かに。
そこをなんとか頑張って、お付き合いくださいませ。

史香に謝らなくてもいいですよ。
淳平はファンあってこその俳優ですので(笑)

ふわふわ

yonyonさん、こんばんは

>えーと、これは『はーとふる』だよね、ももドラじゃないよね(笑)

あれ? 『ももドラ』してる?
おかしいな、ふわふわドラマのはずなのに。

>なんだかな~彩花さん、棘あるな~

ねぇ、あるでしょ。
あるからこそ、お話になるんですけどね。

彩花の訳

天川さん、こんばんは

>さっそく嵐の予感が。
 彩花は何かあったのかな。

1話が短いので、なかなか進んでいないように見えますが。
ちゃんと進んでおります。
彩花の意味のわからない意地悪。
さて、慎司は明らかにしてくれるのか……

で、次回へ!