わがまま 【5】

はーとふる・ぷち わがまま
【5】



届けるはずの『プンタレッラ』が、荷物から消えていた。

私は何度も確認し、間違えていない自信もあった。

でも、彩花さんが犯人だと決めるだけの、証拠は何一つない。


「史香ちゃんが出発した後、あいつが持っていたんだ、『プンタレッラ』。
撮影に使うからとかなんとか言って。
まぁ、うちの商品を持っていくことはたまにあるし、
あいつも仕事柄使うんだろうなと、その時はそう思うだけだった」


慎司さんに言われるまま、私は事務所のソファーに腰かけた。

私が声をかけた時には、彩花さん、何も手にもっていなかったけど。


「でも、親父が入荷した商品の在庫数を見たら、指定された数とプラス1しか、
入ってなかったんだ。そのプラス1は、商品がちょっと傷んでいて、
親父が別の場所へどけていた。
つまり、『プンタレッラ』が外へ持ち出せるはずがないってこと」


慎司さんは、私の電話で、すぐに彩花さんが荷物の中から抜き取ったのだと思い、

別の業者から買い取ったのだと話してくれた。

そして、あらためて申し訳ないと謝罪してくれる。


「専務」



そんなに何度も謝られると、辛くなります。



「あいつが、史香ちゃんに冷たいのはわかっているんだ。
きっと、今回のことも、意地悪しているんだろ。
帰ってきたら、しかっておくからさ、今日のところは許してくれないか」

「あの……」

「何?」

「私、彩花さんの気に障るようなこと、何かしたんでしょうか。
もし、そうなら気になりますし」


私の複雑な思いを理解してくれている専務の慎司さんなら、

聞いてもいいかもしれないと、そう思った。

『丸代青果』に勤め始めて、そろそろ2か月になろうとしている。

同じ年なのに、もう少し近くなれるはずなのに、

彩花さんが、私を嫌う理由。


「そうだよな、気になるよな、史香ちゃん」


気になります。

せっかくいいお仕事を見つけたと、思っているので……


「あいつから直接聞いているわけではないけれど、
おそらく、過去に未練があるんだと思う」

「過去に、ですか?」

「あぁ……彩花のやつ、高校生になる前まで、
少女雑誌のモデルなんかでチョコチョコ仕事をしていてさ、
本人はずっと続けていきたかったみたいなんだけれど、
叔父さんにバッサリと切られて」


慎司さんが言う、叔父さんとは社長のことだ。

社長にしてみたら、姪っ子の彩花さんに対して、思い入れもあっただろう。


「背も思っていたより伸びなかったし、年齢が上がると、だんだん仕事が減ってしまって。
時折、叔父さんの名前でもらってくるような仕事をさせるのは、
嫌だって母さんも言い始めてさ」


身内だからこそ、業界の厳しさもまた、怖さも知っている。

本当にそこに生きていくだけの実力がなければ、あっという間に消されてしまう。



まるで、最初からいなかったみたいに……



「彩花も納得して、モデルを辞めたのかと思っていた。
でも、そうじゃないんだな、本音は」



頭でわかったつもりでも、心がついていかないこと……確かにある。



「事務所に入りたての淳平が、しばらくうちにいたことがあるんだよ、
聞いたことあるでしょ」

「はい、『丸代青果』のみなさんは、もう一つの家族だって、日向さん言っていました」



そう、それはウソではない。

日向さんは、社長の目に止まり、芸能界に入ってから、しばらく丸岡家、

『丸代青果』に居候をしていた。仕事もすぐには入らなかったため、

仕分けの仕事など、力仕事をしていた経験もあったらしい。

花屋に就職をしようとした時には、首を縦に振らなかった日向さんが、

今回は応援してくれるのも、おそらく『丸代青果』だから。


「その淳平に、お袋が言ったことがあるんだよ。
真面目だからさ、もし、芸能界で全然芽が出なかったら、
彩花でもお嫁さんにもらってねって、もちろん冗談だけどさ」



日向さんの、お嫁さん……



「あいつ、僕は諦めないで頑張りますって、よくそう言っていた。
それからしばらくして、仕事が入り出して、で、今の地位まで上り詰めた。
まぁ、彩花にとってみたら、淳平はちょっと憧れた人でもあるし、
芸能界で成功したという夢を叶えた人でもある。それが羨ましいんだよ」



芸能人になりたくて、色々なチャンスを狙う人達。

そう、月曜日、テレビ画面から急に消えてしまった保坂さんも、

そんな中にいる一人だった。



「その成功者である淳平に、一番近い史香ちゃん……。
それがまた、あいつにはうらやましくて仕方がない。
淳平の性格は知っているからさ、俺も、彩花も」


納得しますというわけではないけれど、なんとなく頷けてしまった。

これから先もずっと同じなのかはわからないが、

彩花さんも、もしかしたら、心と現実のバランスに、もがいているのかも知れない。





それもこれも、日向さんが素敵なのがいけない!





と決めつけたらかわいそうだけど。


専務に話をしてもらい、私は少し気持ちが晴れた。

明日もまた、頑張ろうと思いながら、『丸代青果』を出る。


空には強く輝く星がいくつかあり、

私は胸の『BLUE MOON』に触れながら、早く本当の春が来るようにと、お願いした。





 【6】 はこちらから……


史香と淳平、恋する二人の成長記録……
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コメント

非公開コメント

確かに

彩花さん、嫉妬心から意地悪なんですね。

史香のいう通り、確かに日向さんは素敵すぎる!笑

これから史香と彩花はどうなるのかな~

お久しぶりです(^_^;)

    

   こんにちは!!(*^_^*)

ご無沙汰してました^_^;

『はーとふる・ぷち』楽しませて戴いてます(^^)

コメは久しぶりですが、いつもお邪魔させていただいてました(^o^)
ほかのお話も、日々のこともしっかり拝読させていただいてます^m^

さて、史香ちゃんと淳平くん楽しく着実に二人の仲を
進めていたと思ったら、平穏無事に…とはいかないようですね。。。

これから何が起こるのか?

楽しみに・・・じゃなくて^_^;
二人でどうやって乗り越えさらに絆を深めていくのか?
影ながら応援している私です。 …エラそうに…

異常気象で天候不順が続いていますので
ももんたさん、お体に気を付けてくださいねm(__)m

 
   ・・・では、また(^^)/~~~



誰の顔?

天川さん、こんばんは

>史香のいう通り、確かに日向さんは素敵すぎる!笑

あはは……ここ、笑ってしまった。
一応、相手役ですからね、素敵だと思ってもらえたら嬉しいです。
天川さんは、誰を想像します?
私は……ナイショ(笑)

さて、史香と彩花、どうなるのかは続きます。

成長記録

ネギちゃん、こんばんは

>コメは久しぶりですが、いつもお邪魔させていただいてました(^o^)
 ほかのお話も、日々のこともしっかり拝読させていただいてます^m^

ありがとう!
とっても嬉しいですよ。コメントは無理なく、
それでも来てくれていることがわかると、メチャクチャ励みになります。

>さて、史香ちゃんと淳平くん楽しく着実に二人の仲を
 進めていたと思ったら、平穏無事に…とはいかないようですね。。。

ねぇ、色々ないと、お話にならなくて(笑)

史香にも、淳平にも、それぞれの思いがあり、
時にはぶつかり、ケンカもするでしょうが。
きっとその先には……ということで、これからもぜひ応援してやってください。

本当に天気が突然変わるので、空ばかり見ています。
ネギちゃんも、体調管理にはお気をつけ下さい。
結構、一気に半袖になって、風邪をひいている話を聞きますから。