わがまま 【7】

はーとふる・ぷち わがまま
【7】



日向さんはあと3日でイタリアに出発する。

その前になんとか誤解を解きたいと思ったが、私の言葉に、反対の意思を感じたのか、

『仕事が遅いから』という理由で、会えなくなる。


「さて、出発しなくちゃ」


それでも、日々の仕事は動いていた。

今日は『ラーメン富田』に配送の日。

また、奥さんから畑山さんの話を、てんこ盛りに聞かされるはず。





昨日のドラマ、確かにかっこよかったんだよね。





「前島さん」

「はい」


彩花さん……

こんな時間にお店へ出てくるなんて、珍しい。

また、荷物をいじられたりしてないだろうか。


「あなたって、本当に淳平君のこと好きなの?」





そんなこと、面と向かって言われることかなぁ。

好きですよ……大好きだから、困っているんです。





「彼にとって、大きなチャンスなのよ。本当に彼のことを応援しているのなら、
背中を押してあげたらいいじゃないの。
この間だって、自分は周りから理解されないって、愚痴をこぼしていたんだから」



この間……

あぁ、あの日のことだ。



「理解されていないなんてこと、ありません。
マネージャーの田沢さんは、日向さんのことを一番に……」

「あなたも結局はスタッフ側からしか見ないのよ。
淳平君本人の心に、寄り添ってなんて、いないんでしょ」

「心?」

「そうよ、私にはわかる。
自分のやりたいことを応援してもらえない悲しみや辛さは。
周りから圧力をかけられて、諦めざるをえないなんて、そんなのナンセンスだもの」

「彩花さん」

「私は淳平君を応援する。精一杯応援するつもり。
あなたがそばにいるってわかっていても、それはそれ。
人の気持ちなんて、これからいくらでも変わる……ううん……」


彩花さんは携帯を開くと、そのメール相手に軽く微笑んだ。




「変えてみせる」





メールの相手は、日向さんだったのだろうか……





荷物がおかしくなることはなかったが、私の気持ちは乱れたままだった。

最後の配送先に到着すると、『ラーメン富田』のおばちゃんは、

思っていた通り昨日のドラマの畑山さんについて、細かく語ってくれる。



一つのセリフ、一つの表情。

彼が表現する全てを、きっと覚えているのだろう。



『史香には、結局わかってもらえないんだ、これだけ言っても』



あの日の、怒りと悲しみが混じったような表情が、私の中で蘇る。

いつも呼んでくれる『史香』の名前が、憎憎しく聞こえたのは初めてだった。





……近付くと、楽しいことばかりじゃないんだな。





「史香ちゃん、どうしたの?」

「あ、いえいえ、ボーッとしてました」


富田さんは心配して、眠気覚ましにと小さな缶コーヒーを出してくれた。

私はこれ以上ここにいると、なんだか泣きそうで、挨拶だけした後、車に戻る。


日向さんに舞台への誘いをかけた後、

黒島先生は『メビウス』へスポンサー契約の誘いを入れたのだろうか。

『メビウス』は企業として、宣伝できるチャンスを逃すはずはない。

それは『メビウス』にとって、日向さんが大切な……



価値を持っているから。



でも、私の中にひっかかったもの……



私はそれを解決したくて、田沢さんに合うことに決めた。



もし、田沢さんが単なる心配だけで、日向さんのことを止めているのなら、

それは私だって賛成できない。



でも、もし……



この『ひっかかり』を気付いてのことならば……





私は、なんと言われても、日向さんに『舞台』を諦めさせないと。





「もしもし、史香です。
お忙しいところすみません、ちょっとだけ会えませんか?」


今日は、イタリア出発前の最終衣装合わせがあった。

田沢さんも、私からの電話に何かを感じたのか、事務所へ来るように言ってくれる。

頑張っている佐藤さんに、紅茶によくあうパウンドケーキをお土産にして、

私は久しぶりに事務所へ向かった。





階段を上がり、あと少しで事務所になる。

社長がいたら、あらためて仕事を頑張っていると言わなくちゃ。





「もう田沢さんとは組めませんよ」




……日向さん




あの声は日向さんの声だ。

どうしてここにいるの?


扉を開けて出てきたのは、確かに日向さんで……


「あら……前島さん」

「史香……」


一緒に出てきたのは、なぜか彩花さんで……


「あ……そうか、そういうことなんだ。田沢さんからあれこれ言われて、
反対に回ることにしたんだ、史香も」

「日向さん」

「もういいよ……」




……何がもういいのかなんて、それだけじゃ……




どうしたらいいのかわからない私の横で、

彩花さんの口元が、少しだけ動いた。




 【8】 はこちらから……


史香と淳平、恋する二人の成長記録……
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コメント

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ずれ

史香と淳平の

歯車がずれていく……

これからどうなるのかしら

ドキドキ……

こじれる時は・・

二人できちっと話せばわかりあえることも、ほかの人が
入り込むとややこしい・・・(--;)
まして彩花ではな~~

どんなに反対されたって自分が『これっ!』と決めたなら
やり遂げればいい。
途中で道を変えたのを人のせいにしていたら、
前には進めない。

史香もこの際黙って見てれば?
って勝手に言ってしまう(^^;)

この先も

天川さん、こんばんは

>これからどうなるのかしら

そういってもらえると嬉しいです。
これからどうなるのかは、続きで……(笑)

色々とね

yonyonさん、こんばんは

>どんなに反対されたって自分が『これっ!』と決めたなら
 やり遂げればいい。

そうそう、そうなんだよね。
淳平がどんな気持ちでいるのか、なぜ反対されるのか、
お互いに本音で話せばいいのですが。
外野が増えてくると、色々と複雑になります。

なので、話を作れるのですが(笑)