わがまま 【10】

はーとふる・ぷち わがまま
【10】



『日向さん、きちんと話しましょう』


そうメールを送ったのに、返信がないまま、日向さんはイタリアへ行ってしまった。

自分が反対したことは間違っていないと思っているけれど、

それでも、伝え方が合っていたのかは、よくわからない。

自分の一番味方だと思っていた田沢さんと私に、理解をしてもらえなかったと、

日向さんも落ち込んでいるのだろうか。



それとも、彩花さんたちに囲まれて、

今頃、私の悪口にでも、花を咲かせているのだろうか。



帰ってきたら、会ってくれるかな……

あんな大きなことを言ってしまったけれど、

もし、会えなくなったら……





やっぱり、寂しい。





それから3日後、尚美がアパートに来てくれて、『結婚』を決めたと報告してくれた。

突然の報告に驚いた私だけれど、おめでとうの言葉をかけてから、

涙が止まらなくなってしまう。


「やだ、史香。喜ぶところなのに、どうして泣いているのよ」

「うん……そう、そうなんだよね」


制服を着ている頃から、互いに憧れる花嫁について語ったこともあった。

その尚美が、ついに幸せになるんだ。


「来てくれるよね、結婚式」

「もちろん行くに決まっているでしょ。
尚美のためなら歌でも踊りでも何でもやるって」

「やだ、何でもだなんて……」


笑っているんだか、泣いているんだか、わからないくらい顔がグシャグシャだ。

久しぶりに布団を並べると、眠るどころか話があふれ出てくる。


「ねぇ、ケンカした? 彼と」

「どうしたのよ、いきなり」

「……ちょっと聞いてみたくて」


そう、聞いてみたかった。

すれ違った時に、どう修正するのか。


「もっちろん、するに決まっているじゃない。
しょっちゅうよ、もう絶交、もう別れるなんてことも、何度もあったし」

「別れる?」

「そうよ、怒ってお皿を投げつけたこともある」

「へぇ……」

「言いたいことも言わないで我慢なんかしていたら、
その先で絶対におかしくなるじゃない。
これからもずっと一緒にいようと思う人だから、変な妥協はよくないと思うし」



その先……



「史香、ケンカでもしたの?」


尚美は、私が日向さんとお付き合いしていることを知っている。

週刊誌に写真を出され、日向さんが交際を宣言した頃、

盛んに電話をかけてきた同級生や先輩とは、全く違う。



普通のお付き合いだと、認めてくれている。



「うん、ちょっとね。メール送ったけれど、返信が来ないの」

「あらまぁ……」


言えることは限られている。仕事のことなどは一切口に出せない。

本当の親友なら、何もかもさらけ出したいけれど、

それが出来ないことも、ちゃんとわかってくれている。


「それでも、メールしなよ、史香」

「私の方が?」

「そうよ、もしかしたら、どうしようかな……なんて、悩んでいるかもよ、向こうが」


尚美は、男はプライドが高いから、折れたくないんだよと笑顔を見せた。

折れた振りしてあげるのが、女の優しさだと付け加えてくれる。



女の優しさ……か……



「帰ってきたら、食事でもしようねって、何もないような文章でも送ってごらん。
そうしたらきっと、『うん……』って戻ってくるから」


たとえ人気俳優でも、忙しいタレントでも、

同じ男だから一緒だろうと、尚美はピースサインをする。


「普通にね」

「そう、普通にね」


それからも色々な話をしていて、私たちはいつの間にか夢の中にいた。

ありがとう、尚美。

やっぱりあなたは、私の一番の友達……





結婚しても……ずっとだよ。





朝起きて、一番に日向さんへメールを入れた。尚美が言っていた通り、

揉め事など何もなかったように、

『帰ってきたら何食べたい?』と絵文字まで入れてみる。


「さて、行かなくちゃ」


仕事に向かう電車の中で、私の携帯が揺れた。

まさかと思ってすぐにメール相手を確認する。



『日向さん』



今、イタリアは何時だろう。

こっちが朝なのだから、時差を考えたら朝ではないはず。

すぐに返事をくれるなんて……



『史香の茶碗蒸しが食べたい あさって帰るから』



本当だ、尚美の言うとおりだった。

たったこれだけの文章だけれど、なんだか心が軽くなる。

順番に、気持ちを話していけば、田沢さんが舞台に反対した意味も、

日向さんはきっとわかってくれるはず。

私はつり革につかまりながら、つい口元がゆるんでしまう。

目の前の叔父さんが、不思議そうな顔をして見ているのに気づき、

今度は顔が真っ赤になった。




 【11】 はこちらから……


史香と淳平、恋する二人の成長記録……
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コメント

非公開コメント

ホント男って素直じゃないなー(あっ女もか)。
キッカケが欲しかったんですね、やはり(笑)

日向さんもイタリアへ行ってる間、少し冷静になって
考えてくれたんでしょうか?大切な人達である史香や田沢さんがなぜ反対するのか・・・。

メールを待っていた?

男なんて単純だから、こちらが折れた振りしてあげれば乗ってくる。
でもその単純さが可愛いのよね。
淳平も分かっているかもしれないけどね^^

少し時間が経ってみれば、田沢さんの言った事、
史香が何故反対したか、分かってくるはず。

早く仲直りしないとね♪

いいですねぇ……

尚美の一言がいいなぁ……

淳平、史香からのメール待ってたんだね。

いやあ、こっちまで口元がゆるみます。

単純明快

yonyonさん、こちらにもこんばんは

>男なんて単純だから、こちらが折れた振りしてあげれば乗ってくる。
 でもその単純さが可愛いのよね。

尚美との会話で、史香にも余裕が出来たようです。
淳平も、強く出ただけに、意地になっているのか……

さて、二人は仲直り出来るのか、
続きもおつきあいくださいませ。

持つべきは親友

天川さん、こんばんは

>尚美の一言がいいなぁ……

ありがとうございます。
尚美は史香の事情を知っていて、
あえて、深く触れようとはしません。
『親友』ってそんなものかな……と思う私の想像ですが。

メールを寄こした淳平。
史香のウキウキ気分は続くのか、
続きもお付き合いくださいね。

人を見る目

yokanさん、こんばんは

>悩んでいるとき、YESと言ってくれると安心するけど、
 NOと言ってくれる人の本心をよ~く考えてみないとね。

人って弱いので、言い顔してくれる人になびきやすいですよね。
わかっているからこそ、反対意見を拒絶したくなる。
淳平も、田沢のことはわかっていて、
おそらく『適当』にしていないことも知っている。

このジレンマはどう解決されるのか……
続きもお付き合いくださいね。