41 負けず嫌い

41 負けず嫌い



次号の『BOOZ』では、

『水蘭を探せ』で見事選ばれた3人の名前が掲載されることになった。

高部まひるさんと残りの2名に、私が電話をかける。


『本当ですか? 本当に私が?』

「はい、次号には名前だけですが、その後の号にグラビア掲載が決まりました。
後日、スタジオでの撮影が行われます。日程については、またご連絡いたしますので……」

『は……い……』


高部さんは間違いなく泣いていた。

確かに、『BOOZ』のグラビアを飾りたいと、熱心に語っていたけれど、

そこまで気持ちが入り込む理由が、何かあるのだろうか。

残りの2名にも連絡をして、それから3日後、3人が一度編集部に集まった。

撮影スタジオは1日しか抑えられていない。

時間を区切って、3人を撮影することになる。


「どうしましょう、メチャクチャ緊張!」

「髪の毛、切った方がいいですか?」

「あ……もう少し髪の色、変えちゃおうかな」


高部さん以外の二人は、なんだか楽しい職業体験のようなつもりで、

私の説明を笑顔で聞いているが、高部さんはずっと真剣な顔のまま、座っている。


「それでは、朝の9時から高部さん、昼の12時から佐々木さん、
15時からが田中さんで大丈夫でしょうか」


撮影場所の地図、緊急連絡先のこと、撮影に関しての説明を載せた契約書、

何か渡し忘れたもの、言い忘れたことってなかったっけ?


「すみません……最後に一つだけいいですか」


隣に座っていた菅沢さんが、3人を前にして立ち上がった。

浮かれ気分の佐々木さんや田中さんも、少し姿勢を戻し、前を向いてくれる。



「あなた方3名は、私たち『BOOZ』編集部員が選んだ3名です。
どうか自分に自信を持って、撮影に臨んでください」



高部さんを含めた3名は、その菅沢さんの言葉を、ありがたく受け取ったようで、

キラキラした目で、頷いている。





……ちょっと、ちょっと、何よそれ。

一番かっこいいこと言っちゃって、ずるくないですか?

そんなセリフでいいとこどりするのなら、最初から全て、

面倒なことも説明してくれたらいいのに。





みなさん、騙されてはダメですよ。

この人、メチャクチャ怖いんですから、仕事に関しては。

それに短気ですし、行儀も悪いですし、嫌味もたっぷり言いますし。




まぁ、いいか。




園田先生が描く『水蘭』は、父親が日本人で母親が中国人のハーフという設定だ。

気が強く、負けず嫌いだけれど、男性にはめっぽう弱い。

騙されてしまうことも、何度もある女性。


「うーん……これでいいんですかね」

「何? 和ちゃんはこの設定に不満?」

「だって、これだけ頭のいい女性なのに、男の人にだけは弱すぎません?
求められたらすぐに応じちゃうし、もう少しこう……ビシッと」

「男の理想が入るんだよね、漫画には。
園田先生もそこら辺はどうなんだと言ったみたいだけれど、
郁が絶対にそうしてくれって、譲らなかったみたいだからさ」

「菅沢さんが……」

「そうそう、『ピンクマシュマロ』のプリンとはまた違うけどね。
男の弱さをすぐに受けちゃう女性。気の強さとのギャップがいいんだってさ。
何もかもわかっていて、それでも騙されてあげる……ってことかな」



ギャップかぁ……

確かにね、ギャップがある男の人って、女の人だって好きかもしれない。


「前回の『ピンクマシュマロ』より、
郁の理想が入っているんじゃないですかね、これ」



何もかもわかっていて、でも男を受け入れちゃう女……か。

へぇ、菅沢さんの好みって、そういう人なの?





……ふーん





ほぉ……





まぁ、私には関係のないことだけれどね。

『水蘭』のことも、菅沢さんの好みのことも。





『BOOZ』の素人レポ隊に、また一人脱落者が出た。

今日はそれを細木さんが取りに向かい、私は留守番として連絡を待つ。

明日の撮影準備を進める菅沢さんが、

カメラマンとの打ち合わせで、奥のソファーにいた。

秋田編集長は、『SOFT』の増渕編集長と朝からお出かけ。

及川さんはPC画面で、表紙のチェック中。


そこに流れてきた1枚のFAXには、『野口みお GIRIGIRIガール』と書いてあり、

さらに手書きで『1等賞』の文字。

ご丁寧に一番上には『DEAR かおる』と名前付き。

『野口みお』って聞いたことあったなぁ……

誰だっけ。どこかで会った?



「『野口みお』さんは、女優さんですよ、AVの」



うわぁ、びっくりした。どうして私の考えたことがわかるのよ、及川さん。


「あ、そうでしたね、そうだ、そうだ、確か」


そうそう、わけもわからずに、現場についていくと叫んだっけ私。

菅沢さんが現場に来ると、張り切れる女優さんだったわ、この人。


「もしもし……ん? あぁ、なんだ」


そのタイミングで、菅沢さんが奥の打ち合わせ場所から出てきた。

私が持っていたFAX用紙が、菅沢さんの手に移動する。


「あ、本当だ届いてるよ。うん……おめでとう」


そうか、FAXが届いた確認と、売り上げが1番になったことを、報告しているんだ。

なんだかかわいい人。


「わかってるよ、あぁ、約束した。『みお』が一番になったらって」


会話を盗み聞きしているように思われるのは嫌なので、

ここは席を立ち、資料を探すことにする。

掲載するお店の写真、確かどこかに残してあった気がしたな……



「朝まで? うん……」



朝まで? AV女優さんと?



「あぁ……『みお』がしてほしいって言うのなら、断らないよ」



聞いているわけではないんですけど、耳に入ってくるんです。

菅沢さん、朝まで、AV女優さんと……



……してほしいことを……断らずに?



「飯島!」

「はい」

「悪い、お茶入れて」

「あ……」


突然こっちに話しかけないでよ、ドキッとするじゃないですか。

菅沢さん、いつのまにか電話切ってるし。


「あ……今、今、いれますから」

「何慌ててるんだよ」

「いえ……別に慌ててなんて」


お茶、お茶、どこだっけなぁ……




『あぁ……『みお』がしてほしいって言うのなら、断らないよ』




なんだろう、その言葉が頭をグルグル回り出してしまい、

お茶の葉を何杯急須に入れたのかも、わからないけど……

とりあえずいれちゃえ!



当然のことながら、私が入れたお茶は、とんでもなく苦いものになり、

菅沢さんから大きな雷を落とされた。



42 疑惑の目


腹も立つけれど、菅沢の行動が気になる和
和(のどか)の 『ケ・セラ・セラ』 な毎日を、応援してください。
本日も励ましの1ポチ、よろしくお願いします ★⌒(@^-゜@)v ヨロシクネ♪

コメント

非公開コメント

どっちも

血の繋がらない妹・・とっても微妙な言い回し。
妹みたいだけど、血は繋がって無いから恋人にも成れる。
王子ちょっと狡くないですか?

と思いながら・・・
和、郁の動向が気になるのは何故?

変わるのかな?

yonyonさん、こんばんは

>血の繋がらない妹・・とっても微妙な言い回し。

そう、微妙だから、『?』だからいいのです。
王子様は、そこまで考えていないでしょうが。

陽がいなくなって環境の変わった郁。
和の感情も、変わるのか?