42 疑惑の目

42 疑惑の目



『BOOZ』の最新号が完成し、お世話になっている先生方、

掲載されたレポ隊のみなさん、そして『水蘭』のモデルに決定した3名など、

プレゼント関係の方々に、お礼状を入れながら郵送の手続きをする。

これは私の大切な仕事。


「肩凝るなぁ、これだけ同じ作業繰り返していると」

「代わろうか、和ちゃん」

「いえいえ、それはダメです。私の仕事ですから」


細木さんの提案をありがたくお断りし、私はまた作業を開始した。

『水蘭』モデル決定の知らせに、ホームページはさっそく賑わいだす。

それにしてもみなさん、ネットでハンドルネームだと意見が活発なこと、

レポ隊になると、突然あたふたするのにね。


「おはよう」

「おは……おやおや、郁。今日はどこから来たのかな?」

「ん?」


菅沢さんは細木さんが言う意味がわからないという顔をして、

そのまま自分の席へ腰を下ろした。

逆に細木さんは何か知っているという顔で、大好きなポッキーを2、3本口に入れ、

ポキポキといい音をさせている。


「今朝、お前を見たんだよ、『東南線』の『原口高校前』でさ。
事故でもあって遠回りでもしているのかと考えたけれど、それはありえないしねぇ」

「針平、お前探偵にでもなるか」

「あはは……ほらみろ、あれは郁だろ。
いい匂いのするお花のお部屋から来たのかなぁ……
いいなぁ、郁はその気になればすぐに相手は見つかるしさ。
まぁね、今まで陽くんがいたから、色々と不自由だっただろうしねぇ」

「何言って……あのなぁ……まぁ、いいよ、別にどうでも」


『原口高校前』? 確かに菅沢さんの路線とは全く別だなぁ……

言い返そうとしてやめたってことは、認めているの?

ポッキー口に入れちゃってるし。


「言いません、言いません、プライベートには突っ込みませんよ、僕は。
男としては、当然の行動とも言えるわけでさぁ……」

「細木さん、これ、手伝ってください。なんだか暇そうなので」

「あれ? 何、和ちゃん、今いいですって言わなかった?」

「私、半分を先に郵便局へ出してきますから、後はお願いします」


若い男性が集まる場所ですから、それなりの話があってもいいですけれど、

もう少し私がいることも、頭に入れてもらわないと。

話の内容が、こう……ストレート過ぎるって言うのか……



『陽くんがいたから、色々と不自由だった……』



ふーん……

そうなんだ……

『手をたたきましょう』のリズムが、今日は妙に腹立たしかった。





『水蘭』の撮影日、モデル達に着せる『チャイナドレス』が先に到着した。

それぞれのサイズをあらかじめ聞いていたので、間違いがないかチェックする。

撮影開始1時間前から準備を始め、私は『高部まひる』さんが入る控え室へ向かう。


「おはようございます」

「あ……おはようございます」


プロのメイクさんに化粧をしてもらうと、全然違ってくるから不思議。

アイシャドーの入れ方、ルージュのひき方、撮影を考えて細部まで計算されている。


「緊張してきました」

「それは仕方がないですよ、プロのカメラマンがちゃんとほぐしてくれますから」

「はい……」


そうだ、これだけはと言われたことを言わないと。


「あの、書類にも書かせていただきましたが、これは『BOOZ』の企画です。
みなさんが思っているよりも、少し大胆なポージングを要求されることもありますが、
大丈夫でしょうか」

「……はい」

「もちろん、ヌード撮影ではないですから、そこは無理せずに。
編集者もつきますので、やりすぎていたら、ストップはかかります」

「はい、大丈夫です。それをわかって応募していますから」


そうだよね。あれだけ写真を送って来た高部さんだもの、

何もかもわかって、来てくれたに違いない。

むしろ、この後来る二人の方が、少し浮かれていたから心配かも。

そう思いながら撮影を開始したが、やはり素人さんは動きも固く、

表情も生き生きしてこない。

カメラマンはあれこれ語りかけながら高部さんをリラックスさせようとするが、

園田先生の『水蘭』のイメージにあった写真は、撮れていないような気がする。


「もう少し……脚、開いてくれないかな」

「はい……」


これだけのライトと、人が集まっている場所で、

恥ずかしがるなというのがそもそも難しいはず。

なんとか助けてあげたいけれど、私にはどうしたらいいのかがわからない。



「カンさん、もう撮影中止して!」



シャッター音の上に、菅沢さんの声が重なった。

カメラマンのカンさんは、もう少し粘ろうとレンズをのぞく。



「無駄だよ、これじゃ」



菅沢さんはそばにあったバスローブを高部さんに向かって放り投げた。

中止って、高部さん、困っているじゃないですか。



「菅沢さん、カンさんが言っているのに……『水蘭』の企画は……」

「飯島、お前がいっそここで脱ぐか」

「は?」


何言っているんですか。私がどうしてこんなスリットの入ったチャイナドレスを着て、

レンズの前に座らないとならないの。


「出来るわけないじゃないですか」

「だったら黙ってろ!」



はい、はい……



「高部さん、あなたこんな写真でいいの?」



こんな写真って、カンさんはプロですよ、プロ。失礼じゃないですか。


「見返してやりたい男がいるんだろ? 
だからあれだけ必死に応募してきたんじゃないのか」



見返してやりたい男?



「こんな中途半端な気持ちで、男がその気になると思ったら、大間違いだ。
個人の鬱憤晴らしに誌面を使うのはやめてくれ」


菅沢さんは高部さんが取らないバスローブを手に持ち、

あらためて彼女にかけようとしたが、高部さんはそれを床に放り投げる。


「やめません、私、やります。そのために来たんです、やめたくない」


高部さんはそう叫ぶように言い切ると、菅沢さんをグッと睨みつけた。



43 男心と女心


和! ここはお前が脱ぐしかないのか?(笑)
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コメント

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新たな人物

yokanさん、こんばんは

>陽くんとのお別れシーンにうるうる(TT)行っちゃったね~。

はい、お母さんのところに行きました。
これで菅沢の状況が、変わるのかどうか。

>水蘭の高部さんはワケアリだったのね。
 彼女がこれからどう変化していくのか、
 そのへんも物語の出てくるのでしょうか^^楽しみです♪

ありがとうございます。
楽しんで下さいね。