43 男心と女心

43 男心と女心



『BOOZ』で新連載される、園田先生の『水蘭』。

素人さんからモデルを3人抜擢し、今日はその撮影会。

一番バッターの高部さんは、表情も固くぎこちなく見えたが、それは仕方のないことで。

なのに、菅沢さんは撮影を中止にすると言い出して、

しかも、彼女が応募してきた理由を、『男を見返すため』と勝手に決め付けた。

でも……



『そのために来たんです……』



高部さんは、確かにそう言った。

そのために来たって、菅沢さんの推測が正しいってことだろうか。


「やってやろうと思ってきたのなら、君はこんな表情で満足できるのか?」


菅沢さんの問いかけに、カンさんはレンズから目を離し、

確かにその通りだと小さく頷いた。


「水蘭は……水沼蘭は、巧みな言葉で男をおとす女じゃない。
ただ、そこにいるだけで、自然と男が引き寄せられる。そんな女性なんだ」



水沼蘭……

男の寂しい目を見抜き、受け入れる女。

確かに、第1話からそんな雰囲気だった。



菅沢さんの左手が、高部さんの顎に軽く触れて、

そのまま少し上へ向けると、顔のパーツをじっくり見ているのか、動きが止まる。



「君が、水蘭を表現する気があるのなら……」



高部さんが『水蘭』になりきるのなら……



「今ここで、俺をその気にさせてくれ……」



『その気』?



「あなたならそれが出来ると思って、あなたを選んだ。
ただ、脚を出す、胸を強調する……それだけで男は動かない」



これはなんだろう。撮影? それとも映画のワンシーン?

なんだか、聞いている私のほうが、ドキドキするんですけど。



「はい……」



信じられないことだけれど、そこから高部さんの表情が、明らかに変わった。

今までは、カメラの前にいるということばかり意識していたように見えたが、

大胆に、そして誘惑するような目つきと、

脚先まで、神経を向かわせたようなポージング。

高部さんの目はカメラマンのレンズではなく、

その後ろに立ち、腕を組む菅沢さんに向いている。



『女』であることを、アピールするように……



もしかしたら高部さんは、瞬間的に『恋』をしたのかもしれない……

だたの『恋』じゃなくて、『求める恋』

お互いのことなんて、何も知らないはずだけれど、

高部さんは菅沢さんの挑発を、本気で受け止めた。



目の前の男を、『その気』にさせるため……



私は真剣に向かい合う二人の姿を見ながら、なんとか落ち着こうと大きく深呼吸した。





高部さんの撮影が終了したのは、それから30分後で、

出来上がりの写真を見たカンさんは、納得するように頷いた。





何枚かのインスタント写真を手に、私は高部さんの楽屋へ向かう。

メイクを落とした素顔の彼女が、出迎えてくれた。


「菅沢さんに、見抜かれていたんですね、私」

「本当に、誰かを見返したくて、応募したんですか?」

「はい、自分を振った男を驚かしてやりたくて。それで応募しました。
2年も『二股』かけられていたんです。
しかも、まひるは付き合っていると思っていたんだ……なんて笑われて。
こんな私でも、プロが関われば、いい写真にしてくれるって、そう思って」


撮影を終了した高部さんは、控え室で安心したと笑顔を見せてくれる。

よかった……


「でも違うんですね、自分が必死にならないと、いくら周りが必死になってくれても、
それは違うんだってことがよくわかりました。
なんだろう、言い方はおかしいかもしれませんけど、私、菅沢さんに言われてから、
本当にこの人の目を自分に向けたいって思いましたから」


それは私にもよくわかった。

高部さんの目は、ずっと菅沢さんを捕らえていた。


「どんな誌面になるのか、楽しみになりました。
全然違う自分が写っている気がします」

「はい」


高部さんは最後に笑顔を見せ、あらためて菅沢さんに挨拶をするとスタジオを後にした。





さて、その後に来た佐々木さんの撮影はと言うと……


「はい、こっち見てね」


カンさんは相変わらずのペースで続けていくが、菅沢さんはあまり動きがない。


「菅沢さん、いいんですか? これで」

「何が……」

「高部さんの時みたいに、挑発しないんですか?」

「しない」


あら、あっさりと……


「どうしてですか。佐々木さんにも指導しないと」

「俺の好みじゃない」





……は?





「好みって、じゃぁ、高部さんには本気で言ったということですか?
自分をその気にさせろって」

「あぁ、言ったよ。ウソついてどうするんだ」

「どうするって、本気の方がまずいですよね、これ、仕事でしょ?」

「別に、スタジオで抱き合うわけじゃないだろうが」





……なんという、男でしょうか、この人は。





「はぁ、そうですか。だったら、高部さんが電話でもしてきて、
この先を誘ってきてくれたら、菅沢さんは、はい、はいってついていくわけですか?」

「ん? そうだな……そんなことがあるのなら行くと思う」





もういいです。語りたくもありません。

目の前に座る菅沢さんの背中に向かって、思い切りアカンベをして見せた。


正面からは……怖いので。



44 あいつのこと


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コメント

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好みね~

高部さんはきっと、振った彼を見返してやれるでしょう。

ふーん好みの顔だったんだ。
じゃ自分は?と和は考えるかな?それとも
王子の好みはどんなかな?と思うのか・・・

和の思い

ナイショコメントさん、こんばんは

>和の気持ちが、郁と諒とどちらに向かうのか想像しながらの毎日です。

ありがとうございます。
どちらに気持ちが動くのか、また別の人が現れるのか、
まだまだお付き合いください。

夏の暑さに、疲れの出る頃です。
無理のないように、お付き合いください。
楽しみにしていただけて、嬉しいです。

和の思い

yonyonさん、こんばんは

>ふーん好みの顔だったんだ。
 じゃ自分は?と和は考えるかな?それとも
 王子の好みはどんなかな?と思うのか・・・

菅沢のコメントを受け取った和。
どう思うのか……は、続きで。