116 見えない気配

116 見えない気配



その日の密着取材は、完全にオフモードだった。

香奈さんは週に1度のお休みで、午前中からお気に入りのサロンに向かい、

ご指名の美容師に髪を切ってもらう。


「また、お店に来て下さいね」


そんな営業もしっかりと忘れてはいないみたいだ。

及川さんは特にあれこれ言うことなく、そんな場面もしっかりと写真に撮って、

午後には別の仕事へ向かう。


「あれ? あのカメラマンさんいなくなったの?」

「はい、すみません。『BOOZ』は少人数ギリギリで作っているんです。
午後は他の仕事が入っているので、先に失礼しました。
これからブティックですよね、私が撮影させてもらいますので」

「そうなんだ……」


及川さんがいなくなった途端、香奈さんの顔が不満そうに変わった。

なんだろう、まさかとは思うけれど……




及川さんのこと、気に入っていたんですか?




「あなた一人か……」

「はい、すみません」


謝ることではないはずなのに、そう言われるとつい言葉が出てしまう。


「まぁ、いいわ。誰もいないより」


ちょっとした嫌味を付け加えられながらも、また午後の取材が開始された。

さすがにお給料が私とは違うんだろうな、洋服の買い方が違う。

迷うことなく、お気に入りはどんどんカゴに入れていくし。


「すみません、色違いあります?」


店員さんも、ご贔屓にされていることを知っているのか、動きが早いわ。

あっちを見ても、こっちを見ても、若い女性ばかりのお店。





……の向こう側から……





「飯島さん、どっちが似合うと思います?」


香奈さんに話しかけられて、右の洋服を指差し、視線をまた元へ戻したが、

その場所にいたはずの人は、いなくなっていた。

なんだろう、別におかしなことが起きたわけでもないのに、

どうも胸騒ぎがしてしまう。


「飯島さん、何かありました?」

「いえ……」


『ブティック』からその後『靴』を見て、そして部屋の中に飾る『雑貨店』に入る。

透明なケースの中に、浮かぶろうそく。

それを見る振りをして、また道路の反対側を見ていると……





少し前に見た、あの人……





「香奈さん、ちょっといいですか」

「何?」

「あの……誰かにつけられているってこと、ないですか」

「……どういう意味ですか?」

「いえ、さっきから何度か見かける男の人がいて」


香奈さんはお店から外へ出ると、視線を右と左、両方に向けた。

そして携帯を見たあと、大きくため息をつく。


「変なこと言わないでください。誰もいないじゃないですか。
そんなこと言われると、ストーカーでもいるのかと、そう思えて怖くなるわ」

「そうですよね、ごめんなさい」


確かに、そこからはどこに行っても、一度も見つけることはなく、

2日目の取材も終了した。





「及川さん、明日ダメなんですか?」

「すみません、以前取材した店の再取材になってしまって。どうしても僕が行かないと」


及川さんがいた時には、あの男性見なかったんだよね。

いてくれるだけで、少しは安心だと思ったのに。


「なんだよ、信長がいないと成り立たないのか」

「いえ……そうじゃないんですけど」



……ないんですけど。



「何かおかしなことでもあったのか」

「いえ……」


おかしなことは、ないんだよね。

ただ、男の人の視線を感じたってだけだし。

そんなこといちいち文句つけていたら、また菅沢さんに怒られるかもしれない。

せっかく企画が採用されたんだもの。


「明日は俺も取材だしなぁ、郁も無理だよな」

「MBCに行かないとならないんだろ」

「あ、そうです、それはちゃんと行って下さいね」


リハーサルの始まった『ストレート』。

日向淳平サイドから、菅沢さんに確認したいことがあると、電話が入ってきたのだ。

それをすっぽかすわけには、もちろんいかない。


「まぁ、明日は通勤シーンと、接客シーンの撮影ですから大丈夫ですよ。
1時間もあれば終わります」


そうそう、私一人とはいえ、齋藤さん本人もいるし。

あの男が飛び出して来たら、大きな声を出して……



絶対に騒いでやる!



と、心に決めた。





齋藤香奈さんの、本日の出勤時間は『午後7時』。

その1時間前の6時に家を出るため、私は一昨日向かったマンションへ……

大きな路地から少し奥まった道、入る前に後ろを振り返る。



つけてきている人、いませんか?



返事もないですし、いませんね……



自動扉が開き、オートロックの部屋番号を押さないと……305だったな。

インターフォンの音がして、香奈さんが返事をしてくれた。

『BOOZ』の飯島ですと名乗ると、自動扉がスーッと開く。




「声を出すな……」




背中越しに聞こえてきたのは、知らない男性の声だった。






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コメント

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エエッ!!!

香奈さん、まさか及川さんが??まさかなんて言っちゃいけないな(^^;)


諒を見かけたのかと思ったけど、違ったのね。

捕まえて脅かすって、最早ストーカーの域を越えてる。

きゃ~~~どうする和?


何が起こるのよ~ーー;

え?!ヤダ~、何が起こるのよ~ーー;
まさかナイフなんて持ってないでしょうね・・・
あ、これはドラマの見すぎか(笑)

それにしても、テラスの君はなんだかはっきりしなくて
ちょいとイライラモードですわ^^;
記憶は戻っているのか、ないのか・・・
和ちゃんを何かに巻き込みたくないのかな~
謎は深まる~・・・

どうする、どうなる

yonyonさん、こんばんは

>捕まえて脅かすって、最早ストーカーの域を越えてる。
 きゃ~~~どうする和?

オートロックって、結構簡単に入れるんですよ。
和がどうするのか……は次へ!

どうする、どうなる

yokanさん、こんばんは

>それにしても、テラスの君はなんだかはっきりしなくて
 ちょいとイライラモードですわ^^;

はい、そうですよね。
和も郁も同じ思いでしょう。
そこら辺はもう少しお待ちを。

謎は次回へ!