135 占い的中

135 占い的中



『僕は……』


田ノ倉さんの言葉、止まってしまった。

なんて言いたかったのか、聞きたい気持ちは少しあるけれど、

でも……今は……



少しセンチメンタルな私の横を、思い切りボリューム全開の車が走りぬける。

窓には大きくアニメのキャラクター。

ものすごく強烈な自己主張。



『好き』なものを応援したくなる気持ちは、誰でも一緒。

表現方法は色々だろうけれど……


「こんにちは、菅沢さんいます?」


今、田ノ倉さんに話した計画、

菅沢さんが賛同してくれたら、さらに勇気も出るんだけど。





「それはアシカと諒に言えばいいだろう」

「それもそうなんですけれど、でも、菅沢さんの意見が聞きたかったんです」


そう、そう思ったのです。

田ノ倉さんには勢いよく語ってしまったけれど、本当に大丈夫なのか、

背中を押して欲しくてきたというか……

『それでいい』って言って欲しいというか……


「まぁ、それなら先生方も納得するんじゃないか?」

「ですよね……」


よかった、よかった。

隣の細木さんが席を外していたので、目の前にあったお菓子を少しだけつまむ。

ん……これ、美味しい、どこに売っているんだろう。


「おっと、飯島さん」

「あ、編集長お帰りなさい」


片手にはいつもの手帳。

鼻歌まじりに戻ってくるなんて、なんだか楽しそうだけど。


「何どうしたの。今度は、郁に意見を聞いているなんて。
新しい試みを王子様にでも反対されたの?
さっき屋上で、何やら楽しそうに話しこんでいただろう」


あれ? 話しこんだって、どこから見ていたんですか。

いや、別に話しこんだわけではなくて……確かに、楽しかったは楽しかったですが……



今、菅沢さんってば、どんな顔してます?




……うーん、わからない。


「偶然、田ノ倉さんが来てくれたので、学校にお願いする話を……」

「天気がいいからさ、屋上でラジオ体操をしようかと思ったら、先客がいて。
二人で向かい合っているし、同じようなお食事をしているし、
遠慮しちゃったよ、おじさんは……。デートなのかな……って」


あれ? どこにいました編集長。忍者よりも姿を消すのがうまいですね。

それになんだか目で見た情報より、ゴージャスな語りにしてくれちゃって。


「ヒューヒューって声かけをしようかと思ったけれど、
田ノ倉は社長の弟だったことを思い出したよ」


ヒューヒューって、それは声ではないですし、

田ノ倉さんが社長の弟だったことを今思い出したんですか?

編集長、そんな妙な気をつかっても、これから出世は絶対に無理ですよ。


「なんだ、諒には話したのか……ゆっくりと。だったらそう言えばいいのに」


ゆっくり? あれ? そんな言葉、出ましたっけ?


「話しましたよ、だって田ノ倉さんが準備室の副責任者ですし……」

「で? 反対されたのか」

「いえ……」

「だったらどうしてここで語るんだよ、俺の意見なんてどうだっていいだろうが」


うわぁ……いつにもまして投げやり。

あぁ、もう、この重たくなった空気、編集長、責任持って戻してくださいよ。


「郁はご機嫌斜めか、まぁ、いつものことだからほっときなさい」


編集長、菅沢さんにはずいぶん言いますね。

社長の息子だってこと、実は忘れていませんか?


「飯島さんって何座?」


は? どうしてこんな時に。


「おひつじ座ですけれど」

「おぉ……今日は気をつけたほうがいいね、
占いの雑誌には、『思わぬ邪魔者に、余計なことをされるって書いてあるよ』。
僕は『いて座』でね、『口は災いの元』って書いてあるんだ。
今日はおとなしくしていないと、余計なことを言わないように」


『口は災いの元』確かに……。

もう遅いですよ編集長。その占い、よく当たりますね。

菅沢さんの方をチラッと見たら、いつもよりキーボードを叩く音が、

少し強いような、そんな気がした。





『いて座』の秋田編集長に余計なことをされたおかげで、

『おひつじ座』の私は、慌てて『準備室』へ戻ることになった。

それでもこの企画に賛同し、協力したいと願い出てくれた学校は、

思ったよりも多く見つかり、計画通り学生だけで制作すれば、

確かに経費は抑えられる……が。

メジャーなメンバーを入れておかないと、宣伝効果が望めないという意見もあり、

準備室ではそれぞれの立場から、意見交換が行われる。


アシカ部長はその真ん中でじっと腕を組み、議論の攻防を見つめ続け、

『山手線カルテット』は、自分たちの企画のほうがいかに優れているのかを、

あらためて私たちに押し付けてきた。

運動会の綱引きではないけれど、少し隙を見せればあっという間に押し切られそう。


「品川さん」

「なんですか」

「それほどおっしゃるのなら、一度、タマゴさんたちに会いませんか?」


いつまでも互いの土俵でやりあっても、勝負は決まらない。

こうなったら、とりあえずこっちの陣地に入ってもらうことも、

一つの手ではないだろうか。日向淳平のことを認めていなかった菅沢さんも、

目で確かめたことで、気持ちを変えてくれた。


「私が段取りをします。プロの方が素晴らしいのはわかりますけれど、
それを目指し、日々努力している人たちのことも、見てあげて欲しいんです。
『秋月出版社』には『MOONグランプリ』をはじめとした、
これから……の人たちを応援する賞やイベントが多数あります。
だからこそ、選択肢に入れられるのか、検討だけでもしてください」


品川さんは、私のこの意見にもOKを出してこない。


「ミスター品川」

「品川さん……」


田ノ倉さん……

アシカ部長の発言を遮るなんて……

一歩前に出た田ノ倉さんに、私も『山手線カルテット』も、互いに希望の視線を向けた。






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コメント

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No title

拍手コメントさん、こんばんは

>なんとなく終わりが近付いてきているのかなと思いました。
 まだまだ終わって欲しくないのですが。

いつ終わりなのかに関しては、ナイショですけど、
あと100話……はないです(笑)