137 メリット

137 メリット



『お前、勝負あったみたいな気持ちでいたら大間違いだぞ。
『映報』にとっては、『タップ企画』との方がメリットがあるわけで、
それをお前がこっちに引っ張るだけの、材料は揃っているんだろうな』



1日が終了するベッドの中で、今日のあれこれを思い出す。

菅沢さん、私が頑張っているっていうのに、相変わらずのキツイ言葉。

『タップ企画』から『タマゴ』へ移行するメリット。

そんなもの『経費を抑える』ってことじゃないのかな、他に何かある?

『映報』だって、『秋月出版社』だって、先生方だって、

そこが一番のメリットと言えない?



メリット……メリット……メリット……

繰り返しているだけで、『髪の毛』が綺麗になりそうだけど。

うーん……



うーん……





「ふぁ……」





とりあえず、明日また起きてから、考えることにしよう。

眠いし……





そんなこんなで3日が経過し、

予定通り、私たちは里奈さんの待つ学校へ、授業見学をしに向かった。

対応してくれた先生は、とても感じのいい方で、

学生たちも何か大きなことが動くかもしれないと、

期待感いっぱいの視線でこちらを見ている。


「卒業生の砂川から、おおよその内容は聞きました」

「はい……」


先生は、企画に理解を示してくれたため、思っていたよりも話はテンポよく進む。

学校と実社会を結びつけることが、とても難しいため、

こうした企画が学生たちの励みになるのだと、本当に感謝された。

品川さんも上野さんも、黙ったまま話を聞いている。

もちろん、決定事項ではないことも承知で、最後はぜひにと頭を下げられた。


「驚きだったわ、学生がパワフルで」

「そうでしょ、若い人の力って、すごいんですよ」

「『タップ企画』とのコラボを勧めてきたのは実玖さんだって言うから、
どう納得してもらおうかと考えたけれど、この勢いを実際に見てもらえば、
いけるんじゃないかな」


実玖さんかぁ……

私が絡んでいると知れば、それだけで反対しそうだけれど。

でも、東原さんの言うとおり、ビジネスとして納得してもらうしかない。

これは、個人的な恨みや、ねたみでやることではないのだし。

そういえば、私と東原さんの後ろで、男たち二人は黙ったまま歩いている。

彼らの思いはどうなんだろう。


「品川さんと上野さんは、どう思われましたか?」

「飯島さん」

「はい」


彼らにだって、若い人の情熱は伝わったはず。私は自信満々に、品川さんの方を向く。


「気合はわかりました。でも、これでは無理ですね」

「無理? どうしてですか。学生もみんな楽しみにしていますし、
経費だってあれだけかけないとならないところを、押さえられるんですよ。
品川さんも見ましたよね、決して学生だから質が下がるなんてこと……」

「これでは副社長の許可が下りないと思います」


副社長? あぁ、実玖さんのお兄さんか。兄妹揃って面倒だな。


「うちにとっての『メリット』はなんですか?」




『メリット』




「メリットって……」



シャンプー……のことではないですよね、当然ながら。



「『タップ企画』さんとのコラボは、それ以上に生み出す別の意味があります。
映像権と、ビデオ制作の分野でもいい方向へ話を進ませやすくなるからです。
あの学生たちと組んで仕事をして、『映報』に何かメリットはあるのでしょうか」

「メリットは……」

「うちがすでに提出した企画を、覆せるだけのものは、感じませんでしたが」

「いや、ですから、経費が」

「経費? それは先生方にお支払いする金額が増えるかどうかの話ですよね。
そもそもそこも園田先生以外、みなさんOKを出したではないですか」

「でも……」

「それだけなのなら、検討する必要性はないですね」


品川さんと上野さんが、私と東原さんを颯爽と追い抜いた。

東原さんはそれに続くけれど、私は……




菅沢さんの言うとおりだった。

『映報』を黙らせる材料、つまり『メリット』について、私が甘かった。

向こうは、はじめから『経費を抑える必要』なんて感じていない。

先生方が損をすればそれでいいと思っている。

『メリット』って急に言われても、後から考えようなんて思っていたし……

学生の姿を見てもらったら、それで動くと思い込んでいた。

『若い人たちに頑張ってもらうため』なんて、それだけじゃ……


「飯島さん、無駄な時間を使うのはやめましょう。
はじめの企画書をそのまま通せば済むことです」

「いや、あの、品川さん」


動くと思ったのに……

何かが動くと思ったのに……

『準備室』へ戻る足取りは、重たくて、なかなか前へ進まない。

東原さんは学校での映像制作をする際、

『映報』が絡めるようにすればいいのではと意見を出してくれたが、

『メリット』と言えるほどの、大きな金額は望めない。

どうしよう……





「ミス飯島、東原、ミスター品川、上野、どうでしたか?」


アシカ部長は私たちを待っていてくれて、すぐに声をかけた。

隣には田ノ倉さんがいて、同じようにこっちを見る。

二人とも、期待しているような目が、なんだか……


「行ってきました。思っていたよりもみなさん好意的でしたし、悪くはないと思います」

「おぉ……」


品川さんは、『今回の企画以外なら……』という条件を、そこに差し出した。


「うちが絡まないものなら、それでもいいのではないですか?」

「絡まないもの? これではダメだと……」

「ダメですね」

「少し待ってください。『メリット』なら……」


ダメかもしれない。でも、このまま引き下がるのは納得できない。

少しだけ待ってもらえたら、24時間でも悩みぬいて、それで……




「『メリット』なら、僕が考えました」




田ノ倉さんが立ち上がり、何が起こるのかわからない私たちに向けて、

1枚の紙を配ってくれた。






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