149 お荷物の成長

149 お荷物の成長



『待ってる』


樋山さんと話しかぁ……

したいような、したくないような。


「和ちゃん、これいいね」

「あ、そうですか? 細木さん」

「うん、作りもしっかりしているから、コレクターの心をくすぐるし、
センスいいよ」

「確かにそうですね、なかなかこれだけ凝った作りのものはないと思います」

「本当ですか? うわぁ……」


及川さん……

及川さんに興味を持ってもらえると、なんだか嬉しい。

本当に『コレクター』に受け入れられる自信がつきます。


「飯島さんはすごいですね」

「すごい? どうしてですか」

「いえ……菅沢さんの言うとおりだと思って」



菅沢さんの、言うとおり?



「どういう意味ですか?」

「僕がなかなか取材にいけなかった頃、菅沢さんに言われたんです。
信長のフォローなら、自分と細木がいくらでもする。
だからお前も勇気を出して、不恰好でもいいから『1』になってくれって」



『1』になる話。

そういえば、細木さんから聞いたことがあった。

具体的にどんな話だったのかは、聞けなかったっけ。



「一番最初に、飯島さんが『BOOZ』へ来た日、菅沢さん褒めていたんですよ、
女性なのに覚悟を決めて、この雑誌へ入ろうとしたのはたいしたものだって。
あの子は他の人と、目の輝きが違ったって」


目の輝き?


「菅沢さんが褒めたんですか」

「はい。女性の方も何名か、入ってきたことはありましたが、
みなさん仕方なく来たという雰囲気で、挨拶の時からどこか嫌そうでした、
だからすぐにやめてしまったんですけど。想像と違って結構きついですからね、
編集者って。しかも、この業界ものは……」


確かに、女性に向いている職場とは、言えないだろうな。

トラブルなんて、あちこちにあったし。


「編集者として伸びていく飯島さんを見ながら、
菅沢さんはなんとかもっと上の世界に送り出したいと、思っていたみたいです」


上の世界かぁ。

確かに、いくら『BOOZ』が売り上げを伸ばしても、

『秋月出版社』は『BOOZ』の広告を会社の壁にぶら下げたりはしないだろう。

看板雑誌はあくまでも別だから、それが上と言うことになるのだろうか。


「飯島さんがこうして活躍できることを、
きっと、菅沢さんは見抜いていたんでしょうね。
僕には、こうして作品を持ってきた飯島さんが、キラキラ輝いて見えます」

「……いやだなぁ及川さん、いつからそんなに褒め上手になったんですか」

「和ちゃん、次の作品はいつなの?」


細木さん、ここで勝手に名前を呼ばないでください。

今振り向いたら、目から涙がこぼれ落ちそうです。

あぁ、もう、嫌だ。こんなふうになるためにここへきたわけじゃないのに。

何事にも興味を持たないような及川さんが、珍しく私を褒めたりするからですよ。

もう!


「和ちゃん……」

「飯島さん……どうしました?」



『成長』かぁ……

私、成長できたのかな、この1年で。

『秋月出版社』の看板雑誌へ異動出来るくらい、伸びたのかな。

期待してくれているのなら、そばにいて、もっと指導してくれたらいいのに……



まだまだだ、お前甘いんだよって、厳しいことを言ってくれたら、

もっともっと伸びるかもしれないのに。



それなのに、勝手に旅行へなんて行っちゃって!



「どうかしたんですか?」



『会いたい』……ただ、それしか頭に浮かばなかった。





完成品を『BOOZ』で披露したあと、『準備室』へ戻ると、

学生たちから感謝の寄せ書きが届いていた。

『いい思い出になった』という人がいれば、『絶対にプロになる』と宣言する人もいる。

田ノ倉さんが言ったように、『過去から未来へ』続くものになったのだと、実感した。


「飯島さん、園田先生のところへ行きましょう」

「……はい」


京塚先生の作品は完成したけれど、そうそう園田先生のはこれからだった。

これを軌道に乗せてしまえば、『準備室』は解散になるんだっけ。





「……これ……ですか」

「はい、気が向かないのなら、タクシーを呼びますが」

「いえ、大丈夫です」


田ノ倉さんの運転、怖いなんてことはありません。

むしろ、こうして運転してくれるようになったことが嬉しいです。


「園田先生には、世話になりっぱなしです」


田ノ倉さんは、園田先生があの時怒らずに、

他の先生方と同じようにサインをしていたら、

ここまで準備室が動かなかったのではないかと、話してくれた。

それはまさしくその通りだと、私も思う。


「厳しいけれど、情にもろくて、本当にいい方ですよね、園田先生」

「はい。今回も、トップバッターは京塚先生でいいわよ。またごねるからって」

「あはは……」


若い頃からライバルだった二人、今でも一番張り合っているんだな。

ライバルかぁ……


「飯島さん」

「はい」

「郁から、連絡はないのですか?」

「……ありません」


そう、連絡もない。

編集長あたりは連絡先を知っているのかもしれないけれど、

菅沢さんからメモをもらって、わざわざくだらないことを連絡するのは、気が引ける。


「お荷物から解放されて、自由にしているんです。
連絡したら怒られますよね」


怒られるかな、誰かから連絡先聞き出したら……

『何やっているんだよ、仕事しろ』って、ぶっきらぼうに言いそうだ。


「そうですか」


私は思わず、田ノ倉さんの方を見てしまう。

いつもなら『そんなことないですよ』って、笑ってくれるのに。

『そうですか』ってことは、

田ノ倉さんも、菅沢さんがそういうと、思ったってことですか?


「ここを右ですよね」

「はい」

「今日は混んでいないみたいですね」


話が別の方へ向いてしまった。

そこから菅沢さんのことに触れることなく、私たちは園田先生のところへ到着した。






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コメント

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No title

そうだよ、和、会いたいよね。
( ̄  ̄) (_ _)うんうん

私も会いたいです。

No title

るりさん、こんばんは
お返事が遅れてごめんなさい。

>そうだよ、和、会いたいよね。
 ( ̄  ̄) (_ _)うんうん

いないことで感じる何か……
和も色々と考えていることでしょう。
はい……