23 真実の扉 【23-1】

23 真実の扉


【23-1】

亡くなった母が、伯父宛に出した手紙。

僕が読むべきではないのかもしれないが、素通りすることは出来なかった。

誰がこれを送ってきたのか考えたとき、頭の中に一人の男が浮かぶ。


「これ、送って来たのは拓かもしれない」

「拓ちゃんがこれを?」

「うん」


僕は封筒の中から、数枚の便箋を抜き出した。

今日や昨日書いたものではないことがわかるくらい、便箋の色も褪せている。



『お兄さんへ』



母の出だしは、季節の挨拶から始まっていた。

僕はその中に出てきた、ある文字に目が留まる。



『歩』



この手紙は、母が僕のことを伯父宛に書いているものだった。

1歳になったこと、数歩前に出たと思ったら、

どんどん歩けるようになったこと、気に入らないことがあると、

机の上を叩き、大きな声で泣くこと。

子育ては疲れるけれど、毎日楽しい発見もあると、

母は嬉しそうに文章を綴っていた。



『歩は、私たちの天使です』



子供に恵まれなかった両親が、僕を引き取り、本当に愛しく思い育ててくれたのだと、

時を越えた文章から、確かに実感した。



『これからも、お兄さんと朋子さんから託された……』



「……朋子?」





お兄さんと朋子さん……





「歩さん……どうしたの?」





朋子とは、誰のことだろう。

伯父は、『養子斡旋団体』から、僕を引き取ったといい、

そういう事情があるので、相手の名前も何もわからないとそう言った。

しかし……



『お兄さんと朋子さんに託された……』



この文面だと、伯父は間接的に関わったというより、

直接的に関わっているように思えてくる。

しかも、産んだ人は『朋子』と言うのではないだろうか。



いったい……

どういうことなのだろう。





『お前の父親は、うちの親父だ』





「やっぱり拓だ。これを送ってきたのは、拓しかいない」

「歩さん……」


社長室で会ったとき、あいつは僕に対して、憎しみの目を向けていた。

ここ数年、急に態度が変わったのは、偶然、この手紙を見つけたからではないだろうか。

尊敬すべき父が、自分以外の息子を持ち、その援助をしていることを知り、

より一層、身を守ろうと心を閉ざしてしまった。



だとしたら、僕は……

この先、どうすればいいのだろう。



その時、玄関のドアノブが動き、目の前に祖母が戻ってきた。

僕達が呆然と立っているのを見て、どうしたのかという顔をする。


「どうしたのかね、二人で」

「あ……うん」

「すみません、歩さんが目覚めてくれたので、
二人で、少し買出しをしてきてもいいですか?」

「買出し?」

「はい。男の人が一緒だと、重い荷物も、助かることが多いので」


遥はそういうと、『パール』は残してもいいかと、祖母に尋ねた。

祖母は、大丈夫だから行っておいでと、送り出してくれる。

僕は、送られて来た封筒を四つ折りにして、ポケットに押し込むと、

演技をした遥に手を引かれ、部屋を出た。



【23-2】

手紙の謎から、真実の扉が開くとき……
歩の前に見えてくる 『天使のはしご』。
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