23 真実の扉 【23-5】

【23-5】

「森中家の人ってこと?」

「……そういうことみたいだ」


拓の母親は、森中家の娘さんで、伯父は婿に入った。

『TEA』さんの年齢を考えると、拓の母親、道子さんの姉と言うことだろうか。

予想している出来事よりも、事実はさらに上をいく。


「ここまで色々と知ることになったのだもの、おじ様はきっと、
全てを話してくれるはず」

「……うん」


そうだ、今、僕がここであれこれ考えても、いい結果など出てこない。

僕は、集められるヒントだけを持ち、伯父にぶつかろうと決めたのだから。


「おにぎり作って、また待っているから」

「ん?」

「ごめんなさい。他に出来そうもないから……」


たとえ、森中との関係が崩れても、この人だけはきっとそばにいてくれる。

今までも、靄のように広がる色々な思いの中から、

彼女の言葉が僕を救い出してくれた。


「うん、おにぎり作って待っていて」

「はい」


遥の一言で、また緊張した気持ちが、ふっと軽くなった。

不思議なくらいに、色々な事実を知っても、何とかなる気がしてしまう。


「ねぇ、あと2曲だって、終わったら何か食べに行かない?」

「いいよ。何にする?」

「お寿司」

「寿司?」

「そう、クルクルまわるお寿司」


遥はそういうと、左手の人差し指をクルクルと回した。


「それじゃ皿回しだよ」

「そう?」


僕達は、バイオリンの演奏を最後まで聴き続け、そして遥の希望通り、

クルクルまわる『回転寿司』の店へ向かった。





『森中朋子』



持田さんは、僕がなぜ『スレイド』に行き、アルバムを見ていたのか、

おそらく気付いているのだろう。

だからこそ、あの立場で表現できることを、教えてくれたのだとそう思えた。


もし……

『TEA』さんが『MORINAKA』に関係している人物なのなら、

確かに伯父が僕を援助することを知っても、伯母は黙っていたかもしれない。

自分だけしか後継者はいないと思っていた拓にとって、

予想外の相手であり、腹を立てる気持ちもわかる。



あいつは、どこまで知っているのだろう。



遥と一緒にいるときには、どんな出来事でも事実でも、

受け止めてやるという気持ちでいたが、こうして部屋で一人になると、

途端に寂しくなる。

携帯に送られて来た『パール』と彼女の写真を見ながら、

どうにもならない犬に対して、あまりにも幼稚に嫉妬する。



明日、伯父に連絡をしよう。



僕は、しばらく眠れない時間を過ごしていたが、布団の温かさの中で、

自然と眠りについていた。





「おはようございます」

「あ、歩、『ハウジングネット』の車、今日は頼むね」

「はい」


『TEA』さんから紹介してもらった企業の車。

奥さんは、今日もまた、書類と洗濯物で忙しそうだった。

隠しているようで、少し申し訳ない気がしたが、

全てが明らかになった段階で話をしようと思い、その日の仕事を開始した。





昼休み。

『パール』を散歩に連れ出し、川沿いの空き地に腰を下ろす。

伯父の番号を呼び出し、相手の出るのを待った。

先日、飛び出したことの謝罪もしていない。


『はい』

「あ……もしもし、歩です」

『あぁ……どうした』

「あの、すみませんでした。飛び出したままで謝りもしないで、
ご心配をかけました」

『いや、もういいんだ。気にする必要はない』


僕は本題を押し出すために、一度しっかりと息を吐く。


『それよりも、電話をしてくるなんて、何かあるのか』

「はい。あらためて伯父さんにお聞きしたいことがあります」

『聞きたいこと?』

「はい」


伯父が避けられない状態を、ここで作る。

僕は次の言葉を押し出すために、携帯を強く握った。



【23-6】

手紙の謎から、真実の扉が開くとき……
歩の前に見えてくる 『天使のはしご』。
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