24 光りの先 【24-6】

【24-6】

『時間をもらう』

それは、これまでの話を全て語るため。

森中の家の事情もあるので、伯父にも『TEA』さんにもきちんと了解を得た。

二人とも、半田ご夫婦のことは信じてくれている。


「そういうことだったの」

「はい。僕も、色々と胸につかえていたことが、これでスッキリしました」

「そうか……」


二人とも、色々な人の立場を理解してくれるから、表情は複雑だった。

しばらくすると奥さんは、エプロンで顔を抑えてしまう。


「おい、愛美、どうした」

「……景子に……景子に会いたくなったの」


母の友人として、僕を長い間見つめてくれてきた人だからこそ、

色々と思うこともあるのだろう。


「僕は、父と母がここまで導いてくれたとそう思っています。
母は、僕が成人したら、全てを話そうとしていたようですから」

「……うん、うん、そうなのよ、そうなのよね」

「ほら、お前がグズグズしていると、歩が困るだろう」

「わかってますってば」


奥さんはそういうと、そばにあったティッシュを取り、軽く鼻をかんだ。

社長は、何をしているんだと、ゴミ箱を渡す。


「ただ、ばあちゃんには細かいことはわからないようにしていますので、
『TEA』さんのことは……」

「わかってる、りつさんはそこまで知らなくていいよ、ねぇ」

「あぁ……」

「はい。これからも僕の親は後藤の両親ですし、ばあちゃんは、ばあちゃんですから。
これからも僕は、一緒にいます」


二人とも納得するように頷いてくれた。


「僕の生活は、今もこれからも基本的には変わらないですが、
『TEA』さんとは、細く長く交流していきましょうと約束しました」

「『TEA』さんと?」

「はい。『TEA』さんの歌声に、色々と励ましてもらってきたことは事実で、
本当に、勇気が出てくるんですよ、なぜか……」

「ほぉ……勇気ね」

「はい」

「だとすると、これからも『ハウジングネット』の仕事は、うちに来るかしら」

「は?」

「歩との縁を、つなげてくれるって……ねぇ……」


話が急に現実的な部分に戻り、僕はなんだかおかしくなった。

さすがに『半田自動車整備』の全てを仕切る、奥さんだと思う。


「お前なぁ、景子さんに会いたいって、涙をこぼしたんじゃないのか、
なんだ急に『TEA』さんとつながっていてって……」

「いや、だって……ねぇ……」

「これからも仕事くれますよ。だって、うちは丁寧な仕事をしますから」

「おぉ、歩、よく言った」


僕は立ち上がり、二人に頭を下げると、仕事をするために事務所へ戻った。

時間は12時少し前、そこには『パール』が飛び跳ねていて、

椅子には遥が座っている。


「はい、お届けもの」

「ありがとう」


朝、持ってきてくれればいいと言ったのに、遥は温かいほうが美味しいからと、

昼時間に合わせて持ってきてくれた。

目の前にいる、赤石さんのにやけた顔にも、もうすっかり慣れた。

僕は堂々とお弁当を受け取り、それをテーブルに置く。


「いいなぁ……俺のコンビニ弁当とは、温かさが違う気がするよ」

「温かさ? そうですか」

「そうだよ、ほら、触ってみろよ」


温めていないコンビニ弁当のビニール袋を、

赤石さんは僕の目の前に差しだした。僕はそれを奪い取り、中を覗く。


「美味しそうじゃないですか、ほら、から揚げ。3つも入ってますし。
あ、赤いパプリカありますよ、ほら、赤だし温かそうだ」

「なんだそれ歩、お前いつからそう生意気になったんだ」


生意気って……

僕らのやり取りを聞きながら、遥が笑い出す。


「俊祐、歩、ほら、仕事に戻れ。まだ昼飯だって言ってないだろう」

「へい……」

「はい」


そう、今日は点検の車が予定外に2台増えた。

これから夕方まで、みんなで手分けしないと。


「あら、遥ちゃん」

「こんにちは」


奥さんが遥に声をかけたので、きっとここからまた事務所内に笑い声が響くだろう。

幸せそうな声を聞きながらする仕事も悪くない。


「ん?」


朝から厚めの雲が覆っていた空から、光りの筋が広がりだす。

工具を持つ僕のところに、その光りが届いた。


「おぉ……」

「あら……」



『天使のはしご』

そう、『TEA』さんが舞台で浴びていたスポットライトのように。


「なんだっけ、これ。なんとかって言うのよね」

「空筋ですか?」

「違うわよ、俊祐。そんな妙な名前じゃないでしょう」

「『天使のはしご』ですよ」

「天使……あぁ、そうそう。それそれ」


遥は『天使のはしご』だと奥さんに説明し、その光りの下へやってきた。

雲の切れ間から届く光りに、僕達が照らされる。


「きっと、見てくれている」

「……うん」


誰が何をと言わなくても、僕にはわかった。

僕が今、『幸せ』であることを、二人はきっと喜んでくれているだろう。


「綺麗ね」

「おぉ……すごいな」


『半田社長夫婦』、そして栗丘さんに赤石さんもその光りの中に入った。

さらに僕らの下では、『パール』が嬉しそうに飛び回る。


「すごいわね……本当に空から誰かが降りてきそう」

「あぁ……そうだな」



『歩……』

『歩……』



僕は、これからもずっと、この光りに見守られて生きていける。

そう思いながら遥と一緒に、眩しい光りの先を見続けた。




『Angel's ladder(天使のはしご)』 (終)



僕は今、この場所に生きている。
『天使のはしご』から届く光と、優しい人の笑顔の元で……これからもきっと。

最後まで『天使のはしご』にお付き合い、ありがとうございました。
何か一言、感想をいただけると嬉しいですし、励みになります。
これからも『ももんたの発芽室』をよろしくお願いします。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


コメント

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ももんたさん
暖かな物語ありがとうございました。

奥さん大好きです。
社長夫妻っていい夫婦、素敵ですね。

そして、歩の物語から、周りへの感謝を忘れない心の大切さを
感じさせていただきました。
ありがとうございました。

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毎日楽しませていただきました。
歩の周りには素敵な人がたくさんいますね。
これからも発芽室に通い続けます。
(o⌒∇⌒o)

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ももちゃん

完結、おめでとう!
毎日楽しませていただきました。

歩には、たくさんの応援団がいますね。
私もその一人です^^

遥ちゃんとこれからどうなる?
実の父親は誰? なんて気になるのかな?
将来は自分の店を持って・・・
昨夜から 「なでしこ劇場」  を展開しております^^V

次回作も楽しみにしてますね。


ナイショコメントさん、こんばんは

気づくのが遅くてごめんなさい。
事後承諾、もちろんOKです。
ありがとうございました。

milky-tinkさん、こんばんは

>奥さん大好きです。
 社長夫妻っていい夫婦、素敵ですね。

素敵でしょ。私もこの夫婦大好きです。
本当に、そこらへんにある町工場の愛想のいいご夫婦。
こんな人たちが、きっと日本の経済を支えているのですよ(笑)

歩の周りには、たくさんの人たちがいてくれること、
まぁ、それは私たちの生活にも、言えることですよね。

私も、周りに日々感謝しながら、頑張ります。

コメント、ありがとうございました。

ナイショコメントさん、こんばんは

そうですね。彼の活動がほとんどないのに等しいので、
ネットから去ってしまった方も多いでしょうね。
賑やかだった頃が、懐かしいです。

>毎日楽しく読ませていただきました。

そう言っていただけるのが、何より嬉しいです。
コメント、ありがとうございました。

pocoさん、こんばんは

>歩の周りには素敵な人がたくさんいますね。

はい。歩自身がいい人なので、素敵な人が集まってくるのでしょう。
これからもきっと、『歩』の名前にふさわしい人生を、
進んでいってくれるものと、勝手に信じています(笑)

コメント、ありがとうございました。
これからもぜひぜひ、お越しください。

mallさん、こんばんは

>連載お疲れ様でした 楽しませていただきました。

楽しんでいただけて、とても嬉しいです。
そのコメントが、何よりも励みになります。
これからも、ぜひぜひ、お付き合いください。

ナイショコメントさん、こんばんは

>心にじんわりと残る、いい作品でした。
 これからも、じっくり読めるものを、作ってくださいね。

地味な作品ですが、『じんわり』という表現をいただけて、
とても嬉しいです。そう、じんわりですね、これは。
こちらこそ、これからもお付き合いお願いします。
コメント、ありがとうございました。

なでしこちゃん、こんばんは

>歩には、たくさんの応援団がいますね。
 私もその一人です^^

ありがとう。私もその一人なの(笑)

これからどうなるのかと、想像してもらえること、
それって、嬉しいことですね。
続きが知りたいと思ってもらえていることだもんね。

『なでしこ劇場』、どんなのだろう。
聞いてみたいなぁ。きっと、私の劇場と違う世界が広がりそうだ。

コメントありがとう。
それと、ブログでの紹介もありがとう。
いつも、お世話になりっぱなしで、すみません。
また、お邪魔します。