4 木片の微笑み 【4-3】

【4-3】

私たちは、仕事として戸波さんのところに行かせてもらったため、

社長に報告できるような書類を、作り終える。

三村さんは、鼻歌を歌いながら、円柱をいくつか組み合わせ、デスクの脚を作り出した。


「三村さん、これは何をするつもりですか?」

「あぁ、これですか。これは『cafe作りです』」

「『cafe』?」

「はい、コーヒーサーバーをこちらに移して、
それぞれが勝手に飲めるようにするつもりです。
小暮さんが毎日御用聞きするのは大変でしょう。
コーヒーなんて、飲みたい人が勝手に飲めは、それはそれでいいだろうし。
ただ、台がおいてあるのでは味気ない。ここはデザインを売る会社ですからね、
ちょっとこだわろうと……」


三村さんは、戸波さんからもらってきた板の上にサーバーを乗せ、

たくさんの円柱を使って、デスクの脚や、簡単な小物入れを作るつもりのようだった。

戸波さんが丁寧に表面を削り、磨いてくれたのはそのためだったのかと、納得する。


「長峰さん、こっち頼みます」

「私……ですか」


三村さんは、何を言っているのですかと言う顔で、私を見た。

私は、何が言いたいのですかという顔で、三村さんを見る。


「まさか、忘れているわけではないですよね」

「忘れているって……」

「俺と長峰さんは、一応コンビですよ。
ほら、あの『エアリアルリゾート』のコーディネート」

「あ……」


そうだった。私たちはコンビを組むようにと、社長から言われていた。


「ひどいなぁ、そういうあれこれあるから、俺はあなたに戸波さんを紹介したし、
こうして色々としているつもりですけど」

「ごめんなさい」

「アイデア、浮かばないと困るでしょう」

「……でも」

「ほら、こっち、担当ですからね」


三村さんのペースに乗らされている気がしないでもない。

けれど、こんな『遊び』に参加できるのも、悪くない。


「自由に発想してみましょうよ。これは仕事じゃないですし」



自由に……



「のびのびと……」



私は円柱をいくつか手に持ち、その滑らかな表面を、一度だけなぜてみた。



テーブルなのだから、当たり前のように脚をつける。

あらかじめ三村さんが考えたアイデアがあったが、

『遊んでいい』という好条件に、私なりの考えをつけたしていく。


「で、これを右に……」


今日中に完成出来ないことはわかっていたので、

明日、組み立てるための道筋だけ作った。


「あ、そうか3点で支えるわけだ」

「はい」

「ほぉ……」


円柱の太さが、意外にあったので、これなら支えきれるはず。

私は試作のデザインだけを提供し、帰り支度をする。





「それでは、お先に」

「お疲れさまです」


時計が8時を示す前に仕事を終え、いつもよりも軽い足取りで部屋へ向かう。

ご近所のスーパーに立ち寄ると、大好きな総菜が、閉店前の割引になっていた。

それをカゴに入れ、パンや牛乳もあわせて会計する。

袋の中に商品を入れていると、横にぶらさげてある『旅行パンフレット』が目に入った。



『夏休みカナダ・早期予約がお得』



『カナダ』



『どれくらい行くのですか?』



幹人から聞いているのは、カナダへ行くだろうという話だけ。

実際に、どれくらいの長さ向こうに行くのかは、何も聞いていなかった。

仕事を辞めて、ついていくことしか、選ぶ道はないと思っていた私。

今日は、確か出張だったはず。

戻ってきてから話をしてみようと、ビニール袋を左手に持った。




【4-4】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【土居信太郎】
『DOデザイン』の社長。年齢50歳。車に酔いやすい。
社員の気持ちを理解し、心を広く持った兄貴のような存在。
経理担当の塩野明恵は恋人だけれど、まだ入籍はしていない。

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