6 着信記録 【6-1】

6 着信記録

【6-1】

土曜日と平日と、自分自身あれこれ考えた結果、

有給をもらい、衣装合わせは平日に行うことにした。

その日の夜、千葉の母に連絡をする。


「あら、平日?」

「うん、ごめんね。予定表を見たら、土日は込んでいるみたいなの。
だから、ゆっくり選べないからと思って」

「まぁ、そうよね」


母も仕事を持っている。

小学校の給食の手伝い。長く勤めているから、それなりの戦力だろう。

こちら側の勝手な理由で、休ませることになるのは申し訳ない。


「ごめんね、仕事休める?」

「大丈夫だと思うわよ。ううん、休むわよ、他のことじゃないんだもの、
大事な知花の一生に一度のドレスを選ぶのよ。お母さん、主任にダメだって言われたら、
その場で暴れてやる」


母は、そう冗談混じりに言うと、私の申し訳なさが伝わったのか、

さらに明るく大丈夫を繰り返す。


「ありがとう」

「いいえ」


私は、今のところ健康には問題がなく、仕事も頑張っていることを付け加え、

受話器を置くと肩の荷を降ろした。

仕事の服からリラックス出来る部屋着に着替え、ベッドに横になる。



『招待客の数は、黒田家の方を多くさせてもらうから』

『こういう日のことで、後々もめるんだよ、知花』



新郎と新婦。両家のバランスがあるのはわかっているつもりだったが、

幹人と食事をし、それぞれ招待客について話し合う中、

私はほとんど聞いているだけだった。



忙しいのだろうか。

幹人が少し、苛立っているように見えた。





季節は6月になり、外は雨の日が増えていく。

こうなると、屋上でタバコを吸うことが出来なくなり、

社長も、伊吹さんも、仕事の道具を持ち、『COLOR』に入り浸る。


「さて……」


三村さんもその流れについていこうとしたため、

私はゼロに戻ってしまったデザイン画を差し出し、その動きを封じ込めた。


「三村さん」

「はい」

「これでどうですか」

「どれですか」


私なりに、あれから色々と考えた。

三村さんが曲線にこだわる理由もわかる。

それでも直線にした方が、全体的にしまる気がして譲れないことを語った。


「その代わり、曲線をここに持ってきます」

「うん……」

「優雅さを引き立てるには、上面から下に向かって飾りをつけて、
広がるイメージを持たせます」


私が、ここに泊まるのだとしたら……

そんなことを考えながら、あれこれ描いた。

三村さんは、図面を見たまま、何も言ってこない。

これでダメだと言われたら、次は……



正直、何も浮かんでいない。



「一つだけ、いいかな」

「はい」


三村さんはペンを手に取ると、私が描いた図面に、一箇所だけ訂正を入れた。

曲線にこだわっていると思っていたのに、しっかりとした直線が描かれる。


「三村さん……」

「こうしましょう。ここまで組み立てられると、完全にそう思えるから」

「あ、でも……」

「我慢しているわけでも、無理やりでもありません。長峰さんの説明と、この図面と、
今、俺の中で組み立っているイメージから、そう思えたので」


納得してくれた……


「長峰さんに反対されるだろうなと思いながらも、俺は自分の思いをぶつけてみました。
でも、内心、平面から立体的にはなかなかならなくて」


三村さんは別のペンを持ち、軽く色をつけていく。

そう、私もそう思う……と言えそうな配色。


「不思議なんですよね。あなたにかかると、
自分のイメージが平面から立体になるんですよ、見事なくらいに……」


無色だった家具たちに、色がつくことで、立体的になったものが、

さらに奥行きと影を持ち、そこに温度が生まれていく。


「これで……どうですか?」

「はい」


70がゼロになってしまったけれど、今、新しい100が生まれていく。

私は三村さんの作業を見ながら、小さな充実感を味わった。




【6-2】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【小菅美恵】
知花の同僚。年齢33歳。
ご主人はプラモデルが大好きな、中学校の教師。
知花にとってはよきデザイナーの先輩であり、相談相手。

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


コメント

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三村さんが。

今のところ、三村さんの方が、知花にとって、良い相手のような気が~・
このあとの展開が楽しみです。

知花にとって

ピンクリリーさん、こんばんは

幹人も紘生も、自分の意見をしっかりと表すタイプなのですが。
だからといって、同じ……ではないんですよね。

じわりじわりと話しは進んでおりますので、
これからもお気楽にお付き合いください。

知花にとって大切なもの……
一緒に、探してあげてくださいね。

叫びましたか

拍手コメントさん、こんばんは

>『・・・行くぞ』幹人!やっぱりお前か~!! と
 6-6を読み終わり心の中で叫びました。

あはは……叫んでいただけましたか。
おそらくそうだろうなと思いつつ、みなさん読み進めてくれて、
拍手コメントさんと同じ、叫びだったと思いますよ。

この出来事が、知花と幹人にどう働くのか、
それはこれからですので、お気楽にお付き合いを続けてください。

楽しみにしていただけること、何より嬉しいです。