14 応える意味 【14-2】

【14-2】

どう話せば、理解してもらえるのだろう。

言葉の選び方が、おかしかったのだろうか。


「すみません、ただ、本心なのかと聞きたかっただけです。
誰かを傷つけないようにとか、そんな気をつかっている言葉ではなくて、
あなた自身の……」

「私……」

「長峰さんの心の声なのかと……」



そんなふうに聞かれるまで、考えたことがなかった。

構えて話すことが多いのは昔からだったけれど……



「私……」

「はい」

「三村さんにはいつも、本音でぶつかっている気がします」


そう、三村さんには、繕ったことがない。

ケンカしたり、意見が合わなくて言いあいになって、頬を叩いたこともあったけれど、

言いたいことを言えなかったことが、ない気がする。

言ったらどうなるのかなど考える間もなく、言わなければいけないような、

いつもそんな雰囲気だった。

繕おうとしても、見抜かれてしまうようで、

結局、みっともないくらい、いつも本音で話している。


「クスッ……」


おかしい。そう、なんだか考えていたたらおかしくなった。

なぜだろう。私、三村さんには気をつかったことがない。

失礼なくらい、正直で……


「何かおかしいこと、あります?」

「ごめんなさい。だって三村さん。どうしてそんなふうに考えてしまうのかなと思って。
私がここで三村さんに繕っても、仕方がないじゃないですか」


結婚をドタキャンなんて、最高にみっともないのだから。

今更、気取ってみても、成り立たない。


「本音です。本当にそう思っています。
誰の責任でもなくて、自分らしく生きられないから、それで結婚は取りやめました。
だから心配しないでください。
ただ、仕事は……私より萩尾さんの方がやりにくくなると思うので、
三村さんにお任せしました」


そう、立場上、向こうの方が気にするだろう。

理由はあなたではないと言っても、関係ないとも言い切れないのだから。


「……そうですか。それなら、その言葉を信じます」

「はい」


風が気持ちいい。

だんだんと、秋の色が近付いている。


「これからも、そうしてください」

「これから?」

「はい。これからも、俺には本音で話してください」



三村さん……



「……必ず、応えますから」





『応えますから……』





「はい……」


自分の肩にあった重い荷物が、取れていくような気がしてしまう。

それから三村さんはライターを取り出し、指に挟んでいたタバコに火をつけた。





『必ず、応えますから……』



仕事を終えた電車の中で、珍しく席が空き、私は腰をおろした。

緊張感がないからだろうか、この言葉が何度も頭の中で繰り返される。

私よりもデザイナーとしての才能があふれている三村さんが、

同僚として、フォローをしてくれると言った意味なのはわかっている。



でも……



『はい』と返事をした私は、心の底からその言葉に寄りかかっていた。

一人の男性が、私にかけてくれた言葉だと思ってしまうのは、

ずうずうしいのだろうが、それでも……



『応えますから……』



和歌山から戻ってきた後、引き寄せられた腕の感覚と、

包み込んでくれるようなその言葉が、少しずつだけれど、

私の感情を確実に揺さぶり続ける。

言葉とともに向けられた視線を思い出していると、

電車は橋の上を走り始め、急に音を変えた。




【14-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
日本にある『木』の中で、一番軽いものは『桐』。
世界的に見ても軽い部類に入っているが、寸法のずれなどは少ないため、
タンスの材料として好まれている。

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