22 ランチのあとで 【22-3】

【22-3】

その日の午後、私と小菅さんは、新商品が入ったことを聞き、

『NORITA』に顔を出すことになった。

いつもの道を歩き、いつものように、TVなどの話をして歩く。


「エ!」

「何驚いているのよ、私がわからないとでも思っていたの?
悪いけどね、鈍感な優葉ちゃんとは違うのよ」


小菅さんは、いつもの話題ではなく、

ストレートに、私と三村さんの付き合いを言い当ててしまった。

私と三村さんのお付き合いは、小菅さんにすっかりバレているらしい。

態度に出した覚えがないのに、そう見抜かれると急に顔が赤くなる。


「違うの? どっちって聞こうとしたけれど、知花ちゃん顔に出てる」

「いや……あの、どうしてわかったんですか?
事務所では態度に出していないつもりなんですけれど」

「あはは……いいじゃないの、二人がお付き合いを始めたって、
全然、遠慮することでもないし」

「遠慮をしているわけではないですけれど、私、色々とありましたし、
仕事関係の方たちでも、前のことを知っている人も多くて」

「……周りに気をつかったの?」


そう、幹人とのことを知っている人たちからすれば、

なんだか、あっという間に心変わりしたように思われるのではないかとか、

また、三村さんが理由で結婚をやめたのかとか、かんぐられたくないというのが、

正直なところだった。

私は無言のまま、頷いていく。


「そんなこと考えなくていいのに」

「でも……」

「男と女はね、不思議なものなのよ。なんなんだこいつと思っていても、
自分にないものを持っている人に会うと、ものすごく惹かれてしまうの。
二人にはそういう部分が大きい気がしていたから、反発しあう力と同じくらい、
認め合う力も働くだろうなと」


小菅さん、すごい。

私たちがケンカをしていた頃から、そう思われていたということ。


「私もね、主人に惹かれたのが、そういう理由ってこともあったしね」

「そうなのですか」

「そうよ。向こうは公務員でしょ。私と違って、物事をしっかりと考えるの。
固くて最初はうるさかったけれど、それが安心感に変わってしまった」


小菅さんは、そういうと恥ずかしいと手で顔を隠し笑った。

私より年齢は上なのに、こんなかわいらしいことをする人だから、

話をしていても、とても楽しい。


「そうですか……わかっちゃいましたか」

「わかる、わかる。だから優葉ちゃんに言ったのよ、私。
三村君は、好きな人の前で、仕事のときみたいにガンガン押したりしないって。
だって優しいじゃないの、知花ちゃんにはとっても……」

「優しいですか? 事務所では言いあいばっかりですよ」


そう、アイデアを出せば、すぐに火花が飛び始める。


「ううん、それだってさ、知花ちゃんのアイデアを言わせてあげようと、
一生懸命に突っかかっているのがよくわかるのよ。もう、かわいい、かわいい」

「……かわいいですか」

「そうよ、年上の女からしてみたらね」


私には、三村さんをかわいいと思う感情はないけれど、

小菅さんがそう言ってくれるのは、くすぐったいような気持ちになれた。

どんなことでも、褒めてもらえるのは、嬉しい。


「あの……」

「何?」

「事務所のみんなには内緒で。本当にまだ、半歩くらいの状態なんです」

「はいはい。わかってますよ。優葉ちゃんや聖子さんに言ったら、
あっという間に大音量だからね」

「はい」


二人で色々な話をしながら歩くと、『NORITA』まではあっという間の旅だった。





「どうでしょうか、ここで」

「ありがとうございます」


私たちが予想していた場所よりも、はるかにいい位置に、商品が置いてあった。

以前から卸しているテーブルなども、『DOデザイン』のものとして、

展示されている。


「さっそく、いくつか注文をもらっていますので、FAXしてあります」

「そうですか、それは」

「『あなたの小さな宝物』というキャッチフレーズもわかりやすいと評判ですよ」


あまり褒められたことがないからだろうか、こうして言われ続けていると、

どこかで落とされる気がして、妙に足を地に踏ん張りたくなる。


「よかったね、知花ちゃん」

「はい」

「これからも、ぜひぜひ、よろしくお願いします」


部長は、終始笑顔のまま対応してくれたため、交渉はあっという間に終了した。

小菅さんは、別のクライアントのところに寄る予定があったので、

帰りは私一人で電車に乗る。ポケットに入れてあった携帯が揺れ始め、

相手を見ると、優葉ちゃんだった。

まさかとは思うけれど、優葉ちゃんもお昼の雑談の中で、

私と三村さんの変化に気付いたということだろうか。

車内で話をするのは悪いと思い、私は次の駅で降りると、

ホームに立ちながら、優葉ちゃんに連絡を入れた。




【22-4】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
チェストとは、引き出しのついたタンスなどの収納家具を示す。
それに対してキャビネットとは、扉のついた収納家具になる。
人気なのは、ガラス付きのものが多い。

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