25 チームワーク 【25-2】

【25-2】

「どうしてそういうウソを平気でつくのですか」

「まぁまぁ」


せっかくいい気分で描き続けていたのに、

ここで三村さんにガンガン言われてしまったら、また、気持ちがしぼんでしまう。


「返してください。まだ検討中だし、思いつくままに描いていただけですから」

「思いつくままなのですか」

「そうです」


自分なりには、結構いい線を行っていると思っているけれど、

そうはまだ、言い切る自信がない。


「いいですね、ジョイントに使うアイデア」


私はその言葉を聞き、すぐに三村さんを見た。

三村さんは、隣の席で用紙を広げると、

私が描いた図の中に、小さなアレンジを入れてくれる。


「長峰さんのエクステンションテーブルもいいですけど、
そうだな、たとえば、完全に別扱いにしておいて、
普段はサイドテーブルってうのもありでしょうし」


サイドテーブル。

確かに、6人家族用をいきなり作るのでは幅も取る。

折りたたみだと折られている部分は何も役に立たないけれど、

サイドテーブルなら、使い勝手もいいだろう。

結婚したばかりのご夫婦で、向かい合ってお酒を飲んだり、

ソファーの横に置き、本を片手にコーヒーを飲んでみたり……


「あぁ、それもいいですね」


ついさっきまで、意見が違うと言い合っていたのに、

こんなふうに、ふっと寄り添える時がある。

仕事でも、プライベートでも、彼の起こす行動一つ一つが、

私の気持ちを、膨らませたり、揺らしたり……


「よし、まだ考えます」

「暇ですね」

「また、余計なことを言う」


私は自分のカップを手に持つと、コーヒーを入れるために立ち上がった。





その日、三村さんは部屋に寄ってくれた。

男性の腕があるとわかり、私はスーパーで、お米や飲み物を買い、

全て運んでもらう。その代わり、食事の準備は、いつもよりも頑張った。


「どうして?」

「言わなかったですか。『折原製薬』が経営している病院があるって。
母はそこにおそらく入院しているでしょう。会うことは行けば会えるだろうけれど、
来たことが父親の耳に入るのは、嫌ですし」

「嫌だって、そんな」

「何もいらないとそう思って出てきましたからね。今更フラフラと帰れない」


あれから紗枝さんと連絡を取ったのかと聞いてみると、

三村さんは、こちらからかけるのはおかしいとそう言った。

さらに、お母さんの見舞いに行くつもりはないと言う。


「三村さんが軽く考えているって、紗枝さんが言っていましたけど……」


私には、どれくらいの入院なのか、どういう状態なのか、それは全く見えないだけに、

このままでいいのだろうかと、心配になる。


「本当に大変なことなら、5日経っても連絡が来ないのはおかしいでしょう。
いいんですよ、このままで」


確かに、緊急性があるのなら、あれこれ言っていられないだろう。

私が様子を見に行けるのなら行くけれど、向こうにして見たら会いたいはずはない。


「はぁ……」


三村さんから出る、大きなため息。

どうしてため息が出るのだろう。


「そんな顔を、あなたに見せられているのが嫌で、
長峰さんに、一生懸命自分を出せって言い続けてきたのにな。
俺自身がさせてるんじゃ、ダメですね」


下向きの顔。

つい、考え事をしてしまって。


「いえ、もうおしまい。ほら、せっかく作ったのだから、食べて」


私は、精一杯前を見ていよう。

そう思いながら、三村さんに箸を並べて欲しいと、そうお願いした。





三村さんのヒントを受けて、私なりのデザイン候補が出来上がった。

娘さんが利用していた思い出のイスは、

新しく作るテーブルの四隅に丸みを持たせるための材料として利用する。

元々、子供が使うものとして出来ていたので、木材の材質は衝撃を吸収する力が強い。

サブの板を用意し、離れている部分を一緒に使うと、注文通り6人が座れるものになる。


そう、いつもここまでは順調。

ようはここから、どう形にしていくか。


「おはようござ……」


いつものように事務所へ入ると、なにやら真剣な顔つきで座っている社長と、

伊吹さんがいた。小菅さんは私に気づくと、無表情のまま近づいてくる。


「知花ちゃん……ちょっといい?」

「はい」


何が起きたのだろうか。仕事はそれぞれがみんな順調に思えていたけれど。


「小菅さん、何かあったのですか。伊吹さんも真剣な顔で」

「ねぇ、三村君のこと、知花ちゃんは知っていたの?」

「三村さんのこと?」


小菅さんはエレベーターのボタンを押し、私の腕を引っ張った。

目の前に下から上がってきた鉄の箱が止まり、ウイーンと音がする。

扉が開くと、三村さんが降りてきた。


「おはようございます」

「あ……うん」


小菅さんは、三村さんと顔を合わせることなく、なんとなくの挨拶をすると、

私を中へと連れて行く。

三村さんは、その不思議な状態に疑問を持ったのだろう。

何があるのかという目で、私を見た。




【25-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
タンスの数え方は、『竿』で数える。(一竿、二竿……)。
その理由は、江戸時代、タンスを竿で担いで運んだことからで、
当時は、竿を通す金具がついていた。

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ありがとう

ナイショコメントさん、こんばんは
ご指摘、ありがとうございました。


原因、なぜなのかわからないのですが……
なぜか、そう、確かに、過去記事に移動してしまってました。
見直しても、間違い部分はなかったので、未だに謎です。
とりあえず、命令を作り直して、元に戻りましたよ。

他の方たちも、『?』だったようで、同じようにコメントを数名、
いただきました。

近頃眠くて、更新したら寝てしまっていたので、
ダメですね、ちゃんとチェックしないと。

お互い、体調を崩さずに頑張りましょうね。