25 チームワーク 【25-3】

【25-3】

何もわからない私は、扉が閉まるその時まで、首を振り続ける。

エレベーターはまた音をさせて、下へ向かった。


「どうしたんですか、おかしいですよ」

「おかしいのは三村君の方よ」


三村さんがおかしい?

何か、相手に失礼なことを言ったのだろうか。


「今朝、雑誌が届いたの。昨日発売になった『レモネード』」


『レモネード』

『女性が輝くために』というサブタイトルを持った総合雑誌。

ファッションの特集もあるが、企業で働く女性たちにスポットを当て、

よく取材をしている。


「『MARBLE』って知っているでしょ、エステの」

「はい」


『MARBLE』という名前を出されて、三村さんとのつながりを考えた。

嫌な予感が、体全体に駆け巡っていく。


「副社長の娘さん、そう、古川紗枝さんって人を、あの千葉さんが取材していたの。
アメリカでの勉強を終えて、企業を盛り上げていくという内容だったけれど、
その中で、三村君のことが語られていた」


紗枝さんが……


「幼なじみが、海外のデザイン賞を取ったことを嬉しく思い、
自分も世界に目を向けたくなったって」


千葉さんと紗枝さん。

二人のつながりが、こんなふうに……


「三村君って、本当は折原紘生という名前で、『折原製薬』グループの息子だって、
それ本当なの?」



折原紘生



「ねぇ、知花ちゃんは知っていたの?
三村君、ずっと私たちを騙していたってことでしょ」

「違います」

「違うって、だって詐称でしょう。名前が違うなんて……」


確かに、三村という名前を語り続けてきたのは、いいことなのかと聞かれて、

そうだとは言い切れない。でも、決して騙そうとしていたわけではない。


「それ、伊吹さんからの情報ですか? それとも社長?」

「何? 知花ちゃんは、最初から知っていたの?」


私はそれは違うと、首を振った。

私自身も聞いたのは最近のことだ。

紗枝さんは、三村さんが『エアリアルリゾート』の仕事をしたという話しまで、

記事の中で語ってしまったという。


「伊吹さんのところに、クライアントから朝早く連絡があったのよ。
ほら、例の『ナビナス女子大』の寮。
あの学校を影で支えているのが、『KIRIMURA』というわけ」


『KIRIMURA』

化粧品と家庭用洗剤などのトップメーカー。

『折原製薬』と、被る部分もある企業。


「『KIRIMURA』としてはね、
どうして『折原製薬』の息子を担当者にしたんだって、怒っていたみたい。
スパイだのなんだのって大げさだけれど、まぁ、そう言われても、
こちらも知らなかったわけだし、言い返せないでしょう。
伊吹さんもさぁ、何がなんだかわからないって社長に詰め寄って。で……」


三村さんは何も知らずに、事務所へ入ったはず。

今頃一人で、責め立てられているかもしれない。


「あ、知花ちゃん」

「戻らないと、私、三村さんのこと……話さないと」


あの人が、どれくらい辛くて大変な日を過ごしながら、

それでも譲れないものを持ち続けたこと、

決してみんなを騙そうとしていたわけではないこと、

私も一緒に……



頭でも何でも下げてあげたい。みんなが納得してくれるまで話したい。

ここではなく、そばにいたい。



エレベーターに戻り、事務所へ駆け込むと、少し前に見た光景の続きが、

そこにあった。


「おぉ、長峰。小菅はどうした」

「あ……」


社長は問題になった雑誌を持ち、軽く笑顔を見せてくれた。

隣には、下を向いている三村さんと、伊吹さん。

きっと、全てわかってしまったのだろう。


「社長、あの……」

「長峰も座ってくれ。小菅が戻ったら私から説明する」


説明? 社長は知っているのだろうか。

三村さんの方を見ると、私にわかるように、小さく頷いてくれる。

とりあえず、私がここで叫びだす場面ではなさそうで、おとなしく席についた。

それから数分後、小菅さんが戻ってくる。


「よし、これで全員揃ったな」


社長はそういうと、隣に立つ三村さんの肩をポンと軽く叩いた。




【25-4】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
タンスの数え方は、『竿』で数える。(一竿、二竿……)。
その理由は、江戸時代、タンスを竿で担いで運んだことからで、
当時は、竿を通す金具がついていた。

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