50 あいつの声 【50-5】

「事務所側から、宮崎さんの付き添いはNGだと言われた」

「NG?」

「あぁ、そうだ。星川美佳のマネージャーが、君がタレントに余計なことを吹き込むと、
そう私に連絡をしてきた」


美佳のマネージャーは、美佳が新しい仕事に対していい顔をしていないことがわかり、

そばにいたあずさが、余計なことを吹き込んだのではないかと、そう言い始めた。

あずさは、何も話をしていないと言い返すが、花輪はもういいと譲らない。


「疑われた時点で終わりだ。どっちが正しいとか間違っているとか、
そんなことはどうでもいいことなんだ」


事情を良く知らない京子は、きついことを言われたあずさの顔を見る。


「どうでもいいって……」

「君は、一つ一つの行動、言動がとにかく甘いんだよ。
『アカデミックスポーツ』の持ち逃げの件も、なすりつけられるだけの隙があるから、
こうなったんだろう」


花輪は、東京に来るときから、理由も聞かずに来ていること、

タレントのプライベートにまで、入り込むような時間を持ったことなど、

あずさに文句をぶつけてくる。


「世の中の、這い上がろうとしている人間は、
どうにかして上へと、みんなその隙を狙っているんだ。壁のように固い企業を、
後ろ盾にしている君とは、気持ちも気合も違う」


花輪は、『BEANS』のことを引き合いに出すと、あずさに元の仕事に戻れと言い残し、

小部屋を出ようとする。


「花輪さん」


あずさの呼び止めた声に、花輪の足が止まる。


「私に後ろ盾などありません。そんな言い方はしないでください」


あずさは、いつも『BEANS』のことを出してくるのは不本意だと、花輪を見る。


「俺は、君を見てそのままを話しているだけだ」


花輪はあずさを見ることなく、そのまま小部屋を出て行ってしまう。

あずさはその場に座ると、両手で『ドン』とテーブルを叩いた。

追いかけて言いあいをすることなど出来ないが、怒りをそのままに出来なかった。

そばで見ていた京子は、窓から花輪の出て行くのを確認する。


「花輪さん……宮崎さんにはどうしてキツイのかなと、思っていたのよね」


京子は、前は仕事振りを認めていたと思っていたのにと、席に戻る。


「私、知ってしまったの」


京子の言葉に、あずさが顔をあげる。


「花輪さん……昔ね、『BEANS』の試験、落ちたんだって」


京子は、花輪は『桜北』や『慶西』に続く大学を出たが、

入社試験に通らなかったのだと、あずさに話してくれる。


「宮崎さんがいないときにね、応援に来てくれた社員の人が、話してくれたの。
花輪さんにとって、『BEANS』は、負のパワーなのよ」


今回のドラマも、『BEANS』と同じ、スポンサーという立場になれることが、

花輪の気持ちを奮い立たせたと言う。


「入りたくても入れなかった自分がいるのに、社長の息子だというだけで、
幹部候補になっている人もいる。知り合いだの、親戚だのという流れで、
ピンチのときにはスッと助け舟が入る……そんなふうにね」


あずさは、昨日、落ち込んだ口調で電話をしてきた岳の声を思い出す。


「上に立てるのなら、どんなことをしても立つべきだ。
そんな青春の復讐みたいなものが、あなたに出てしまうのかもね」


京子はそういうと、まぁ、元の仕事に戻るのだからと、あずさの肩を叩く。


「……間違っています」

「エ?」

「そんなこと、絶対に間違っています。『BEANS』の社長の息子だから、
何も苦労もなく、ポジションを持っていると思っている花輪さんは……
間違っています」


あずさはそういうと、両手で握り締めていたバッグを横に置いた。





『ウインド・ウーマン』の撮影が、

『アカデミックスポーツ』の西東京店舗からスタートしたが、

あずさの姿はそこになかった。

千晴はカンナの撮影の様子を確認しながら、姿を探すが、

どこを見ても来ているようには見えない。

隅に、以前、事務所の職員に紹介された花輪の姿が見えたので、

挨拶をして直接聞くことにする。


「すみません、これからはなるべく私が」

「宮崎さんは……」

「会社の不利益になるようなことをされても、困りますので」


花輪はそういうと、千晴に頭を下げる。


「不利益って、彼女、何かしましたか」


千晴は、あずさが何をしたのか気になり、すぐに花輪に聞き返す。


「それは……社内のことなので」


花輪はそういうと、スタジオから出て行ってしまう。

千晴は、あの飲み会での出来事が原因だろうかと、しばらく花輪の後姿を見つめていた。





「私ではありません!」


泰成たちに疑われたまどかは、出社するとすぐに岳に身の潔白を告げに来た。

岳は、落ち着いて話すようにとまどかに言う。


「落ち着けって……相原さんも私だと疑っているのですか」

「そういうことではないんだ」

「だったら……どうしてこんなふうに」


まどかは、昨日はきちんと有給を取り、実家に行っていたと休みの行動を話す。

疑うのなら携帯で撮った写真を出しますと、興奮状態が続く。


「わかった……とにかく落ち着いてくれ。朝原だけに聞いているわけではなくて、
『経営企画』のメンバー全員に、仕事の管理について、話をしている」


岳は、これが続かないようにすることが大事だと話し、

とにかく、データ管理をしっかりしてくれとまどかに話す。

午前中は、一人ずつ抱えた仕事の管理について聞きだすことだけで終わってしまい、

タイミングのずれた社員食堂に座っていると、混雑した時間が嫌いな敦が、

ほぼ同じ時間に、姿を見せた。


「兄さん……」


敦は、こんな時間に珍しいねと、岳の前に立つ。


「敦か」

「うん……」


敦は、岳の様子がいつもと違うことに気付く。


「何かあった?」


敦の心配そうなセリフに、岳は黙って首を振る。

いくら兄弟とはいえ、『経営企画』で起きていることを、

これ以上広めるわけにはいかない。


「大丈夫だ」


岳はそういうと、『翡翠の家』は順調かと敦に尋ねる。

敦は、順調だと答えると、その通りに思える笑顔を見せた。

エレベーターの扉が開き、そこに千晴が姿を見せる。

窓際にいる岳と敦を見つけ、そのまま近付いてきた。

ヒールの音に気付き、岳も敦も千晴を見る。


「あの子……何をしたの?」


千晴の言葉に、岳も敦も的確な返事が出来なかった。





【ももんたのひとりごと】

『酒癖』

私自身、お酒は飲めないのですが、そういう会に参加することは嫌いではないです。
社会人として働いている頃には、同僚、先輩などと、それなりに会がありました。
赤くなって明るくなる人、愚痴っぽくなる人、底なしの人などいましたが、
すぐに眠くなる人というのも、過去に数人いました。2次会のカラオケルーム、
あれだけうるさいのに寝ていられるなんてと、不思議でしたから(笑)




【51-1】



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コメント

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こんばんは

huziさん、こんばんは

> 1話ずつの最後に、ちょっとしたコメントがあるのも、
 楽しみですね。

そうですか?
そういっていただけると、嬉しい私。
みなさんと少しでも、笑ったり、納得したり、
そんなコミュニケーションが取れたらいいなと思っています。

お話は、あと……6話です。
残り1ヶ月、最後までお付き合いください。