15 明日への期待 【カイピロスカ】 ③

15-③


「新年、あけましておめでとう」


そして、新しい年の幕開けになり、仕事も開始された。

編集長のありがたくもない話しを聞き、早速の手紙が渡される。


「へぇ……今年は初心に戻って伊豆なのね」


2月に毎年行われる『社員旅行』の決定事項が書かれた紙。


「初心ってなんですか」

「近頃、あっちこっちって、色々と迷走していたけれど、近さといい、
料理のおいしさと言い、伊豆が一番いいかなと、気付いたってことよ」


あまり遠い場所だと、行くまでに疲れてしまうし、やはり伊豆は料理も美味しい。

私は入社して5年、じゃんけんに負けては、出し物に参加させられていたことを、

思い出す。


「あのじゃんけんで決めるって言うの、どうにかならないかな」


斉藤さんのように、手品を趣味としている人は、その披露の場とするのはいいだろうが、

ただ、じゃんけんに弱いと言うだけで、毎年ネタを考えさせられるのは、

パワハラ以外の何者でもない気がする。


「中谷さん、そんなに何かやりました?」

「5年で4回って、多いでしょう」

「うわ……それは確かに」


二宮さんは、こうなったらまた今年もと、半笑いで勧めてくる。


「今年、そんなことになったら、私、行かない」


私はそう言いながらパソコンを開き、作品の状態を確認する。

さすが年末年始。テレビもあるけれど、普段忙しい人たちが、

どっぷりと趣味に浸れる時間と言ってもいい。ダウンロードが増えている。

私はデータのチェックを入れると、締め切りが近くなった、

編集後記部分の下書きを始めることにした。



私が実家に出向いたのは、ゴロゴロしたかっただけで、

別に、両親に将来を考えて欲しかったわけではないのだが、

1月も真ん中くらいになった日、また分厚い紙に挟まれた写真が、

わざわざ速達で、届けられた。


「もしもし、お母さん?」


予想通りの、『見合い写真』。


「あのさ、いくらなんでも、元上司の人もね……」


松岡さんを紹介してくれた人からなのかと母に尋ねると、今度の写真は、

父が米作りをしている中で出会った、協同組合関係の人だという。


「組合の人?」

『そうなの。お父さんね、未央がこっちに来て結婚すればいいって』



……おいおい。

だから、私は新潟に住みたくて帰ったわけではないの。

東京にいないと、編集者なんて、難しいのだから。


「どうしてそう、勝手な勘違いをするかな、お父さんって。
私は別に、そっちに行こうと思っているわけではないからね。仕事だってあるし」


二度目も妙な人ということはないだろうけれど、でも、『見合い』はしたくない。

どういう人なのか、自分自身で話してみないと、人はわからない。

いい人だと思っていたのに、最低な男だったやつもいるし……


「とにかく、断ります」


私はすぐに送り返すからねと電話を切り、とりあえず写真を見た。

なんだか素朴そうではある。

こういう人なら、ウソで女を騙したり、

平気で裸の女がいる部屋に、入れたりはしないかもしれない。

何気なく、携帯電話を取る。



『上村悠』



そう、上村さん。

この人の写真を見たら、なんとなく思い出した。

女性と話すのが苦手だからと、時々テンポ違いなところもあったけれど、

でも、送りだされる言葉は、だからこそストレートでわかりやすく、

その行動にウソがない、そう思える人だった。

私が、好きな人がいますと言ったときにも、この人は……



番号、まだ残っている。



自分に動き出す恋があったら、私の番号を消しますとそう言っていた。

あれから、季節は夏を迎えて、秋、冬と動いている。

もうきっと……



左手の指が、『発信』のボタンを押してしまった。

呼び出し音が鳴る。

消していないのか、それとも消したけれど、着信拒否ではないのか。



『はい……』



あ……



私は、上村さんの声が聞こえたことに驚き、終わりのボタンを押してしまった。

いけない、何をしているんだろう。

とんでもなく、失礼なこと……

すぐにもう一度『発信』を押すと、呼び出し音が鳴り、


『もしもし……あの……上村ですが』


あのときと変わらない、上村さんの声がした。



15-④




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頑張ります

拍手コメントさん、こんばんは

>今までの作品とは雰囲気が違い、
 戸惑いながらも楽しませてもらっています

そうですよね、今回は私も挑戦です(笑)
同じような展開で作り上げた方が、違和感はないのかもしれませんが、
まぁ、こんなものもあるかと思い、お付き合いいただくと嬉しいです。

>未央を幸せにしてあげてください

はい、頑張ります