3 再会の音 【3-5】

【3-5】


「はい、これで大丈夫です」

「了解」


1年生で始めた『キタック』のバイト。

荷造りも最初はオロオロしていたが、今では後輩に教えることも増えた。

元々、大きな引っ越しよりも、小型の引っ越しを得意としていたため、

単身赴任のサラリーマンや、学生関係が多くを占めている。

しかし、近頃はちょっとした『開業』のためのものも、増えていた。


「マンションの一部屋だそうです」

「IT関係だろ、あれは機械があったら出来るだろうしね」

「そうですね、精密機械ばかりだから、梱包をしっかりして欲しいと、
何度も言われました」


『キタック』の東京南営業所。

東京に4つある営業所の中で、一番北村社長の自宅に近く、最初に建てられた。

そのため、『東西南北』の名前がつく営業所が出来ても、

仕事の中心はここになっている。

3階建てのビル1階は研修用の場所、2階は仕事を実際に受ける営業所。

そして3階は『キタック』の本部が入っていた。

北村社長と、副社長の河石さんを中心に、会社の軸と言える、数名の社員が働いている。


「石本、これまとめといて」

「はい」

「それ終わったら、お前終わりでいいわ」

「了解です」


私は書類を書きながら、首をぐるりと回す。

昨日と今日、両方引っ越しというのはさすがに疲れた。

明日の学校、午前中休んでも大丈夫だっけ。


「石本」

「はい」


先輩の森田さん。


「この後、みんなで食事に行くけど、お前はどうする」


私を含めて、『キタック』には大学生のバイトが8人いた。

女性は私を含めて3名で、男性がこの森田さんを含めて5名。


「あぁ……今日は……」


疲れているからと断ろうと思ったが、一つ聞いてみたいことがあったことを思いだし、

わかりました、30分で仕事を終わらせますと、敬礼のポーズをする。

森田さんは、同じように返してくれると、いつもの店で待っているとそう言った。

私は書類をPC画面で打ち込み、印刷の状態を待つ。

目の前のデスクには、森田さんが残した帽子があった。


森田さんかぁ……


『東京英和大』の3年生。

以前、留学生の引っ越しを担当した日、日本語よりも英語というお客様で、

細かい内容の理解が出来ないと文句を言われたことがあった。

本来、日本で世話をすると約束していた男性が、間に入るはずだったのに、

その場に現れずに困ったとき、私が森田さんに連絡をしたことがある。

休みだったにも関わらず、森田さんは私と留学生の話を聞きながら、

電話通訳をしてくれたこともあって。

男性陣5人の中では、一番世話になっているかもしれない。


「あれ? 紙がないのかな」


これを印刷して、3階の本部に出せば終了なのに、予想外のところで足止めをくらう。

私は紙を探して、それを入れ直すと、あらためてコピーのボタンを押した。



『学生です……』



そうだった。確か今回引っ越しをした女の子、どこかの大学生だと言っていたな。

新築のマンションを探して、隣に彼が越してくるのだと、嬉しそうに。



年齢……



「ゲ! 20って、同じじゃないの!」


私の叫びに、どうしたと数名の従業員が顔を上げる。


「すみません……」


はぁ……20歳で彼氏と隣同士って、これ、ほぼ同棲状態だよね。

隣の彼は、別業者に頼んでいるのか、名前も年齢もわからないけれど。

うまくいかなくなったら、どうするのだろう。

どうでもいいことを、想像する私。



そういえば、大学内でも、カップルを見かけることが増えた。

季節ももうすぐ『バレンタイン』だし。

年明け、藍子も彼氏が出来たって、確か言っていた。

みずなからはまだ、何も聞いていないけれど。



石本風音、未だ彼氏なし。



「出来た」


私はくだらない想像で、重たくなった足を必死に持ち上げながら3階への道を進む。

扉をノックすると、『はい』と声がしたので、失礼しますと言いながら、

ドアノブを動かした。


「書類、出来上がりました。提出していきます」

「あぁ、ありがとう。お疲れ様」

「お先に失礼します」


階段を駆け下り、ロッカールームで着替え、髪の毛を軽く手で整えると、

先輩たちが待ついつもの店へ向かう。

そこではすでに会話が弾んでいて、私の登場に気づいた森田さんが、

少し場所をずれてくれた。


「すみません」

「終わったのか、仕事」

「はい、きっちりと」


私は渡されたメニューを見ながら、まずは『ウーロン茶』を注文する。


「は? 石本、お前成人式終わったんだろ、なんだよ、ウーロン茶って。
それを言うなら『ウーロンハイ』だろうが」


大学生バイトでは一番長い山本さんが、ラグビー部の体から、大きな声でそう話す。


「成人式を終えても、飲めないものは飲めないです。体が受け付けませんから」


それはウソでもなく本当のこと。

藍子たちと数回、缶チューハイを買って、飲み会を開こうとしたが、

飲んでもただ気持ちが悪くなるだけで、美味しいと思えた試しがない。


「いやいや、いけって」

「ダメです」

「辞めろよ、押しつけるのは」


ここで森田さんから助け船が入るのも、だいたいいつものパターン。


「ありがとうございます」

「いや、体質に合わないものを勧められてもな」

「はい」


私はその代わりに食べますからと、胸を張ってみせる。

意味ないぞと笑われ、その場の雰囲気に溶け込むことが出来た。



【ももんたの小ネタ交差点 3】

同窓会、みなさん出席していますか? 私は『ものにより』です(笑)
以前、『同窓会を開きたい人って、自分の人生に自信がある人だよ』という
意見を聞いたことがありました。まぁ、日々に精一杯だと、
確かに、思い出を振り返ろうとしないかもしれませんね。私はそれより、
会いたい人には、個々に会えばいいよねと、単純に考えるタイプかも。
なんせ、人の名前を覚えるのが、苦手なんですよ。おそらくほとんど忘れてる(笑)



【4-1】



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コメント

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だよね

なでしこちゃん、こんばんは

ごめん、こっちに気付かなかった。

>同じく、同級生の名前は忘れてます(笑)

でしょ! 私の友達は、結構覚えているのよ。
エピソードつけながら、あれこれいうから、
私が特別に覚えられない人なのかと思っていたが、
ここにもいてくれて、安心した。
そうそう、会いたい人に、会えばよし(笑)