7 格差の錘 【7-4】

【7-4】


『運転免許証』


大学時代、取るには取ったが、車を買う余裕がないため、

今のところ、この証明書は、こういったところでしか活躍していない。

審査を待っている間、CMで流れる軽快な音楽が気持ちを和ませようとしてくれる。

休み時間、携帯電話でシミュレーションをしてみた。

お給料をもらって、どれくらい返せるのか。それが何ヶ月続くのか、

すると、それほど切羽詰まった状態になることもないということがわかり、

思い切ってこの場にやってきた。

とにかく、借金を返してそれからだ。

ただ一つ、現状にはまだ決定していないことを、計算していることも間違いなくて。

私は、『MAKINO荷下ろし要員』のちらしを見ながら、一度大きく息を吐いた。





「はい、家からですと、自転車で10分ほどだとわかりました」


『スマイルローン』でお金を借りることが出来たので、私は家に戻り、

今度は『MAKINOの友が丘営業所』に連絡をする。

出てくれたのは男性で、住所を聞かれたので素直に答えた。

今まで気にしたことがなかったのと、行動範囲が反対側だったため、

地図で調べて、営業所が近かったことに驚いた。

それと同時に、やっぱりこれだと、自分で納得する。



『4時から7時』



10分くらい前に到着し、そこから仕事をする。

7時半までに営業所を出ることが出来るのなら、家に戻ることも可能だし、

大変そうなら着替えてそのまま、駅まで自転車で向かえばいい。

今の仕事が夜の7時だとして、9時くらいまでにその日は寝てしまえば、

睡眠時間はなんとか6時間、確保される。

1週間、全ての日を当てるのはさすがに無謀だと思えるが、数日間なら、

計算上、やってやれないことはない。

私は次の日、仕事が終わってから面接という話を取り付けて、電話をきった。





「おはようございます」

「おはよう」


重苦しかった日が過ぎ、パーテーションのなくなった3階。

『キタック』にもまた、平穏な日々が戻ってきた。

今日からは本当にいよいよ、4月の再出発に向けて、色々なことが動いていく。

契約が決定したうちのドライバー達も、

数名ごと『MAKINO』のドライバーと一緒に研修を受け、互いの色を合わせていくのだ。


『わかりました、それならば……』


MAKINOの『友が丘営業所』。

面接も合格し、私も新しいことを、これから始めることになった。


「石本さん」

「はい」

「さっきね、古川さんから連絡があって、
書類の不備があるから『MAKINO』の東京支社へ来てくれと」

「エ? 不備?」

「うん……実際、どこがどうなのかと聞いたけれど、
微妙な部分なので、直接話しますと言われてね」



私、何かミスった?

書類を確かに数回出しているけれど、どちらかというとランクわけする前の問題で、

現在もめそうなものは、なかったはずだけれど。


「まぁ、とにかく聞いてみて」

「はい」


それにしても、これからいちいち、書類に不備があるからって、

『MAKINO』の東京支社に呼び出されるわけ?


蒼が何を言いたいのかわからないまま、私は朝礼を終えてからすぐ、

『MAKINO』の東京支社へ向かった。





2回目。

入り方も覚えたし、案内を受けなくても、蒼がいる場所はわかる。

前回と同じようにボタンを押すと、中から女性が出てきてくれた。


「すみません、『キタック』の石本と申します。古川さんは」

「古川は、6の部屋におります」

「6?」


私は扉の前を離れて、その女性が指さした方向を見る。


「あ、はい」


そういえば、前回もこの中にある部屋で話をしたことを思いだし、

部屋番号を確認して、6の前に立った。

ノックすると、中から『はい』と蒼の声がする。

私は『失礼します』と頭を下げて、中に入った。


「どうぞ」

「はい……」


扉を閉めて、言われた場所に座る。

蒼と向かい合う状態。


「あの……」

「風音、お前、何しているんだよ」


いきなりのため口。


「何……その言い方」


同級生というそぶりをするなと言っておいてと、当然の文句を言おうとしたら、

目の前に何かが入った封筒がポンと置かれた。


「100万ある。借金は返せ」



100万……



『どういうことだ』と叫ぼうとしたが、本当なのかウソなのかわからないため、

私はとりあえず封筒の中身を確認した。

蒼の言った通り、新札にしっかりと帯がついた100万円が入っている。


「どういうことよ、これ」


当然のコメント。


「それを言いたいのは俺の方だ。おばさんの入院費用を稼ぐために、
うちの『友が丘営業所』で早朝の荷下ろし仕事をしようとしている。
そんなことは無理だから、これで返せ」



どうして知っているのだろう。

つぶやいた覚えもなければ、相談した覚えもない。



「どうして知っているの?」

「荷下ろしの仕事を、Cランクになった従業員に紹介しているだろう。
どれくらいの人が来ているのか、調査をしている。
そうしたらそこに、関係のないお前が飛び込んできて……」


蒼はそういうと、封筒を私の方に押し出してくる。

私はすぐに反応し、当然それを押し返した。


【7-5】



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