9 期待の芽 【9-5】

【9-5】


「どうして笑うんだ、お前」

「だってさ、想像どおりなんだもの、蒼」

「想像通り?」


あまりにも基本に忠実というか、こちらの想像通りというか。


「ごめんなさい。何か聞かれるだろうなと、ちょっと想像していたから」


私の反応に、蒼はすぐ前を向いてしまう。


「おばさん、どうだ」

「はい、手術も成功して経過も問題ないそうです」


用意していたから、すぐに戻せる。


「そうか……」


蒼の首が、縦に動いている。


「で、お前さ……」

「無理はしていません。荷下ろしの仕事も、『キタック』に影響が出ない形にして、
一日だけ重なっていますが、その次の日は休みという状態の日にしています」


これも予想通り、すぐに返事をする。


「うん……」


なんだか楽しい。

あいつの想像を越えて返事をしている気分。


「ちなみに、返金も無理をしていません。きちんとどう使うのか、何を買うのか、
自分で……」

「だとしても、あの半額でいい」


蒼は、そういうと腕にしている時計を見る。


「半額じゃ、いつまでも返せないよ」

「それでいいと言っただろ」


こんな会話の、どこにその要素があるのかと言われても、うまく答える自信が無い。

でも、私は……私の鼓動は、どんどん速くなる。


「利子が高くなる」

「そんなもの、お前から取るわけない」

「……うん」


少し大人になっているけれど、色々と変わったこともあるけれど、

でも、蒼はやっぱりあの時の気持ちを、持ち続けていると……



どんどん私の頭が、勝手にパズルを組み立てていく。



このパズルが全て組み立てられたとき、きっと、今よりももっと、

ハッキリと距離が見えてくるような……



新緑の葉がいきおいよく伸びて、生きているぞと言うアピールをたくさんする。

香りも色も、そして輝きも。

私は蒼と歩きながら、見えている景色のまぶしさに、何度も目を細めた。





『風音、遊びに行ってもいい?』


そんな連絡がみずなから入ったのは、1週間後のことだった。

いつもの『定例会』かと思い、藍子も来るのかと言うと、みずなは自分だけだと言う。


『2人だけで話したいの』


そう言われ、わかったと返信する。


藍子とみずなは、私を真ん中にして出会っている。

だからといって、遠慮もない関係に発展してきているが、

そう思っているのは私だけで、みずなは違うのだろうか。

どんな話なのだろうと思いながらも、それほど深刻に捉えないまま、

その日がやってくる。


「いらっしゃい。ねぇ、今日はピザ取った」

「うん……」


家に来てくれたみずなは、どこか重たげな表情だった。

何か、大変な話題なのだろうか。


「どうしたの? なんだか……」

「うん……」


みずなは飲み物を持ってきてくれたので、それなりに準備をしていると、

あっという間にピザが届けられた。

テーブルの上に美味しそうな匂いのするピザを置き、

とりあえず乾杯しようとグラスを渡す。


「さて、乾杯しようか」

「みずな、何よ、話があるのでしょう」


私は食べながら聞くから話しなよと、軽い気持ちでみずなに声をかけた。

仕事での人間付き合いが大変だとか、何か失敗したとか、

いや、もしかしたら彼氏ができたけれど、私にそんな話がないから言いづらいとか、

話題をあれこれ想像する。


「うん……」

「ん?」


みずなの表情は、それでも明るいとは思えなくて。

これは彼氏がどうのという、プラス方向ではないのだと言うことはわかった。

でも……


「風音……」

「うん」

「自分でも、嫌な人だと思うの」

「……どうしたの」


みずなは乾杯のグラスを下に置き、そう言った。

高校生の頃から、騒がしい人ではなかったけれど、

こんなふうに重たい表情を見たことは、あまりない気がする。


「何かあったの? みずな」


私は単純にそう聞いてしまう。


「私にとって大切なのは風音なの。だから、言いに来た。
思い過ごしならそれでいい、でも、伝えておいた方がいいと思うから、
だから……」


みずなは、口を結ぶ。


「うん……」


どうも話は、みずな自身のことではなくて、私の方へ向いている。

みずなのことは信用している。

ずっと友達でいられると、自信を持って言える。

みずなからなら、何を言っても、受け止めて考えられるはず。


「大丈夫だよ、話して」


私は『聞こう』と気持ちを決める。

グラスを置き、一度ピザの蓋も閉じた。



【ももんたの小ネタ交差点 9】

引っ越しでの『迷惑なお客様…パート3』です。
実際に仕事をしたママともからの情報。見積もりするとダンボールが届きますよね。
そうしたら、引っ越し当日、箱には荷物を詰めているのに、
なんと『ガムテープを貼っていない』と言われてしまったそうです。
『置いていかなかったから』だって。それならさ、電話するとか方法あるでしょうにね。



【10-1】



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