13 混乱の中 【13-5】

【13-5】


「ほら、見なさいよ。妙なことを言わないの」

「そうそう、藍子。あなたはドラマの見過ぎ。
『新車発表会』か。興味はないけどな」


蒼のことから、話題を移動させる。

藍子は、まだどこか不満そうだったけれど、口をとがらせるだけで何も言ってこない。


「無理なら仕方がないよ……でもさ、どこでどう調べたのかな。
『キタック』にも同級生がいるんですよねって。そういって、これを出されたから」

「あ、ほら、だから……」


ドラマチックな方向に、また話を動かそうとした藍子に対して、

私は、清川さんの名前を出す。


「清川さん?」

「うん……」


副社長の牧野さんと、清川さん。

あの二人は、私が蒼の同級生だと言うことを知っている。

私は、蒼のお母さんの再婚した相手が、『MAKINO倉庫』の副社長だと説明する。


「私、牧野さんに、1回だけ会ったことがあるのよ。引っ越す前」

「前?」

「そう、『ふくたろう』に蒼のお母さんを迎えに来ていた人が、牧野さんだった。
私に気づいたおばさんが、風音ちゃんって言ったから。ほら、珍しいでしょ、名前、
それで覚えていたみたい。蒼がうちに週の半分仕事に来ているから、挨拶に見えて。
その後、運転手の清川さんに、『同級生なのですね』って。
気づかれているのに、違いますって言うのもおかしいでしょ、今のみずなと一緒」


妙な違和感があったけれど、ごまかすこともおかしくて。


「そっか……、それならそこから流れたわけね」

「たぶんね」


何もかも推測でしかないが、里穂さんが知るとしたら……


『お金のこと』


そうか、そこかもしれない……


でも、今ここでまたそれを話すと、さらにややこしくなりそうな気がしたので、

黙っていることにする。藍子は、彼氏から連絡があったのか、

携帯を開くとにやけ笑いになった。

私はあらためて招待状を見る。


「面倒だな」

「だよね」


私の本音のつぶやきに、みずなもその通りだと頷いてくれた。





『SANGA 新車発表会』



蒼が東京でどれくらい忙しいのか、私にはよくわからない。

二人の関係が、どうなっているのかも、もちろん知らないし。

正直、里穂さんに招待をされても、車に興味も無いし、

この場所に、どんな顔をして出て行けばいいのかもわからない。

でも、これを受け取ってきたみずなの立場もあるし……

そんな難しいことを考えていたら、次の日、また同じような話題が湧き上がってきた。





『SANGA 新車発表会』



そう、『キタック』にもこの招待状が数枚届けられた。

以前と違い、『MAKINO』と仕事をする間柄になったので、

『野村トラック』を間に挟み、縁が出来たと言えば出来た。

しかし、当然ながら招待状は数枚、社長と副社長が挨拶に行くのだろうと考えたら、

下にまで回ってくる余裕などなかった。


「エ? 招待状を?」

「はい」


松田さんや中西さんが行きたいと言っているのを聞いた私は、

隣に座る中村さんに、それとなく質問してみた。


「新車発表会?」

「はい、中村さんも行ってみたいと思いますか?」


女性より男性の方が、こういうイベントは好きだと思う。

中村さんは、電旺時代に色々と顔を出したので、あまり興味が無いなと返事をくれる。


「あ、そうか、そうですよね」

「広告代理店だからね、あっちの発表会、こっちの発表会だったよ」


中村さんは、東京に住んでいると、車を買うことも面倒になると言い、

また書類を1枚めくる。


「どうしてそんなこと聞くの? 石本さん、行ってみたいと思っている?」


中村さんの問いかけに、私は手を振って否定する。


「いえ、私は」

「もし行きたいのなら、俺、『電旺』の仲間に連絡取るけれど」


中村さんは、チケットを手に入れてあげようかと、違う方向に進みそうになる。


「違います、いえいえ、違うんです。ちょっと話題に出してみただけで。
私、車には興味も何もないですから」


私は仕事の書類を片付け、話題を終わらせると時計を見る。

妙な聞き方をしたから、中村さんに変な気を回させるところだった。


「見積もり、行ってきます」

「あ、そうか、うん……よろしく」


3階に残っていた中村さんと奥村さんに見送られ、

私は引っ越し依頼のお客様の家に、向かうことになった。

本来なら、担当者が行くべきところだけれど、

この時期くらいから夏休みを取る社員もいる。

誰かヘルプと言われたら、現場を知っている私が、

率先して入ろうと決めていたこともあるが、何より、そのお客様の家が、

『橋爪クリーニング』の隣にある公営住宅、

そう、昔、私が母と住んでいたあの場所に建った住宅であることを知ったからだ。

東京に来たら、大学に行ったら、もっと遊びにおいでと言われていたが、

生活の拠点が少しずれてしまったので、なかなか顔を出せていなくて。



『時間が出来たら、遊びにおいで』



こんな年賀状のやりとりが、1回、2回と重なったのが、

さらに増えていく前に、近況報告をしてこようと決めた。



【ももんたの小ネタ交差点 13】

風音と蒼はどちらも『母一人』に育てられましたが、
蒼の母は、『再婚』の道を進みました。
女性の再婚は40%を少し越えるくらいだそうです。男性は約半分の50%。
ちなみに結婚回数日本の最多を調べて見たら、『結婚50回』だということですが……
こうなるとイベントとしか、思えませんよね。



【14-1】



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