14 告白の風 【14-4】

【14-4】


『何を考えているのか』



確かに、周りの人たちが疑問符を浮かべてしまう行動を取っているのは、

蒼のためにもよくない気がする。

『MAKINO』の社員だと、蒼のことを思っているうちの社員達は、

仕事の流れを気にして、何かを不思議に思っても、

あれこれ聞き出すことはしないだろう。


でも……


秋になったら蒼が『神戸』に戻るのだとしても、

またこれから、『キタック』と縁を持つこともある。


私なら……


蒼と別のつながりを持つ私なら、多少言える言葉もあるはず。

私はその日の仕事を終えた後、外から戻ってくるはずの蒼を捕まえようと思い、

しばらく社内に残った。


「お先に」

「お疲れ様でした」


松田さんが、楽しそうに携帯を見ながら部屋を出て行く。

時計、何時だろう。

6時半か……そろそろいつもなら戻ってきているのに。

今日はどこか遠くに、出かけたのか。


『MAKINO』で働きませんかという、あのちらし。

相当な時間を使い、相当な封筒を出した。

宛名が不明、アパートがないなど戻ってきている数も多いが、

誰か一人でも、仕事に立候補してくれる人がいたらと、

蒼が副社長に話をしていた通り、もし、動いていることがあるのなら、

『キタック』の名簿も、この際きれいにしておきたい。


そう、私は『キタック』側の人間として、『MAKINO』がやっていることを、

知る権利もあるはずだ。


「さてと……」


中村さんも帰り支度をし始めた。私は『お疲れ様です』と声をかける。


「珍しいね、残業?」

「名簿のデータを、きれいにしておきたくて。
なんだか人のデータだと思うと、途中で終わりにするのが気になるというか」

「名簿? あぁ、あれか」


私は、奥村さんから聞いた話を使い、これから別の人がこのポジションに入るとなると、

ごちゃまぜになりそうだからと、うまく逃げようとする。


「そうか、まぁ、それならお先に」

「はい」


中村さんは数歩進んだが、立ち止まる。


「明日、予定ある?」


私は『特には……』とすぐに反応し。


「それなら、食事に行こう」


食事のお誘い。

私は『はい』と答える。

昼間、奥村さんに妙なことを言われたタイミングで、中村さんと目があった。

だからなのか、誘われることが、少し気恥ずかしくて。


「うん……」


中村さんからも、言葉の続きはなかった。でもそれで伝わる気がする。

言葉と同じタイミングで扉が開き……


「けじめもいいけれど、あまり遅くならない時間に帰れよ」

「……はい」


頷いて顔を上げると、中村さんの後ろに、蒼の姿が見えた。

中村さんも音でわかったのだろう。蒼に『お先に』と声をかけ、階段を降りていく。


「お疲れ様です」


中村さんとの会話、聞かれていたわけではないだろうが、

いや、聞かれていてもおかしなことではないけれど、少し……


「もう仕事は終わるでしょう」

「うん……」


蒼の状況を見て、私の方から声をかけた。

今は誰もいないからか、同級生口調だと怒られることもなく……


「名簿の整理をしようと思って待っていたの。
データ、まとまったらこちらにも出してくれるって言っていたよね」

「うん……」

「あれだの数を出して、実際には誰か来てくれたの?
最後に出していたリストなんて、ほとんど戻ってきたでしょう」


蒼は何も答えないまま、デスクを開き、1枚の紙を出す。


「ねぇ、蒼……それにね、私、聞きたいことがあるの」


聞きたいことがある。私がここで蒼を待っていた本当の理由。

私の言葉に、蒼の顔が上がった。


「聞きたいこと?」

「うん……本当は、何をしようとしているの?」


そう、本当の意味、それを聞きたい。

私には、今、蒼がしていることが、『MAKINO』からの指令だとはどうも思えなくて。


「『MAKINO』の仕事だし、『キタック』には関係が無いと言うかもしれないけれど。
データ自体はうちのものだもの。実際、うちの社員たちには、蒼のしていることは、
不思議がられている」


動かない唇。

でも、私の話は、蒼の頭に届いているだろう。

それなのに、届いていないふりをしているように見えた。


【14-5】



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