14 告白の風 【14-5】

【14-5】


いつも持ち歩く鞄に何やら書類を入れ、薄い引き出しを開ける。

どうしてすぐに返事が無いのか、言えないようなことなのか、

私はまだ、次の言葉を待つべきだろうか。

蒼に、問いかけたのは私なのに、まるで存在もわかっていないかのような態度をされる。

こんな態度を取られると、最初にきちんと話そうと思っていた強い気持ちも、

消えて行きそうになるのだが……。

でも、こんなチャンスは滅多にない。

知りたいのだから……いや、知らなければならない。



あなたが何をしようとして、今、黙っているのか。



「最初、2つ目のファイルで、宛名のシールを出したでしょう。
それを封筒に貼り付けたら、チェックをするから自分の机の上に置けと言って。
だからその通りにした。そうしたらそのとき、本社から牧野さんが来て……」


蒼も予想外だという顔をしていた日。


「蒼は封筒の入った段ボールを机の上から下ろして、部屋の隅に持って行った」


言われている仕事ならば、そのままでいいはず。

あの行動は、指摘されたくないからだと、勘ぐりたくなる。


「それが?」

「どうしてそういうことをしたの」

「邪魔だと思ったからだ……」

「ウソ」


それはウソだ。


「どうしてウソだと思う」

「邪魔なら、下におけばいいだけでしょう。
わざわざ目立たない場所に持って行くなんて、必要ないし」

「それは……」

「それに……清川さんのこともあるの」


清川さん。

最初の日、蒼と一緒に『キタック』に顔を出した。

仕事の内容がどういうものなのか特に語らず、次に会った時には、蒼の運転手だった。

私は、何度か『MAKINO』の東京支社に呼び出されたし、ここでも会ったけれど、

蒼はいつも、清川さんを前にすると、切り替えようとする。



そこに続いている話があっても、切ってしまう。



「清川さんって……何? どういう立場の人なの?」


清川さんの影があると、急に蒼の態度が変わる。

私はいつからか、そう思うようになった。

私たちが同級生だということも、『キタック』の社員ならともかく、

清川さんの立場なら、話していたっておかしくない。

実際、清川さんから聞かれたと話をしたとき、蒼は明らかに嫌そうな顔をした。


「名簿の3つ目は、思った通りほとんどが戻された。
当然だよ……データは10年くらい前のものもあるし。
奥村さんは何も知らないから、戻されたものを蒼が使う机の上に置いたの。
そこに、突然清川さんが現れて……」


私は……


「私、蒼の机の中に戻された封筒を入れた」


本能的に、見つかってはいけないものではないかと、そう感じたから。


「理由はわからないけれど、きっと見つからない方がいいのかなと、そう思って」


余計なことだったかもしれないが、あの時はそうすべきだと、体が動いていて。


「そうか……」

「うん」


行動を否定されなかった。

ということはやはり、名簿を使ったこの仕事は、

『MAKINO』から言われていることではないのだろう。


「でも、風音には関係がないから」

「関係がない? いや、なくない」


『関係がない』と簡単に、ここで打ち切られては困る。


「さっきから言っているでしょ。少なくとも、データはうちのものだよ。
『キタック』の社長が優しい性格だから、どんな形でもうちに縁があった人と
またつながるかもしれないと思い、色々と無くさずに残してきたものなの。
『MAKINO』だから、立場が上になるから、身勝手な話に使われて、
相手に迷惑がられたら社長が困る」

「『キタック』には迷惑をかけない」

「どうしてそんなことが言い切れるの」


中村さんの話にもあったように、実際、手紙を送られて、

疑問符を持っている人たちは、大勢いるはず。

小さな積み重ねを感じているからこそ、言える事実。


「『キタック』に迷惑をかけるつもりがないのなら、問題が無いというのなら、
話せるでしょう」


私は『キタック』側の人間。

同級生だという理由だけで、いや、同級生だからこそ、

蒼のしていることを、見過ごしてはいられない。


「言えば納得するのか」

「わからない」


それはわからない。理由を聞いたら、その先を知りたくなる気がする。


「でも……この状態よりは……何も知らないでイライラするよりはいいと思う」


蒼の今を、色々な意味で知りたい。いや、知ってしまいたい。

ひとつずつわかった事実を全て組み合わせて、

『時間が流れていること』を、私は受け入れたい。


「人を探しているんだ」

「……人?」

「あぁ……」


蒼はそれだけを言うと、バッグを手に持った。


「誰?」

「だから、風音には関係がないと言った」

「仕事の人? それとも……」


数分前の冷静さは完全に消えてしまった。

わかっていた。聞いてしまったら、納得できるまで前に進もうとしてしまうことは。

みずなから里穂さんのことを聞き、蒼からもそれを肯定する台詞を受け取ったのに……


もう、私たちは昔とは違って、互いに別の道を歩いているのだと。

わかっているのに……



どうして『清廉高校』まで連れて行かれたのか……



あの行動に何か意味があるのではないかと、自分の頭が勝手に行動し始める。

そうなのだ。社長のため会社のためと言いながら、実は最初から違っている。

蒼が何を考えて、どうしようとしているのか……



私は今、ただそれだけを知りたい。


【ももんたの小ネタ交差点 14】

風音にとって、頼りになる職場の先輩、奥村さんと中村さん。
『口が堅く、落ち着いている。そして話を聞いてアドバイスをくれる』
こんなところがあれば、素敵な先輩と思われるそうですが、どうかな。
私が昔、お世話になった先輩は、話を聞くのが上手で、ヨーグルトが大好きな女性でした。
『朝食りんごヨーグルト』を食べている姿、今でも思い出せます(笑)



【15-1】



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