17 過去の声 【17-5】

【17-5】


エレベーターで見たよりも、もっと海が近く……

輝いている橋のライトが……


「あ……」


部屋のライトが消えた。

エレベーターの時のように、私たちの影は窓に映らない。

見えているのは、目の前の海と輝く橋と……


「風音……」


私の腰に回る彼の手。

背中から感じる彼の声と、息づかい。

私は自分の手で、彼の手に触れる。

速まる鼓動、それでも彼なら……真路さんなら大丈夫だと、心からそう思える。


「こんな場所に、いつも来ているのかなとか思うなよ」

「エ……」

「今日は、どこで過ごそうかと、結構、真剣に調べたから……」


真路さんはそういうと、クックッと笑い出す。

私は自分の体を動かし、真路さんと向かい合った。


「そんなに自分でウケないでよ。ムード下げちゃうなぁ、もう」

「ん? そうか?」


真路さんの唇が、私の頬や、首筋に届く。


「部屋に……来てもらおうかなとも思ったんだ」

「うん……」


緊張をほぐしてくれるような優しいキス。

私はもっと触れていたくて、もっと触れて欲しくて彼の目を見る。


「でも辞めた」

「……どうして?」


この場所も素敵だけれど、真路さんの部屋で一緒にというのも、

悪くなかった気がするのに。


「制作途中のプラモデルが3つもあって。どかすのも面倒だ」

「プラモデル? そんなことするの?」

「するよ、結構、突き詰めるのが好きなのかも」


台詞が途切れると、今度は耳元に彼の舌先が触れる。

慣れない感覚に、体がピクンと反応した。

そんな私を見ながら、真路さんは少し笑っている。


「笑わない……」

「笑っているわけではないよ、かわいい……と思うだけ」


真路さんは私のおでこに自分のおでこを軽く当てると、そのまま両手で頬に触れた。

そこからのキスは、ためらいも遠慮も、何もない。

急に訪れた激しさに、思わずタイムをかけようかと思ったが、

そんなことが出来るわけもなく、

私は、溺れてしまわないように必死についていこうとする。

崩れそうになる私を抱きしめた真路さんは、そのまま体を抱き上げると、

ベッドの上に落ろした。

そして、さらに先へと時を動かそうとする。


「ねぇ……」


食事をしてきたし、シャワーでも浴びてと言おうとするのに、

真路さんは余裕の顔で、私の反応を楽しもうとする。


「真路さん……」

「わかってるから……」


そのまま突っ走ることはしないという意味なのか、私のセーターはまくし上げられ、

その場所から入り込んだ彼の手が……



胸元に……伸びる。




暗い部屋、そして逃げられない体勢。

男の人の、少し荒い息づかい……






『メチャクチャにしてやる……』






あの日のこと……あの男のことが……





どうして今、急に……





今まで思い出したことなどなかったのに。





もう、暗い部屋でも、一人でいられるようになっていたのに……





「風音……」


私は、聞こえてきた真路さんの声に、ただ必死にしがみついた。





きれいな夜景の見える窓は、しっかりとカーテンを閉めて、部屋の電気をつける。

真路さんは私を起こし、ベッドサイドに座った。


「どうした」

「ううん……」


どうしたのかと聞かれて、こうなのとは言えない。

今日という日に、言う話ではない……


「急に体が固まったみたいになるし、息も荒くなるしさ。
緊張しているような雰囲気とは違った気がして」


確かに初めての出来事であることには変わりない。

でも、始まりからずっと、私は真路さんの声や言葉に、安心できていた。

この人と一緒に、見える景色が見たいと……。


「もしかしたら……こんなふうになるつもりはなかった……とか」


私は何度も首を振る。

そんなことはない。この日を私自身も待っていたのだから、


「嫌なら……」

「違うの」


真路さんは何も悪くない。

私の、あんな最低な過去の時間に、この日が汚されるのはたまらない。


「風音……」


私は横に座る真路さんに、自分からキスをした。


「何も言わないで、もう大丈夫だから……」


大丈夫だから、このまま迷ったりしないで、私を包んで欲しい。

そういう願いを込めて、彼を見る。


「勘違いするな。怒っているわけではないんだ。風音が何を考えているのか、
それを知りたいだけだ。正直に言えばいいよ、気持ちがまとまらないのなら……」

「違うの……真路さんは悪くない」


話したくはない、でもどう言えば収まるのか、全くわからなかった。

『この時間が嫌』だとか、『真路さんに対しての不満』とか、

勘違いされるのはもっと嫌だから。


だから、話すしかないとそう思った。



【ももんたの小ネタ交差点 17】

職場の先輩後輩の関係から、変化が見えた風音と真路。
実際でも、『相談にのる』、『二人の時間を増やす』。こんな雰囲気が出てくると、
先輩後輩から、恋人同士に関係が変わってくるそうです。
そう思いながら読んでみて、『そうなっているじゃなの!』と自己満足した私。
そうそう、自己満足で成り立っている『発芽室』なのです。



【18-1】



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