22 心根の核 【22-2】

【22-2】


『友原先生の定年を祝う会と同級会』


今や『清廉高校』の教師になった同級生の田島が発案し、

秋も深くなったある日、駅前に出来た居酒屋で、懐かしい顔が集合することになった。

私たちもギリギリまでどうしようかと参加を迷っていたが、一度避けてしまうと、

次からも踏み込むことが難しくなりそうで、みずなと一緒にその日を迎え、

『頼まれごと』をこなすために、少し早めに学校に顔を出す。



蒼は来ないだろう……

そんなことわかっているのに、心の片隅で、姿を見せる気がして。



「おぉ……石本、吉村」

「久しぶりだね、田島」

「そうだな、成人式の会以来か?」

「田島がうちの先生になれるって、どういう基準で教師を選ぶのかと、
不安に思うよね」


みずなのツッコミ。


「何言っているんだよ、俺は母校愛をしっかり語ったわけだ」


今日は土曜日。来賓用のスリッパを履いた私たちに、田島はそう言いながら笑うと、

これからみんなで集まる居酒屋に、運んでもらいたいものがあると、

何やら机の下から袋を出してくる。

私とみずな、それぞれが紙袋を受け取っていると、携帯の音がしたため、

すぐにバッグを開こうとした。

しかし、その音はみずなのものだったようで、校内ではまずいかもと思い、

昇降口の方へ行ってしまう。

袋の中を確認する田島と、私がその場に残った。


「ねぇ……」

「ん?」

「今日はどれくらい集まるの?」

「12……」

「エ……それだけ?」


私の驚きに、田島はまぁ、そんなものだよと答えを戻してくる。


「だって12って……3分の1じゃない」


当時のクラスは34人だった。

ほぼ3分の1になる。


「中尾も、実際、もう少し集まるかと思っていたみたいだけれど、
まぁ、それぞれ色々あるだろうし、強制するものでもないしさ」


田島は、すでに結婚し、九州に引っ越したため無理だったとか、

手紙自体が届けられなかった同級生もいると、教えてくれる。


「まぁ、蒼みたいに海外ってこともあるしな」


蒼のこと。

田島は、転校してからも親しかったのだろうか。


「田島は、転校してからも蒼と連絡取ってたの?」

「いや……俺は気にしていなかったけれど、あいつがね。まぁ、そうだろうけれど」


田島もバスケ部。

確かに、途中で嫌になってしまったという理由からすると、

連絡が取りにくかったのかもしれない。

となると、現在の蒼のことも、知らないままだろうし。


「おばさんからは、謝罪の手紙ももらって、
うちの母親も、数回は手紙を書いたりしたみたいだけれど……」

「ふーん……」

「お前は、アイツと会ったりしたのか?」


私は、蒼が『MAKINO』に入社し、自分の勤務する『キタック』と縁があったので、

半年くらい一緒に仕事をしていたと話す。


「あ、そうなんだ」

「うん……だから転校の話も……それなりにはね」


そう、それなりだけれど。


「あ……何、あいつ、お前に話したんだ」


田島は顔をあげると、何度も頷いている。


「そうか、それならよかったわ、気持ち、切り替えたってことだろうな」

「うん……」


あれだけ熱中していたバスケを辞めてしまったこと、

おばさんのことを理由にして、神戸に逃げるように行ったこと……


「うちのお袋と俺が、その場にいたことがショックだったみたいでさ。
俺も誰にも言わなかったし、お袋だって言わなかった。
むしろ、店長にもそんなはずはないと言ったみたいで……」



『誰にも言わなかった……』

『店長にも……』



田島の話が見えてこない。


「エ……」

「あの万引き騒ぎは、どう考えてもストレスとか……」



『万引き』



「そっか、石本自身に昔話のように語れたのなら、もう大丈夫だな」


いや、語られていない。

そんな『万引き』だなんて、聞いたことがない。


「田島……」

「何?」

「それって、どういう話? 石本自身にって、私に何か関係あるの?」


田島は私の表情を見ると、『聞いていたのではないのか』と慌て出す。

私がきちんと教えて欲しいと言っていると、電話を終えたみずなが戻ってきた。


「さて、先に行こうか、風音」

「うん……でも……」

「石本、あのさ」

「田島、何があったの? 教えてよ」


蒼が『万引き』をするなんて、絶対にあり得ない。

世の中に言われる不良ではないし、親に迷惑をかけて笑うような人ではないから。


「どうしたの、風音」

「田島……」


そうだ、そうだった。当時の蒼に、何かあるらしいことは、

絵史との再会でも、おばさんとの再会でも、少しずつ不思議に感じていた。

でも、具体的に結びつかない、言葉が宙に浮いた状態だったから、

突き詰めることが出来ていなかった。

でも、聞いてしまった今、このまま引き下がれない。

あの事件のあと、何が起こって、どうなったから、蒼は神戸へ行ったのか。

私が知らないことを、田島は知っているのだろうか。


「教えてくれなければ、私は同級会に出られない」


私の真剣な表情に、みずなは『何があったの』と田島に問いかける。

田島は気まずそうな顔をした後、職員室の時計を見た。


【22-3】



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