22 心根の核 【22-5】

【22-5】


「それでは、予算はこれくらいで」

「はい」


『MAKINO』との仕事が決まり、時間が重なっていくごとに、

『キタック』という看板を背負った私は、少しずつ肩身が狭くなるような日が、

増えてきた。

蒼の代わりに宮下さんが入り、さらに山中さんと小池さんが増えた。

『MAKINO』側は、時期がくるとメンバーを変えて行くが、

最初は認めの印を押してもらう、通過点的存在だった人たちのはずなのに、

季節が移るごとに、今は経理部門の中心を占めるようになっている。

トラックも、互いに持ち寄り仕事をしている状態は変わらないし、

相変わらずロゴは『キタック』となっているが、仕事の受注は、圧倒的に、

『MAKINO』関係が多く、松田さんや中西さんも、仕事を取るよりも、

流れがうまくいくような、仲介役を担う状態が増えてきた。


「失礼します」


真路さんの言っていたとおり、いずれ『キタック』はなくなるのかもしれない。

私は、週の半分くらい、こうして見積もりをするために外周りをしているが、

このままでいいのかと、考えることも増えてきた。

蒼から借りていたお金の返済も終わったため、

埼玉にいる母や祖父母に、多少、お金を送ることは出来るが、

それより、もっと役に立つことを考えるべきなのかと、

20代前半の頃と比べて、気持ちは動き、揺れていた。





「藍子、結婚おめでとう」

「おめでとう」


12月の大安。

私たちの親友、『開田藍子』の結婚式が行われた。

藍子が優しすぎてと文句を言っていたご主人は、本当に優しそうな笑顔を持つ人で、

これなら幸せになれるよねと、みずなと何度も頷きあう。

何度もカラオケに行き、練習を重ねた『Butterfly』は、

みずなの見事なハモリによって、実力以上の拍手をもらうことになる。

私たちは、始まってからほぼ泣きっぱなしの藍子に言葉をかけて、

食事が並ぶ席に戻った。


「はぁ……これで食べられる」

「同じく」


『やるべきこと』があると、なかなか喉を通っていかなかったが、

挨拶と歌が終わったので、ここからは食べることに集中できる。


「なんだかさ……」

「何?」

「大学に受かって、それで藍子に出会って……もう8年だなと」


藍子があの場所に、同じように部屋を借りてくれたことで、

私は自分で、過去を乗り越えるための力をもらうことが出来た。

みずなのように以前から私を知っている人ではない人が、事件を聞いても、

何も違和感なく受け入れてくれたことが、本当に嬉しかったから。


「藍子の明るさに、ずっと笑わされて来たもんね」

「そうそう」


藍子はいつも前向きだった。

クリスマスが一人なのは嫌だからと言ってみたり、

そうかと思えば、男なんて頼るものではないと、強く宣言してみたり。


「結婚したから、さすがに女子会とは行かないかな」


みずなの言葉に、私も頷いていく。

絆は変わらないけれど、ずっと同じではいられない。


「でも、ご主人優しそうだから、きっと、たまには遊んでいいよと言ってくれるよね」

「いやいや、藍子が勝手に飛び出してくるよ、きっと」

「そうかも……」


30代になったら、40代になったら……

藍子とみずなとは、きっとそれなりの付き合いが出来るはずだと、

私は思いながら、ナイフとフォークを動かした。





色々なことがあった年が終わり、久しぶりに拝もうと思っていた初日の出。

しかし、眠気に勝てないまま、お昼間頃まで寝ていた私も、

いささかお正月気分が抜ける1月の中頃、

以前、刑事が『キタック』に来たことがあった事件の結果が、明らかになった。



『坂上京助』



多くの女性から訴えられていた詐欺常習犯の男は、

裁判にかけられ、『有罪』が決定した。

うちで働いていたという社長の残していたデータも、参考資料となったことがわかり、

さらに別の情報も、明らかになる。


「牧野さんが……」

「あぁ……そういった男がいることを、牧野さんは以前から知っていたそうだ。
トラブルをわざと引き起こす男ではあるが、使いようによっては、
自分に有利な展開に、状況を動かすことも出来る」


北村社長はお孫さんがくれた似顔絵を、嬉しそうに飾りながらそう話した。

牧野さんが参考人として呼ばれたという、ベンチャー企業に対しての嫌がらせにも、

この坂上は絡んでいた。

警察は、牧野さんと坂上の個人的なつながりを結びつけようと、

あれこれ画策したらしいが、決定的な証拠のないまま期限が迫り、

牧野さんは元の生活に戻る。

結局、周りの人間が率先して起こした出来事だというように、処理された。


「それでも、牧野さんの力は、以前より弱くなるだろうな。
こういうことが噂になったし」

「そうですか……」


大きな組織のことなど、私には何もわからない。

それでも、気にならないと言えばウソになる。



そこには蒼が絡んでいるから……



牧野さんの力が弱くなったら、蒼は、どうなっていくのだろう。

きちんと仕事をしているだろうし、そんなことで会社を出ないとならないなんてことは、

ないだろうけれど。


「石本さん、電話です」

「はい」


私は小池さんの声に社長の前を離れ、受話器を上げる。

昨日も見積もりに行ったから、もしかしたらその返事かと思い、

営業用の明るい声を出してみた。


「はい、石本ですが……」



『もしもし……風音?』



聞こえてきたのは、蒼の声だった。



【ももんたの小ネタ交差点 22】

風音をずっと支えてきたみずなと藍子。3人が集まる『女子会』ですが、
世の中ではどんな話題が多いですかというアンケートがあり、『片思い』、『仕事』、
『男性の選び方』がベスト3とされてました。女性の中でも、女子会というと、
人の悪口ばかりになると言い、嫌う人も多いようですが、みなさんはどう思います?
私自身は、年に1、2度ですが、学生時代からの女子会仲間、今でもいます。
近頃、『介護、体の不調』が話題になってますけどね(笑)



【23-1】



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