24 運命の紙 【24-2】

【24-2】


『MAKINO 完全オートメーション化に成功』



『MAKINO』が、『キタック』との仕事を始めた翌年、

法人だけではなく、個人も意識した仕事ををするという会社のイメージ戦略もあり、

車の形をしたキャラクターを世に送り出した。

最初はそれほど話題になっていなかったのだが、

『目的地までノンストップ』という売り文句に気づいた受験生が、

小さなフェルトの携帯画面ふきをお守りに持っていたら、

『第一志望』に合格できたという体験談がSNSに載り、そこから口コミが広がった。


『マッキー』と呼ばれるキャラクター商品は、

去年は夏頃から、営業所で売り切れ続出となり、

そんなソフトな話題と正反対の『オートメーション化』という話題も、

変化の少なかった業界で、大きな記事となった。

その記事をネットで追いかけている中、

『壮明大学』の広報誌に蒼の名前を見つけた私は、

これから『MAKINO』が進むべき道、

いや、蒼が目指す道を知ろうと、さらに文字を追いかける。

『先輩会議』というタイトルで、蒼と対談をしているのは、

レストランの中に食事配膳用の線路を作り、

数台の汽車が、ウエイトレスの代わりに注文の品を持って行くという企画を立ち上げ、

注目されている男性だった。

『壮明大学』で、彼は蒼のさらに3つ年上になる。

さすがに大学の広報誌、仕事の話プラス、大学の教授話にまで広がっていく。

蒼の送り出している言葉も、かしこまったものではなく、

ちょっとした本音がこぼれているような、親しさのあふれるものになっていた。



『古川さん、27か……』

『はい』

『だとすると、仕事で一人前になれたと思う頃?』

『いやぁ……まだです。やっとやりたいことが見えてきたかなと』

『そうか……」


対談の男性は、自分は自信家だから、22くらいで一人前だと思っていたと、

笑いながら答えている。


『でも、周りからそろそろ……なんて話は、出て来るでしょう。
俺、結婚したの26なの。今の仕事がやっと動き出した時で……』


対談相手の男性は、『家庭を持つ』と男は覚悟が決まりますよと、

蒼にアドバイスをしていた。


『そうですね……そういう出会いがあれば……』


ガタンと大きな音を立て、電車が急にストップした。

昼間のため、それほど混雑しているわけではないが、何が起きたのかと、

乗客達は窓の外を見たり、隣同士で話したりし始める。



『ご連絡いたします……』



車掌は、停止信号が赤に変わったため停止したこと、

今、この先に何かトラブルが起きているのか確認するので、

少しお待ちくださいと、そう放送する。

ざわついた車内に、『それなら大丈夫』という安堵の空気が流れ出した。



『そういう出会い……』



私は携帯電話を閉じるとバッグに押し込み、いつ電車が動き出してもいいように、

しっかりと吊り輪をつかんだ。





『10月に退社をする』

私が本来希望を出したのは9月だったが、

今現在、『MAKINO』から出向している山中さんが、

9月に九州支社に異動が決まっているらしく、

一気に減るのはトラブルが出やすいと言われ、私の退社は10月の末に決まった。

埼玉にいる母に話すと、『それでいいのか』と聞かれたが、

その声のトーンに、娘が戻ることへのほっとしたような気持ちを感じ取る。


「うん……今ならまだ、なんとか再就職も探せそうでしょう」


何があるのかなどわからないが、もう決めたことだ。

6月に入り、藍子の『おめでた』を知ったため、3人の会を開くことにした。


「埼玉に?」

「うん……10月で」

「そうなの?」


藍子は、寂しくなると哀しそうな顔をする。


「何言っているのよ、別に外国に行くわけではないし、
赤ちゃん産まれたら、絶対に見に来るから」

「それはそうだけれど」

「そうだよ、藍子。赤ちゃんが生まれたら、それで定例会が開けるしね」


みずなは祖父母の事情も聞いたことで、仕方が無いかもねと納得してくれる。


「みずなは?」

「私も、今年か来年かと思っている。
うちは問題ないけれど、『SANGA』は販売店、いくつか閉めるみたいだし」


みずなは業績が悪くなったわけでは無いけれど、経営陣の考えが、

少しずつ変わっているみたいと言いながら、飲み物を飲む。


「そうか……」


大学を出て、私とみずなも5年勤めた会社だけれど、

男性と違い、女性はまだまだ定年までの地図を描くのは難しいところも多い。


「この夏にでも、彼が親に挨拶したいって言ってくれているし」

「あ……うん」


みずなの彼。

同じ販売店の中で働いているエンジニアさんだった。


「そうか」


藍子はそうなんだと言いながら、『おめでとう』と声をかける。


「まだだよ、何も言われていないし」

「言われていないの? だって、ご挨拶に来るって」

「でも、言われていないの」

「何それ」


みずなは笑いながら、目の前の料理を取り分けてくれる。

私は箸をそれぞれに配った。


「風音は? ねぇ、連絡取った?」

「ん?」

「ん……じゃないでしょう、古川さんよ」


藍子は何もしていないのかと、驚いた顔をした。


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