1 おかしいけれど、思ったのです! 【1-5】


【1-5】


「で、叔母さんに何を頼むの」


祥吾は愛美は確かに昔から『お世話焼き』だけれどと言い、

勇也が入れてくれたコーヒーを運んだ。


「あれ? あいつお前に話していないのか、色々と」

「色々って何」


祥吾は、昨日は自分のことで精一杯だったからと言いながら、

コーヒーに砂糖を1杯入れる。


「あいつさ、なんだかおせっかいを商売にしたらしい」


友則は、そのおかげで離婚までさせられたと笑い出す。


「あ、そう、そう。そこが気になっていたんだ、叔父さんたちが今更離婚かよって」


祥吾は、決定的になるような失敗をいつしたのかと、友則に聞いた。


「決定的な失敗なんてするわけがないだろう。俺は浮ついた恋しかしない。
あいつが離婚だって騒いだから、ならしょうが無いなと」

「浮ついた恋? それって浮気ってこと?」


祥吾は笑っている友則に向かって、『呆れています』という顔を見せる。


「おふくろさ……『みらいず』ってお見合いの世話焼きを仕事にし始めた」

「見合い……」


勇也は『あぁ』と言いながら、祥吾の横に座った。


「学生時代からの友達が、昔から経営していたらしくて。
で、自分もやりたくなったんだと。となると、こういう旦那がいて、
浮気を楽しく許しているような自分だと、仲介人として問題があるからとかなんとか……。
こういう旦那ってなんだよな、祥吾」

「ん?」


祥吾は『叔母さんらしいね』とコーヒーを飲む。

勇也は祥吾を見ると、『ねぇ』と声に出した。





その日の夜、なんとかサボっていた洗濯や掃除を済ませたひかりは、

昼過ぎから力尽きて眠っていて、気づくと夕方になっていた。

『ビタレモン』がなかったことを思い出し、パソコンをあらためて立ち上げる。

本来なら近所の店で買えばいいのだが、

売り出されていた20本をまとめ買いしようとして、以前、不思議がられたことがあり、

それからはネットで箱買いをするのが、当たり前になっていた。


「ん?」


メールの印が光っていたので、業者からかと思い名前を見る。


「『みらいず』? 入会ありがとうございました……って、何これ」


ひかりは身に覚えのない『ありがとう』のメールに、すぐ『詐欺』だと考えた。

こういう『おめでたそうなもの』に引きずられてしまうと、

身に覚えのない高額請求などがあり、

慌てふためくというニュースを何度か見たことがあるからだ。

しかし、『みらいず』は見合いのサイトで、

『ご希望通りのお相手が見つかりました』の言葉が続いていたため、

ひかりは、『詐欺』という思い込みから、疑問符を浮かべることになる。


「何よ、希望通りって、希望……」


その時、うっすらと昨日の夜の出来事がよみがえってきた。

酔っぱらったまま、パソコンに触れていたことを思い出す。

ひかりはメールはそのままにして、とりあえず『みらいず』を調べることにした。

すると、ホームページに、見覚えのある男性の顔が出てくる。


「あ……」


ひかりはその『ひげ』の男性を指さし、さらに思い出した。

アンケートがあり、そこに勝手に打ち込んだ内容。

『高学歴、高収入、高身長』の条件を、確かに入れた。

でも、入会したという覚えは無いのにと、両腕を組む。

しばらくたって思い出した現実に、ひかりは言葉が出なかった。





「『みらいず』?」

「はい。大切な未来のお手伝いをする『みらいず』に、私、入会していました」

「入会していたって何よ、それ」


週末の休みが終了し、月曜日、ひかりはランチタイム、

同僚の智恵と『島津小春』と一緒に、お気に入りの店に入った。

『KURAU』にも社員食堂はあるのだが、上司が使っていることもあり、

どこか息苦しいという理由で、3人はよく外に出る。


「勝手に入会させられたのなら……」

「させられてはいないんです。自分でしたので」


智恵は、話が見えないと首を傾げる。


「要から、結婚式の2次会に出ないかって電話がかかってきて。
で、腹が立って一人で飲んで……」

「どこで?」

「それは……家」


ひかりと入社が同期の小春は、それならよかったと、安堵の表情を見せる。


「で、そのとき、あまりの悔しさに、見合いでもしてやろうかなと。
もっといい相手を見つけて、要に見せびらかしてやるって……」

「それ、おかしくない?」

「おかしいけれど、そう思ったのです」


智恵は、ひかりの方を見ながら、『境界線を越えたんだね』と納得する。


「でも、仮登録までして気持ちが動かなくなって。こんなふうに取り組んでも、
うまくいかないだろうなと……で、そのままにしていて……ずっと」


ひかりは名前や住所などを打ち込み、仮登録のまま放っておいたために、

パソコンを立ち上げたときに、その情報が呼び出され、

すっかり前の出来事を忘れていた自分が、アンケートに答えて、

その問いを終了するボタンだと信じ、入会してしまったという流れを説明する。

智恵も小春も、そこで初めて大きく息を吐く。


「だから言ったでしょう、近頃のひかりの飲み方は問題があるって」

「智恵さん……」

「智恵さん……じゃないの。この間だって、山内さんに絡む、絡む」

「エ……山内さんに?」


何気なく雄平のファンである小春は、

自分がいないときに、どういうことよをひかりを見る。


「いや、この間は、吉川部長の愚痴を話していただけだって。
山内さん優しいから、嫌がらずに聞いてくれるし」

「そうだけれど……」


智恵は、このままだと、何か大きな失敗をすると思っていたと声に出す。


「で、どうするの?」


小春は、このまま見合いの会に入るのかと、聞き返した。

ひかりは問題はこの先だと指を前に動かす。


「それだけならよかったの、文章を読んでみたら、女性は入会金無料だし。
自分が失敗したのだから、すみませんと謝って、退会すればいいでしょう。
そうしたらなんと、私の相手が見つかってしまったって」


ひかりは『高学歴、高収入、高身長』と条件を打ち込んだのに、

それからすぐに『見つかりました』とメールが来ていたらしいと話し続ける。


「それならよかったじゃない、渡りに船でしょう」


智恵は、するだけしてみたらと言い始める。


「そうですよね、そうそう、ひかり。それが出会いだと思えば……」

「ウソ……だし」

「ん?」


ひかりは小さな声で、『アンケートに全てウソを書いた』と白状した。


【2-1】





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