2 どうしてなのかな? 【2-2】


【2-2】


「そもそも入会するときに、きちんと読まないお前が悪い」

「そうそう……となると、相手も積極的だと言うことね。
相当飢えている男なのかも」


智恵はそういうと、なぜか『うらめしや』とおばけの格好をする。


「ふざけてますよね、智恵さん」

「ふざけたくらいで聞かないと、頭がおかしくなるもの」


智恵は、元々はウソを書いたひかりが悪いのだから、

こうなったら会うだけ会えばいいと、アドバイスを送る。


「そうだな、俺もそう思う。誰が何を言おうが、全面的にお前が悪い」

「でも……」


ひかりは気が重いと下を向く。


「だったら無視したままにしたら?」

「ペナルティーだって」

「エ……その会を続ける気があるの?」

「ないです」

「なら……」

「相手にもつくって……」


ひかりは、そんなシステム聞いたことがないですよねと、雄平に声をかける。


「いや、俺はそもそも登録したことないから」

「一般論ですよ」


雄平は、何か謝罪の品でも持って行って、誠意を見せてこいと、

ひかりにアドバイスをする。


「ほら、もう終わりにするぞ、いい加減に仕事!」


話はここまでだというように、雄平は両手でパンパンと音を鳴らす。


「あ……はい」

「あぁ……もう、いやだ」


ひかりの嘆きはそこら辺に放り出されたまま、

3人は本来しなければならない仕事を、そこから始めることになった。





その頃、祥吾はというと、本来違法建築ではなく、

しっかりとした物件を紹介しなければならない不動産屋にいた。

自分の出した条件をおさらいするように話し、『見通しはどうなのか』と聞いてみる。


「まぁ、はい、全力で探してはおります」

「そうですか」


祥吾は、業者のにこやかな表情に、

『全力』という割には、力が入っていないなと思う。


「まぁ、頑張ってはみますが、しかしですね。こればかりはタイミングというものが……」


業者は『自分たちの不備』であることは間違いないが、

こちら側も、ギリギリまで許可が下りなくなるとは思わなかったと、逃げの態度を取る。


「そんなふうに言わないでください。場所も家賃も指定して、お願いしたはずです。
もうこうして福岡から出て……」

「さっさとやれ!」


祥吾が業者と話している時、隣の椅子に座った男性がそう怒りの言葉を放った。

祥吾は、思いがけない方向から声を浴びたことで、自分が言おうとしたことが、

一瞬で頭の中から消えてしまう。


「ガタガタうるせぇんだよ、この時間にも動けるだろうが」


数名が直立不動になり、『そうですね』と男に頭を下げている姿を見て、

祥吾は両手を握りしめる。自分は間違っていない、ここは隣の男性のように、

もっと強く出るべきだと思い『ふぅ』と息を吐く。





しかし……



『では、お願いします』


祥吾は結局、怒りなど全く見えないくらいの言葉だけを残し不動産屋を出た。

『福岡』での出来事を全て流して、出直しのつもりで戻ってきた『東京』なのに、

最初からつまずいてしまう。

数軒先にも不動産屋はあったが、とりあえず頼んだのだからと、足を逆に向ける。

そのまま軽く街をぶらりと歩き、今川家に戻った。


「土曜日? 俺が?」

「そう……一緒に来て欲しいところがあるの」


愛美は家に戻ってきた祥吾に、『土曜日』の予定を空けて欲しいとそう話した。

祥吾は『買い物にでも付き合うのか』と当然の質問をする。


「えっと……まぁ、そんなものかな。祥吾がいたら助かるのよ」


祥吾は、ようは荷物持ちかと思いながら『まぁ、いいけれど』と新聞を読み始めた。

そこには、『ボルノット』の製品が特集されていて、

少し前まで仲間だった開発部の『村上海渡』が、コメントを載せている。

祥吾はその名前と開発についてのコメントを、複雑な思いで読み進めた。


「じゃ、決まり、頼むわよ」


愛美は『スーツでお願い』と祥吾に言うと、出かけてきますと部屋を出て行く。

祥吾は、荷物持ちがどうしてスーツなのか一瞬考えたが、

まぁ、行けばわかるかと、そのまま視線を下に戻した。





「見合い?」

「あぁ……おふくろが祥吾に何も言わないで、勝手に写真を撮って、
勝手に何か書いて、『みらいず』に入会させた」


勇也が任されている店に友則が訪れ、母である愛美が、自分のポイントを上げるために、

祥吾を『客寄せパンダ』のようにしていると、そう話した。

友則は『それはおもしろい』と笑いだし、祥吾なら確かにいけるだろうと、

元妻の行動を疑問なく受け入れてしまう。


「受け入れるの、そこ」

「ん? 何か問題があるのか……」


友則の表情に、勇也は首を軽く傾げる。


「あいつは『慶西大学』から大学院に入って、『ボルノット』に就職しただろ。
入社2年目にたしか社長賞を取ったと、そんな話だったよな」

「そうそう、まぁ、今回辞めたけどね」

「いやいや、職なんて変わっても大丈夫だ。女がコロッとくる要素が満載だろ。
顔だって、俺より少し劣るくらいだし、間違いない、愛美はさすがだ」


勇也は『どうして自分を絡めて褒めるんだ』とあきれ顔でつぶやく。


「なんだ勇也。お前、文句があるのか」

「文句って、これさ、一種の詐欺だろう。祥吾には見合いをする気持ちなんて、
全くないし。いや、本人入会自体知らないし」


勇也は相手になる人がかわいそうだろうと、心配する。


「詐欺になるかどうかはわからないぞ。祥吾がその人にあって、
気に入るかもしれないし。そもそも、見合いなんて、写真をバリバリ加工して、
本人とは似つかないようにすることも出来るんだ。ほら、ホステスの指名、
あれだって飾られた写真で選ぶと、ろくなことにならない」


友則は、両手で自分の顔をわざと崩してみせ、『こんなのもいたぞ』と笑った。

その後、携帯電話を取りだし、何やら打ち込み始める。


「両親がこれで、俺はよく普通に育ったわ……」

「何?」

「いや、別に」

「お! 来た」


友則は携帯に届いた返事を見て立ち上がる。


「じゃ、頼むぞ勇也」

「もう行くのかよ」

「デートだよ、デート。お前も新しい彼女、さっさと作れよ」

「はいはい、行ってらっしゃい」


友則は店のガラスに映った自分の姿を見ながら、軽く髪を整える。

口を少し動かすと、ポケットからガムを取り出し噛み始めた。


【2-3】



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