2 どうしてなのかな? 【2-3】


【2-3】


『申し訳ありませんが、今回のお見合いはなかったことに……』

『アンケートの件はわかりました。でも、出会いには色々ありますし……』



ひかりは、相手が決まったら、

個人的に『みらいずメール』でやりとりできるようになることを知り、

自分の状態を必死に打ち込み、なんとか見合いを阻止しようとする。

しかし、相手は祥吾になりきっている愛美自身のため、

何を打ち込んでも、『キャンセル』など頭にないので、

のらりくらりとかわされてしまった。


「はぁ……」


やりとりに疲れたひかりは、相手が出している条件面を見る。



『才色兼備、自他共に認める美人。さらに料理も出来て欲しいし、
男性をしっかりと立てる古風な部分も欲しい』



酔っぱらってウソを書いた自分が言うのもなんだが、

相手の出している条件もとんでもないものだと思いながら、ひかりは冷蔵庫を開ける。

そこにはお気に入りのチューハイがあったが、伸ばそうとした手が寸前で止まった。

要の爆弾発言から、お酒を飲み『みらいず』に仮登録をして、

また、酔っぱらったまま部屋に戻り、身勝手にアンケートを書き入会した。

両方とも、お酒をしっかり自分がコントロール出来ていたら、

起きないことだと、反省する。

冷蔵庫を閉じて蛇口をひねると、何も味がしない水を一口飲んだ。





「工作員?」

「そう……私はそう思うの」


ひかりは、こうなったら土曜日に見合いの場所に行き、

そこで謝って戻ってくると、小春に宣言した。

小春は『行きたくない』からずいぶん変わったねと声に出す。


「変わったわよ、だって工作員だもの」


ひかりは以前、女性キャスターがオリンピック招致の時に『おもてなし』と

手を動かしたあの動きを真似て、『こうさくいん』と手を添えていく。


「あはは……やだ、もう」


ひかりは、相手も本気の見合いではないだろうと持論を展開した。


「本気ではない?」

「うん」


ひかり曰く、『プロフィールがウソ』と宣言し、辞めたいと言っている相手に対して、

それでもと要求してくると言うのは、常識を外れていると言い切っていく。


「ようするに、向こうは見合いをしたという実績を作りたいのよ。
回数を積み上げたいだけ。『工作員』なら会社から来るのだから、
給料があがるかもしれない。それならやるでしょう。『ウソの見合い』」

「うーん……」


小春は理解できないという意味で、首を傾げる。


「『工作員』じゃないとしたら、智恵さんが言っていたように、
ただ、飢えている男だと思う。それなら余計に縁切らないと」


ひかりは、元々、自分にミスがあるのだから、謝罪するつもりはあると、

コーヒーに口を付ける。


「そうか、『工作員』なら男性は『みらいず』の社員さんってことか」

「社員かバイトかはわからない。でもね、落ち着いてみてみたら、
相手の条件もすごすぎるもの」

「すごい? どういうこと?」

「才色兼備、自他共に認める美人、さらに料理も出来て、男性を立てられる古風な人。
まぁ、こんなところかな」


小春は、条件を一つずつ指を折りながら数えていく。


「確かに」

「でしょ、おかしいよ、冷静に考えてみたら。
これじゃ本気で探しているとは思えないもの。そんな相手、
いや、自分で美人ですからって立候補する女っている?」


ひかりは、少なくとも自分の周りにはいないわと、両手を広げる。


「でもさ、今時のお見合いサイトなら、ありえるかもよ。
条件のいい人を置いて、それを狙って入る人もいるだろうし」

「ほら、条件のいい人を置く……それこそ工作員、工作員。それでいい」


ひかりはそう思えば気が楽になるからと自分自身に言い聞かせ、

コーヒーを最後まで飲み干した。





そして、ひかりにとっては謝罪の、そして祥吾にとっては、

全く考えてもいない『見合い』の日がやってきた。

祥吾は愛美に言われたとおり、スーツに着替えて部屋から出る。


「叔母さん、支度出来たけど」

「あ、うん、ちょっと待って」


愛美はドレッサーの前に座り、化粧の真っ最中だった。

祥吾はその姿を見た後、リビングに戻りソファーに座る。

携帯電話を開くと、色々とラインが入っていたため、一つずつチェックしていく。



『立花唯』



『今のあなたにはついて行けない』



友則が見たというラインは、確かに別れた彼女、唯から来た最後のものだった。

祥吾はもちろん読んだけれど、その返信はしないまま、福岡を出て東京にいる。

返事を求めるような唯の追加の言葉は何もなく、ただ時間が積み重なった。


「おはよう……」

「おぉ……」


昨日は遅くまで店にいた勇也は、まだ寝ぼけ顔のままリビングに登場する。

祥吾の横を通り、冷蔵庫を開けて、ペットボトルを出し水を飲んだ。


「祥吾」

「何」

「頑張れよ」


勇也は寝ぼけた顔のまま、なぜか笑みを浮かべ、また部屋に消えていく。

祥吾は意味がわからないけれど、とりあえず『あぁ……』と答えていた。


【2-4】



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