3 みなさん、ご注目! 【3-4】


【3-4】


「はい出た、高坂さん、トラブルメーカー」


週末の金曜日に、個人的にもよく利用する『たきのや』の予約を取ったが、

高坂は『ただ、行きたくないから』と言う、子供じみた理由を述べた。

ひかりたちはランチを取りながら、その大人げない態度にため息をつく。


「いつも、問題を起こすのは高坂さんだ」

「そうそう、山内さんもさ、同期だからっていつもフォローに回るけれど、
あれ、絶対に損だよ」


智恵は、山内さんは人がいいからと話す。


「山内さん、ストレス溜まるよね」


雄平に好意を持っている小春は、そう小さくつぶやいた。

ひかりは前に座る智恵と目を合わせる。


「小春が癒やしてあげたらいいじゃない」

「……エ?」


小春はどうしてそういうことを言うのと、少し不機嫌な顔をする。


「だってねぇ、小春の山内さんびいきは、私たちわかっているし。
経理部の彼女と別れて半年以上経っているんだもの、思い切って前に出たら?」


智恵はそういうと、『ねぇ』とひかりを見る。


「うん、うん」


ひかりも後押しするような返事をしたため、小春は両手を左右に振る。


「ダメ、ダメ、もし『ダメ』って言われたら、立ち直れないし」


小春はそういうと、見ているだけで幸せだからと気持ちを収めようとする。


「見ているだけで?」


ひかりは『そんなことありますか?』と智恵を見る。


「あるの、私は幸せなんだから、山内さんが仕事をしているのを見ているだけで。
だって……第2に入りたての頃、彼女と歩いているの見たことがあるし。
穏やかな表情で優しそうで……うらやましかったけれど、でも……」


小春は仕事姿の雄平を思い出し、言葉が止まる。


「100を求めて、0になったら、仕事をしている真面目な顔を見ることも、
出来なくなるでしょう」


小春はそういうと『せっかく第1から第2企画部に入ったし』と、

ドリアにスプーンを入れる。


「そうかな。そんなことをしていて、他の人とくっついちゃったら、
結局ゼロだよ」


智恵は山内さんは優しいから、そういうところに気づく人が出たら、

あっという間に取られるよと、小春にアドバイスをする。


「でもわかるよ、小春。同じ職場の人と気まずくなるっていうのは、嫌だよね」


ひかりは状態は少し違うけれどと言いながら、

名前を名乗ったときの、祥吾の驚いたような顔を思い出す。


「難しいよね」

「うん……」


小春はすくったドリアを口に入れ、何度も噛んだ。

ひかりは、歓迎会がどうなるだろうかと智恵に聞く。

智恵は『わからない』という意味で、首を少し傾げて見せた。





「くどいな、お前、俺がいなくてもどうにでもなるだろう」

「うちの『第2企画部』は12人しかいないんだ、目立つだろうが」

「いいよ、吉川部長に対する俺なりの抗議だ」


その頃、同期の二人は昼食を取るために、ひかりたちとは別の店にいた。

雄平は気に入らなくてもいいから、とにかく出席しろと用紙を前に出す。

高坂はちらっと紙を見た後、すぐに前を見た。


「山内、お前は思わないのか」

「何がだよ」

「あの人……最上さんだよ。『ボルノット』から中途だかなんだかしらないけれど、
チーフだぞ。年齢1つしか変わらないのにさ。
吉川部長も、俺たちに頑張れとか言っておいて、外から連れてくるって、
野球でいえばFAみたいなものだろう。こっちはやる気がなくなるよ。
あぁ、そうか、うちは頑張っても認めないんだ。外から優秀な誰かを連れてきたら、
それでまかなえると思っているんだって、士気下がるって」


高坂はそういうと、指を下向きにする。


「言っている意味はわかるよ。まぁ、俺は管理職とは出世とか興味ないから、
腹が立たないのかもしれないけれど、でも、最上さん自身が、
どういう人なのかもわからないのに、敵対心だけむき出しにするのは、
どうなのかと思うだけだよ。仕事でぶつかるのは、構わないと思うし、
むしろその方がいいと思う」


雄平は、とりあえずはこっちが受け入れないと、向こうだって困るだろうと話し、

味噌汁を飲む。


「お前さ、そうやって人がいいから、使われるんだよ。絶対に損だからな。
誰もこんな懸命な姿、評価しないし、認めないよ」


高坂はそう言って食事を続けたが、しばらくすると用紙を手に取り、

名前のところに丸をつける。

雄平は、文句を言いながらも立場を考えてくれた高坂を見ながら、

『やっぱり同期だよな』と声をかけた。


「お前が幹事だし、天然バカみたいな性格だからだよ」


高坂はそういうと、『カツがうまいな』と言いながら、食べ進めた。





そして週末の金曜日、祥吾の歓迎会が行われることになった。

全員の出席が決まり、会場の『たきのや』にメンバーが揃っていく。

最初は、お決まりの挨拶から始まり、乾杯となった。

ひかりも雄平の隣に座り、形だけグラスをあげ、少しだけ口を付ける。

今日は『アシスタント』に徹しようと心に誓ったが、会が動き出し、

お酒のそれほど強くないメンバーたちから、

少しずつ『酔ってきましたよ』のサインが見えるようになる頃、

元々飲み会が大好きな部長の吉川が、『おい、浅井』と手招きした。

ひかりは『酔っている吉川部長』に嫌な予感がしながらも、

無視するわけにはいかないため、『はい』とそばに向かう。


「おぉ、来た来た」


吉川部長のそばに座ってくれた智恵と、今回の主役になる祥吾がひかりを見る。


「浅井、あれやってくれ。ほら、あれ」


吉川は『あれ』のトーンを変えながら、連呼する。


「部長……すでに酔い始めていますね」


会が始まって1時間だと言うのにと、ひかりは智恵を見る。


「最上君、うちの宴会は、いつも浅井が盛り上げてくれるんだよ」


吉川部長は、浅井のお酒は楽しいんだよと、祥吾に話し始めた。


【3-5】



コメント、拍手、ランクポチ、参加をお待ちしてます。★⌒(@^-゜@)v ヨロシク♪

コメント

非公開コメント