7 あなたもですか! 【7-3】


【7-3】


その日の仕事が終わり、祥吾は勇也に言われた通り『カリーナ』の1号店に向かうが、

乗り継ぎが悪かったからなのか、予定より少し遅くなってしまった。

携帯だけは何度も見ているが、勇也からの『SOS』が入っているわけではないので、

今のところ、愛美と友則の間に、バトルのようなことは起きていないだろうと考える。

扉を開け、中に入っていくと、もちろんいつも通り店は営業中で、

従業員に『いらっしゃいませ』と声をかけられた。


「すみません俺です。客じゃなくてごめんなさい」

「あ……こんばんは。オーナーは奥です」

「うん」


授業員も祥吾の顔は知っていたため、そのまま店の奥を目指す。

すると、楽しそうに笑いながら語っている友則が見えて、

その前には若い男性と女性が、1名ずつ座っていた。

祥吾は、勇也はまだ来ていないのかと周りを見る。


「おぉ、祥吾」


友則は祥吾に気付き、こっちだと手招きする。

祥吾は、勇也がいないと自分が来た意味があるのだろうかと思いながらも、

呼ばれるままに前へ進んだ。


「こんばんは」

「どうしたお前、飯か」

「いや……勇也は」

「勇也? あぁ、そういえば店に来るとか言っていたけれど、
自分の店でダブルブッキングがあったらしくて、間に合ったらとかなんとか」

「そうなの?」


祥吾は、愛美がそばにいるかと考えながら、店内を見る。


「叔母さんは……」

「愛美? 愛美ならさっきまでそこに座ってたぞ。取材を受けているのは俺なのに、
まぁ、ペラペラ好き放題しゃべっていた」

「あら、そんな言い方は。しっかり取材に協力していただきましたよ」


友則の前に座っている女性、『滝川和花』は、そう言いながら祥吾の顔を見た。

最初は普通に見ていたのに、ある瞬間、急に驚くような顔をする。

祥吾は、和花の表情が変わったことに気づいたため、

以前、どこかで会ったのか、何か接点があったかと考えるが、

全く浮かんでこない。


「お前、勇也に言われたのか。俺がまた調子に乗るから、店に来てくれとかなんとか」

「いや、違う……いや、違わないかな」


祥吾はそういうと、空いているテーブルの椅子に座る。

すると、和花の隣にいた男性が立ち上がり、もう一つ取材の場所があるので、

これで店を出て行くと言い始めた。


「お疲れ様です、本番、よろしくお願いします」


和花は立ち上がり、挨拶を交わす。


「あぁ……また明日、スタジオで」

「はい」


何も知らない祥吾も、一応立ち上がり、出て行こうとする男性に頭を下げた。

和花は一緒に出て行く様子がなく、席に座り直すとメニューを広げている。


「オーナー、何がおすすめですか」


和花は目の前に座る友則に、そう問いかけた。

友則は『そうだな』と考えるふりをする。


「この店のおすすめは、もちろん俺……」


友則はそういうと、『色々と語り合ってみようか』と笑い出す。


「うふふ……もう、オーナーったら。そういうことではないです」


和花は、マスコミの人間らしく冗談にも動じずに、メニューをめくる。


「やっぱりパスタかな、ワインにも合うし」

「あぁいいですね、それならこれと……」


和花はメニューのいくつかを指さし、『お願いします』と友則に頭を下げる。


「祥吾、お前も食べていけ。まだ夕飯食べていないだろ」


友則は、愛美が仕事の続きがあると言いながら帰ったこと、

勇也も店のトラブルがあるから、どうせ帰ってもひとりだぞとアドバイスをする。


「いや……」

「あ、よかったら、こちらにどうぞ。私も一人で食べているより楽しいですし」


友則を取材にきた和花は、自分の前に座らないかと提案した。

祥吾は、何も知らない女性と向かい合って食事をするという状態が、

絶対に自分には難しいと考え、『いえ……』と遠慮する。


「何だよ祥吾、お前失礼なヤツだな。こんなに綺麗な女性が誘ってくれたんだぞ。
深く考えない。こういうのを断るのは、必ず人生で損をする」


友則はすぐに作ってやると言いながら、席を離れてしまった。

祥吾は『自分はいいから』と言おうとするものの、

従業員と話し始めた友則には言えず、その姿が見えなくなってしまう。


「やっぱり、私はダメということですか? 最上さん」


祥吾は自分の名前を知っている和花の言葉に驚き、

『どこかでお会いしましたか』と慌てて聞き返した。


「すみません、どこかでお会いしていますか?
どうだったかなと、今この瞬間も、あれこれ考えているのですが、
大学卒業くらいまでは東京でしたが、福岡にも5年くらいは行っていて……」


祥吾の言葉に、和花は『お会いしたのは初めてです』と微笑みかける。


「初めて……」

「はい。でも、私は最上さんをよく見て、お願いをしたつもりでしたが。
そうか……最上さんには印象にすら、残らなかったのか、残念です」


和花の言葉の意味が全くわからない祥吾は、

このまま『失礼しました』と出て行くわけにはいかなくなる。


「すみません、あの……話が」

「才色兼備だの、自分で美人ですと認めたように申し込むのは、
正直、少し違和感もありましたけれど、でも、そこで下がっていたら意味がないから。
勇気を出して、『お願いします』とボタンを押したんです」


和花は、『大学の先輩になりますし』と言うと、『慶西大学』の校歌を口ずさみ始める。


「才色兼備……」


祥吾は、自分から条件を理解し、美人だと立候補する女性がいたら、

男性には好かれても、同性からは嫌われると言って見合いの席を立った、

ひかりの言葉を思い出す。


「あ……もしかしたら、あなたもですか」


祥吾は『みらいず』の名前を和花に尋ねた。

和花はそうですという意味で、小さく頷き返す。


「あぁ……」


愛美が、自分の目の前で退会のボタンを押したところは確認したため、

祥吾は、ひかりとの出来事前に、和花のデータがあったのかと勘違いする。

今、勇也が巻き込まれている『ダブルブッキング』になってしまったのかと、

システムがわかっていないため、勝手に思い込んだ。


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