11 こういうことは辞めてくれ! 【11-3】


【11-3】


『俺は行きますよ、何があっても』


勇也からの返事があったのは、その日の夕方前だった。

祥吾は、それほど慌ただしい仕事もないため、

友則が取材を受ける『カリーナ』に向かうことにする。

取材を終えた後、和花を少し捕まえて、

自分の考えをあらためて話せばいいだろうと思いながら、周りの状況を見た。

小春と雄平は、打ち合わせから戻り一息ついている。

高坂は書類を書き損じたのか、頭を抱えて紙を破りだした。

他のメンバーはそろそろ終わりだという時間に気付き、片付けを始めている。

ひかりはと思い視線を動かすと、携帯を取り出し、真剣に見つめていたため、

何を見ているのかと考えた。

外へ出るような雰囲気を出しながら、祥吾は何気なく横を通ってみる。


『喜ばれる献立』


ひかりが真剣に読んでいたのは、

人が来た時に、喜ばれるような献立はどういうものなのかという、料理の基本ページで、

真剣に見ているからなのか、祥吾が横を通っても、気にしている様子もなかった。

祥吾はそのまま廊下に出る。

『喜ばれる献立』という内容からして、誰かに作るのだろうということが予想できた。

一人暮らしのひかりが、『誰のために』作るのだろうかと思い、祥吾の足が止まる。

そのまままっすぐに歩いても、特に行くところがなかったので洗面所に向かい、

数分後に戻ってくると、終業時間が過ぎていた。


「お先に失礼します」

「あぁ、お疲れ」


ひかりの机の上は、すでに片付いていて、帰ったことがわかる。

『献立』を見ていたひかりは、今日、誰かと会うのだろうかと思いながら、

祥吾も帰りの支度をし始めた。





祥吾が『カリーナ』に到着すると、すでに取材が始まっていたため、

邪魔になっては悪いと思い、店内には入らずに外で待つことにした。

取材に気付き店内を覗く客がいて、何やら楽しそうに指を差している。

向こうには友則が立ち、店を任されている男性が横に並ぶ。

その前には和花がカメラマンと一緒に、料理をいくつから並べて、撮影をしていた。



『私に興味があるので……』



和花にはライトが当たり、堂々とした様子で仕事を進めている。

その時、祥吾の肩を叩く人がいたので、振り返ってみた。


「よっ……」

「なんだ勇也か。今日はトラブルなかったんだな」

「あぁ……」


勇也は店の前に立つ祥吾に、こっちだと言いながら店の裏側に案内した。

授業員が出入りするような場所から、中に入ることになる。


「いいよ、中は料理や接客で忙しいだろうから、外にいる」

「いや、祥吾は外にいない方がいい」


勇也の言葉の意味がわからない祥吾は、『どういうことだ』と尋ねたが、

その返事は戻ることなく、取材が進んでいく。

取材は問題なく終了しライトが消され、カメラマンが機材を動かし始める。

賑やかだった店の前は、少しずつ普段の雰囲気を取り戻し始めた。


「祥吾、滝川和花と会うつもりで来たの?」

「うん……話したいことがあって」

「ここに来てとか、向こうから言われた?」


勇也はそういうと、取材を終えても店を出ずに、前のように席に座る和花を見る。


「今日が取材だからとは連絡をもらった。何やら渡したいものがあるとか言われて、
俺もまた、別の日に設定するのもと思ったから、来たけれど……」

「そっか」


勇也はそういうと、友則に合図をした。

友則が奥に入ってくる。


「祥吾、お前も結構暇なんだな」


友則はそういうと、ここから店に入れと道を空けてくれる。

祥吾は『ありがとう』と言うと、そのまま視線を動かした。

和花が座っていたので、そのまま前に進む。

その手前に座り食事をしている男性が、祥吾が通る瞬間、

セカンドバッグをテーブルに置いた。

祥吾は音の方を見るが、男は気にしていないのか、新聞を広げ始める。


「あ、最上さん」

「こんばんは」


和花は嬉しそうに立ち上がると、どうぞと空いている場所に座って下さいと合図した。

祥吾はその場所に座る。


「今、取材が終わりました。この間も美味しかったので、何か食べてからと思って。
ちょうどよかったです、お渡ししたいものもあるし」

「滝川さん、今日はちょっとお話が……」

「食べながらではだめですか? 私、お腹が空いていて……」


話をしている間も、客が数名入ってきた。

取材をされたこともあるからなのか、いつもよりも混み具合が増していく。


「これなんです。最上さんにお渡ししようかと思って」


和花はテーブルの上に何かを置くと、かわいいでしょうと指さした。

革製品のついた、キーホルダーになる。


「少し前に北海道に取材で行ったんです。
これ、珍しいんですよ、鹿の革を使っている工芸品なんですけど……」


和花は、色を見た時に、祥吾のことが浮かんだからと言いながら、

『お土産です』と微笑みかける。


「あの……滝川さん」

「はい」


その瞬間、祥吾の斜め前に座っていた男性が新聞を折ると立ち上がり、

店を出ようとした。そのタイミングで奥にいた友則が姿を見せる。


「お客様、すみません、ちょっと……」

「なんですか」


出て行こうとした客を、今いた席に戻すと、友則は前に座る。

客が通るはずの道には、なぜか勇也が立った。

祥吾達が座る席と、その男の席だけが、店の中で分断されるようになる。

祥吾は何をしているのかと、友則と勇也を見た。


「お客様、正式に申し込んだ取材ではないのに、
店内で他のお客様にカメラを向けるのは、よくないでしょう」

「は? 何を……」

「何をではないですよ、そのカバン」


友則が指摘したのは、祥吾が前を通った時、テーブルに置かれたセカンドバッグになる。


「どこかの雑誌の方ですか」


勇也はそういうと、祥吾と和花を見る。


「どうした……勇也」

「祥吾、その人にきちんと言った方がいいぞ。こういうことは辞めてくれって」

「エ……」


勇也の目が和花に向かっていたため、祥吾もそれを追いかける。


「どういうことですか」


和花は、自分を見ている祥吾に対し、

自分も何かに巻き込まれたのかというような顔をした。


「あら……いやだ、また写真誌?」


和花はそういうと、カメラマンらしき男性を軽くにらむ。


「ごめんなさい最上さん。今日は取材があったから、
それに紛れてお会いした方がいいかなと思っていて……」


和花は動じる様子も見せず、祥吾に説明をし始めた。


【11-4】



コメント、拍手、ランクポチ、参加をお待ちしてます。★⌒(@^-゜@)v ヨロシク♪

コメント

非公開コメント