11 こういうことは辞めてくれ! 【11-5】


【11-5】


「なんだ……違うのか」


季節が梅雨になり、じめじめとした時間が続く中、

『KURAU』の企画部員数名が予定を合わせ、『たきのや』へ出かけることになった。

祥吾は、高坂の質問に、『滝川和花』との話の流れを、誤解されないように語る。

『みらいず』を出すと、また面倒なこともあると思い、

会ったきっかけなどは別のものにした。

事実を知るのはひかりだけで、他の部員達もその話を信じることになる。


「もったいないですよ、最上さん。友達でと言われたんでしょう。
いいじゃないですか、使われたって。あの滝川和花の相手ですよ、
俺なら喜んで使われます」

「なんだそれ……」


雄平は、高坂のような男には、そういう役目は回ってこないよとからかい出す。


「山内、お前くらいなものだぞ、俺の評価が低いのは」

「違うわ」

「そうですよ、高坂さん。もう少し優しい一面を見せないと……」


高坂とも同等に言い合う智恵にそう言われ、高坂も言葉の勢いがそがれてしまう。


「あ、そうだ、最上さん。いつ詳細発表ですか」


高坂は自分の分が悪くなったと思い、話題を別のところに移動させた。


「『創業50年の選抜メンバー』ですよ」

「あぁ……」


祥吾は、来週にも吉川部長から発表になると思うと、そう言った。

智恵や雄平も、『来週か』とつぶやいていく。


「全員提出ですか?」


小春は、自分は頑張っても無理だと思うのでと、企画提出を避けようとする。


「俺は全員に出してもらいたいと思っているけど……」

「そうだよ島津、全員提出」


雄平はそういうと、小春を見る。

ひかりと小春は同期になるが、

入社して小春が最初に入ったのは『第2企画部』ではなく、

オフィス家具などを取り扱う『第1企画部』だった。

そこで3年間仕事をしていたが、突然『第2』に異動することが決まり、

今は仲間になっている。最初からノートや筆記具を扱っていたわけではないため、

いつも企画には自信がなかった。


「お前のこの間のアイデア、あれよかっただろ。色選びの細かさとか、
俺たちには気づけない部分だと思ったし……」

「あ、そうそう、吉川部長も褒めていたよ」


ひかりがすぐにフォローを入れる。


「本当?」

「本当、本当……ね、山内さん」

「あぁ……出した方がいいぞ」


自分を褒めてくれた雄平の言葉に、小春は『はい』と明るく返事をする。


「なんだ島津、その返事。昨日俺が同じようなことを言ったときには、
『でも……』とかブツブツ話していたのに」


高坂は、そういうと『チューハイ』のおかわりを頼む。


「だから言ったでしょう、言い方ですよ、言い方」


智恵がそう話すと、高坂は不満そうな表情を見せる。


「それ、ゴリラの真似ですか?」


ひかりの言葉にみんなが笑い出し、高坂は『うるさいな』とひかりを見る。

祥吾はグラスを持つと、自然と視線がひかりに向かった。


「あはは……怒った。高坂さん、ますますゴリラそっくりです」

「浅井、お前また酔っているだろう」

「いえいえ、正直に。ねぇ、山内さん」

「巻き込むな、俺を……」


企画部の飲み会は2時間行われ、それぞれがまだしっかり歩ける段階でお開きとなった。

最寄り駅に向かい、乗り換え駅につくと、また一人減っていく。

最終的に同じ駅を使うことになったひかりと祥吾が、並んで吊り輪を持つことになった。

電車は規則正しい揺れを届けながら、次の駅へ向かう。

ひかりは車内刷りの広告を見ながら、横に立つ祥吾を見た。

祥吾は黙ったまま、じっと窓の外を見ている。

ひかりは駅の名前が書いてあるボードを見ると、

『あとどれくらいこうしていられるのか』を、考えた。


「浅井の言葉を、思い出した」

「エ……」


ひかりは、駅名を読んでいた自分の脳を呼び止めて、注目を駅名から祥吾に戻す。

次の言葉がどう出てくるのかと思いながら、つり革をつかむ手を変える。


「あの見合いの日、最後に浅井が言った言葉。
ほら、『自分で美人だと思う人は……』ってやつ」

「あぁ、はい」


ひかりも見合いの日に、あまりにも人ごとの態度に見えた祥吾に腹を立て、

捨て台詞を言った時のことを思い出す。


「みんなの前では悪口になるから言わなかったけどさ、実は思ったよ」


祥吾の言葉はここまでだったが、ひかりは何を言いたいのかがわかり、

少し口元を動かした。


「あぁ……って」


その瞬間、電車がトンネルに入っていく。

『滝川和花』に対しての気持ちだと思ったひかりが前を見ると、

車内が明るいため、並んで立つ2人の姿が、窓に映っていた。

互いに『笑っている』のがわかり、さらにおかしくなってくる。

ひかりは口元を隠すが、我慢しようとするとさらにおかしくなるため、

『はぁ』と大きく息を吐いた。

祥吾は『なんだそれ』と言いながら、ひかりを見る。


「でしょう、最上さん。私は最高なんていう女性には、何かがあります。
人は、欠点があるくらいで、ちょうどいいと……」

「うん」

「……私は自分の未熟さに、自己満足しています」


ひかりはそういうと、『限度がありますけれど』としっかりフォローする。


「確かにな、限度がないと……」


祥吾もそういうと、また口元が動き始める。


「いやぁ……色々あるな、東京は」

「そうですか? でも、楽しいでしょう」


ひかりの言葉に、祥吾は『うん』と頷いていく。

ひかりは何気ない会話が嬉しくて、そこからは黙ったまま祥吾と一緒に、

心地よい揺れを受け続けた。


【12-1】





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