15 馬鹿なこと言うなよ! 【15-3】


【15-3】


「ついていないと言えば、まぁ、そうだけれど」


ひかりはそれでもと話を続けようとするが、

それは輝之のためにならない気がして、並んだまま歩き続ける。

輝之は隣に立つひかりをちらっと見ると、今度は笑い出した。


「なんだかな」

「何?」

「今、この俺は、あの浅井に励まされているのかと思うとさ」

「思うと何よ」

「思うと……だよ」


ひかりは『私なんかに励まされたくないとでも言うのか』と、

武田の脇腹を肘でつつく。


「いや、入社当時は俺の方が声かけしてただろ」


武田は、ひかりが『須美川の奇跡』と呼ばれていた頃の話をし始める。


「うん、まぁ、そうだったね」


ひかりは教育係となった雄平と、同期の輝之に、

入社当時はよく励まされたことを思い出す。


「幼い頃からの夢だから、絶対に企画部に入って仕事がしたいと話していて。
頑張れと言いながらもさ、内心、無理だよと思っていたし」


ひかりは、そうなのかと輝之を見る。


「思うだろ、普通。企画部はさ有名大学が揃っているし。
でも、越えちゃうんだよな、お前って。
なんだかわからない未知なるパワーがあるというか」


輝之はそういうと、楽しそうに笑い出す。


「笑えているのなら、安心」

「バカ! 俺がこんなことで終わるわけないだろうが。次だよ、次」

「うん」


ひかりは『それでこそ武田だ』と頷き、その場を去ろうとする。


「浅井……」

「何?」

「声かけついでにさ、今日、俺と一緒に、『鳥居堂』の孫に会ってくれない?」


輝之は、今日、『鳥居堂』の店舗が改装終了し、お披露目があることを話し出した。


「俺、呼び出されているんだ。行かないわけにはいかないだろう。
でも、一人で立ち回る元気もない」


輝之は、ひかりなら『鳥居堂』のことも知っているから、

一緒に顔を出して欲しいと頼み出す。


「何それ、今、頑張れるようなこと言わなかった?」

「頼む!」


宗太郎の相手なら、雄平と一緒に何度も通ったため、ひかりもそれなりに自信はあった。

しかし、一度会った孫の翔は、考え方や行動が自分とズレている気がして、

あまり関わりたくないとさえ思ってしまう。


「あの鳥居堂のお孫さん、ちょっと苦手で……」

「わかる、わかるよ、俺もそうだから。だから頼んでいるんだって」


輝之の言葉にも、ひかりはすぐ返事が出来ないでいる。


「あ、そうか、そうなのか、お前、元気に頑張れとか言うのは完全な口だけか」

「何よ、それ」

「あさいぃ……」


輝之はひかりが肩にかけたカバンのひもを引っ張り始める。

結局、輝之のお願いを断り切れず、

ひかりは『鳥居堂』のイベントに参加することになった。



『今日は……』



「ん?」


祥吾はラインでその事実を知り、思わずひかりを見てしまう。

今日は特になにも忙しいところがなさそうなので、一緒に帰ろうと思っていたが、

それは出来ないと連絡をされてしまった。


「最上さん」

「うん」


小春の見舞いを終えて、出勤した雄平から、

あらためて今日、『鳥居堂』の改装店舗に顔を出す話を聞かされる。


「あぁ……なんか、今日らしいな」

「エ……知っていたんですか? 最上さん、改装店舗のこと」

「あ……いや、うん」


数秒前に、ひかりからラインで聞いたとは言えず、

祥吾は向こうの方から流れてきたと指を勝手な方向に動かし、

どこからか情報が入ったというそぶりを見せる。


「そうですか。この先のことを考えて、俺も顔だけ、出してきます」

「うん……」


雄平が顔を出すのなら、ひかりも心強いだろうと思いながら、

祥吾は『よろしく』と話を終わらせた。





『鳥居堂』の改装店舗には、結局、雄平とひかり、

そして輝之の3人が向かうことになった。

ひかりは小春の具合はどうだったのかと、見舞いをしてきた雄平に尋ねる。


「今日の帰りにでもお見舞いに行こうとしてましたが、どこかの誰かに、
泣きながら頼まれてこんなことに……」

「泣いてないだろうが」


輝之は、適当なことを言うなと言いながら、ひかりを見る。


「顔色もよくなっていたし、そっちは大丈夫だけど」

「そっち? そっちってことはこっちはダメですか」

「こっちってどこだよ」


雄平の横から、輝之が顔を出す。


「あぁ、うるさいな、武田。ちょっと入ってこないでよ」


ひかりは、小春が何か言ったのかと雄平に尋ねる。


「あいつ、第1では結構辛かったみたいだな。露骨に嫌みを言われたりしたって」

「あぁ……」


ひかりは以前聞いたことがあると、頷いていく。


「知っていたのか、浅井」

「はい。小春がこっちに来た時に、仕事に自信がないっていうから、
私も『須美川の奇跡』と言われるくらい、期待されていないんだよと、
こう……励ますつもりで。そんなこんなで仲良くなって」

「そうか」

「小春にはいつもうらやましがられます。ひかりには山内さんがいていいなって」

「俺?」

「はい。山内さんは私の教育係だったので、今でも……
そう、これだけ一人前になった今でも、常に気にしてくれるでしょう。
そういう関係性が、うらやましいって」

「一人前って……」


輝之が笑い出したので、ひかりはその背中を軽く叩いた。


「いてぇ……」

「笑わない!」

「そうか……」


雄平は、ひかりたちの後に入った企画部員も、

高坂や智恵が教育係になっていて、自然と縦のつながりがあることに気づく。

小春にはその相手がいないのだと思うと、

今までずっと、心の隅に寂しさを抱えてきたのが、わかる気がしてしまう。


「第1の連中は、きついですからね。
うちの売り上げを一番あげているという自負があるのでしょう。
営業部でも結構言われてますし」


輝之は、評判はよくないとひかりに話した。


【15-4】



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No title

ナイショコメントさん、こんばんは

毎日楽しみだと言っていただいて、
私も嬉しいです。
書くことが大好き、空想が大好き……
の素人創作ですが、
これからもマイペースに続けていきます。
よろしかったら、おつきあいください。
ありがとうございました。