15 馬鹿なこと言うなよ! 【15-4】


【15-4】


「そうなんだ……」

「あ、そうそう、浅井のところに入ったあの人、ほら、最上さん。
あの人『慶西大』の技術系でしょう。どうして第1じゃないのか、2なのかって、
営業部でも噂になってさ。それが逆に第1からすると、目障りらしいって。
毛利さん、名出しで対抗心燃やしているらしいし」

「エ……目障り? 何言っているのよ」


ひかりは祥吾のことを悪く言われたと思い、強めに反応する。


「浅井、お前がどうしてそこで声を大きくするわけ?」

「あ……いや、だって、ねぇ、山内さん。最上さんのことを悪く言われるのは、
ちょっとと思いませんか?」

「まぁそうだな。あの人は技術系だけれど、元々が『ボルノット』だろ。
文具に入ってきたのは、おかしくないはずだし」

「50周年記念の企画が控えているからじゃないですかね」


輝之は、『企画部』それぞれが『KURAU』の華になろうと必死だからと、

営業部らしく少し離れた見かたをする。


「売れたら自分たちのデザインがいいからで、
売れないと営業部の押しが弱いですからね。みんな勝手ですよ」


輝之の営業嘆きを聞きながら、3人は改札を順番に通った。





今日はひかりと帰ろうと思っていた祥吾だったが、そうならないまま一人、

いつもの道を帰って行く。

8月は、お盆休みなどもあり、特に忙しくないだろうが、

9月に入ると企画が出そろうため、

上司になる吉川部長とメンバー選考に入らないとならなくなり、

間違いなく今よりも時間が取れないことが予想できた。

気持ちが通っていたことがわかり、ひかりとはここからと思っていただけに、

こうした時間がもったいなく感じてしまう。

それでもマンションまで何もなく進み、いつものようにポストを覗く。


「祥吾……」


いつもはしない声の方に振り返ると、そこに立っていたのは友則だった。


「うわ……叔父さん」

「なんだよ、そんなに驚くなよ。勇也から祥吾のマンションを聞いて、
ちょっと訪問してみました。面倒見のいい叔父として……」


友則はそう言いながら、エレベーターに乗ろうとする祥吾の手を引っ張っていく。


「どこに行くの」

「お前まだ夕飯済ませていないだろう、おごるからさ」

「は?」


友則は祥吾の手を引き、まっすぐに『かをり』に向かう。

祥吾はその流れを止めようと、両足に力を入れ、一度歩みにストップをかけた。


「いいよ、外食は。叔父さんも疲れているだろう、家で何か頼めば」


祥吾は自分の部屋を指さし、上へ意識を持たせようとする。


「何言っているんだ、疲れているからこそ、さっさと済ませたいだろう。
面倒だろうが、そこに店があるのに」

「いや、でも……」


祥吾は、友則と行くということに、『嫌な予感』がしてしまう。


「祥吾、この店にはいい女がいる」

「何、来たことがあるの?」

「いや、ない。でも、同じく商売をしている……俺の勘だな。
この店構え、暖簾の向こうから、にじみ出てくるような色気? ほら、さぁ、行こう」


友則はそういうと、祥吾の手を離し、自由になるとさっさと前に進み、

都合など考えもせずに扉を開けてしまう。

祥吾は、この先がどこか予想できるだけに、友則を一人にしておくのは、

さらにまずい気がして、遅れて中に入った。


「あら……最上さん」

「どうも」


祥吾は『申し訳ない』という思いを込めて、華絵に挨拶をする。


「2人、一緒です」


友則はそういうと、カウンターの端に座った。

祥吾はその隣に座る。


「なんだ祥吾、お前、来たことがあるんじゃないか」

「そりゃあるよ……」


華絵は二人に小鉢を出すと、おしぼりを一緒に並べてくれる。

友則は華絵の姿を見ながら、鼻を軽く動かした。

祥吾は女性に目がない友則が、華絵の雰囲気を気に入らないわけがないと思いながら、

おしぼりの袋を取る。


「とりあえずビールと、後、この辺をいくつか……」

「はい」


華絵はそういうと、手際よく煮物を出してくれる。

友則がグラスを出すと、そこにビールが注がれた。


「祥吾がお世話になっています。叔父の今川友則です」

「あら……叔父さまですか。うちの方こそ、私の姪が最上さんと同じ会社におりまして。
とてもお世話になっているものですから。これもご縁ですね」

「はい」


友則は本当だと言いながら、ビールを一気に飲んでいく。


「そうですか、姪御さんが祥吾と……って、お名前は?」


友則は『誰なのか』と祥吾の膝を叩きながら聞く。


「浅井さん、浅井ひかりさん」

「浅井……って、おいおい、愛美が見合いを勧めたとかいう……」

「はい、そうなんです。偶然が重なって……ねぇ、最上さん」

「はい」


友則の調子の良さと、華絵の加算で、祥吾が友則には伏せておこうと思っていたことが、

どんどん明らかになっていく。


「ほぉ……あの見合いは無駄にならなかったということか」


そこからは祥吾のことなど気にもしない友則が、とにかく華絵を誘いながら、

どんどん楽しいお酒と食事を勧めてしまう。

祥吾は大丈夫だろうかと思いながら、放り出すわけにはいかず、

結局、1時間以上、付き合うことになった。


【15-5】



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