18 誰のことを言っているの? 【18-2】


【18-2】


「おはよう」


部長の吉川が登場し、企画部員全員が丸テーブルではなく、席に戻った。

祥吾も隣に立ち、自分の横に並ぶメンバー発表を待つ。


「来年は『KURAU』の創立50周年だ。5部門ある企画部が、
それぞれ制作に関わるプロジェクトを組んでいく。そのメンバーが決まったので、
発表させてもらうな。まず最上……」

「はい」

「それから……高坂、鈴本、細川、山内……この5人で頼む」


ひかりは、すぐに目の前にいる雄平に対し拍手をする。

そして背中の方向にいる智恵に対しても、しっかりと拍手を送った。

高坂はあれほど自信があると言っていたのに、本当にほっとした顔をしているし、

ひかりたちの1つ後輩になる鈴本は、驚きの方が勝るのか、

きょとんとした顔に見えてしまった。


「メンバーは前に……」


呼び出された4名は前に立ち、あらためて拍手を受けた。



吉川をプラスした6名は、すぐに小会議室に向かい、

これからの仕事の流れについて説明を受けた。

智恵は自分の斜め前に座る祥吾を見る。

メンバー発表が正式に行われてから、自分の退職については祥吾に話すつもりだった。

それでも、とにかく選抜に入れたことで、自分の希望していた時間が取れることがわかり、

気持ちが高ぶっていくのを感じてしまう。

智恵の目の前で祥吾が立ち上がる。


「あらためて、今回はこのメンバーで仕事を進めます。もちろん、選ばれた以上、
最大限の努力をすることは当たり前だけれど、俺たちがこの仕事に関わる分、
選ばれなかったメンバーに、普段の仕事をプラスしてもらうことになる。
そのことも、忘れないようにしてくれ」

雄平や鈴本から『はい』の声があがる。


「細川」

「はい」

「女性一人でやりにくいかもしれないけれど、
それを越えるだけの力が君にあると思って、選ばせてもらった。
よろしくお願いします」

「……はい」


智恵は立ち上がり、しっかりと挨拶をした。





「おめでとう、智恵さん」

「おめでとう!」

「二人とも、ありがとう」


その日のランチタイム。ひかりたちはいつもの店に入り、

智恵の選抜メンバー入りを喜んだ。智恵は、まずはほっとしたと胸をなで下ろす。


「選ばれた人の名前を聞いて、あまりにも想定通りだったから、
これなら企画を出さなくてもよかったのかと、思いましたよ、私」


小春は、それでも、『企画作り』を通じて、

雄平と話す機会が増えたからよかったけれどと笑顔になる。


「今ね、メンバーで集まったでしょう。これから頑張ろうという意味だけれど、
そこで最上さんに『女性ひとりだとやりにくいかもしれないけれど』って、
気を遣ってもらった」


智恵は『それでも選びたかった』というようなコメントを続けられたことを、

嬉しそうに話す。


「へぇ……そんなことを?」


小春は『それは嬉しいですね』と智恵に話す。

智恵は『うん』と少し照れたような顔で答え、ひかりはメニューを持ったものの、

どう答えていいのかわからなかった。

それでも、昨日自分が思いがけず『鳥居堂』の孫から評価されたこともあり、

『認められた嬉しさ』はわかる。


「だから、最上さんにだけは、これを最後に……ということは、話しておいた」


智恵は、『50周年企画』を最後にしたいと、祥吾に話してきたことを告げる。


「話しちゃったんですか?」

「うん……。吉川部長にはまだ言わないで欲しいと言ってね。
最上さん、驚いたみたい、表情すぐに変わったし……」


智恵は、祥吾の反応を思い出しているのか、照れくさそうに笑う。

ひかりは、お冷やのコップを持つ。


「とにかくよかった……選ばれた」


智恵の『安心』したような台詞に、小春は『何でも引き受けますからね』と、

他の仕事をフォローする約束をする。


「うん、頼むよ小春。ひかりも……ね」

「あ……もちろんです」


ひかりは顔を上げ、『頑張ります』とポーズを作る。

智恵は『いつもよりお腹が空いた気がするな』と言いながら、メニューを広げた。





その日、帰る時間を合わせたひかりと祥吾は、最寄り駅まで戻ると、

食事をすることになった。話題はもちろん、『選抜メンバー』のことになる。


「何番目か?」

「はい。私の企画は、どれほどだったかなと」

「いや、順位は決まっていないはずだぞ。気になったものを選んで、
で、残していったやり方をしたし」

「残りました? それともすぐ落選?」


祥吾は真剣な顔でその続きを聞こうとするひかりに向かって、

『それ以上は秘密』だと、笑って返す。


「エ……秘密って……」

「ほら、何にする」


週末の金曜日でもあるし、こうして一緒にいるのだからと思っている祥吾は、

食事を早く済ませようという気持ちもあり、メニューを前に出す。


「なら、一番すごいと思われた人だけ、教えてください」


ひかりは『お願いします』と手を合わせる。


「それも言わないよ、聞いてどうするんだ」

「どうするのかわからないですけど、聞きたいので」


ひかりは、それでも祥吾が言わないだろうなと思い、

『わかりましたよ』と言うと、メニューに視線を落とす。


「全体の評価はもっと上がしたことだからわからないけれど、
個人的には、細川の企画が俺は一番だったかな」

「エ……」


ひかりは祥吾から智恵の名前を出され、自然と上を向いた。

祥吾は、智恵の気持ちも、ひかりの戸惑いも何も知らないため、

単純に企画の大胆さと、女性らしい繊細な物作りの考えに、共感したと話す。


「何度かみんなで酒飲みに行ったりしているけれど、その時の雰囲気と同じというか、
冷静で、しっかり自分があって、で……」

「はい、決めました、私はこれです!」


ひかりは祥吾の台詞にかぶせるように、自分が選んだメニューを前に出した。


【18-3】



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