18 誰のことを言っているの? 【18-4】


【18-4】


男3人でスタートした飲み会は、しばらくすると愛美も参加し始め、

テーブルには料理の皿と、空の缶がどんどん増えた。

『今日は飲もう』と突然やってきた祥吾は、元々それほど強くないため、

開始から1時間くらいすると、テーブルにそのまま顔を落とし、静かになってしまう。


「あ~ぁ、親父は祥吾に飲ませすぎだぞ」

「飲ませたわけじゃないだろう、今日は自分から飲んでいたぞ。
元々、弱いんだよ、祥吾は……」

「そうなんだよね、なのに今日は結構飲んでいたけど……」


勇也も友則も、ここで祥吾が眠ってしまい、

お酒に強い今川家のメンバーだけが残るのかと思っていた。


「ねぇ、そろそろ終わりにしたら?」


愛美がそう言いながら、空を片付けようとすると、祥吾が顔を上げ、

いきなり両手で『バン』と大きくテーブルを叩く。

勇也は倒れてしまった缶から出ていくお酒を見て、慌ててそれを立てる。


「何よ、祥吾」

「……どうした」


初めて見るような祥吾に、愛美と友則が声をかける。


「酒は? 終わり? いやいや、終わらないって、なんでないんだよ」


祥吾はそういうと、自分の周りにある缶を振り始めた。

中身がないとわかると、右手でグシャッと潰す。


「あ、おい……手が……」


勇也は手が痛くなるからと、祥吾の周りにある空の缶を片付け、

汚れてしまったテーブルをふきんで拭いていく。


「勇也、酒……出せって、あるだろうが」

「まだ飲むのかよ」

「まだ? 何言っているんだよ、全然これからだろう」


祥吾はそういうと立ち上がり、冷蔵庫に向かう。

すぐに開けると、入っていたチューハイの缶を両手に戻ってきた。

音を立てるくらい乱暴に座ると、プルを開け、どんどん飲んでいく。


「ちょっと祥吾、あなたねぇ……」


愛美が止めようとした手を、友則が止める。


「よし、祥吾……まだまだこれからだ」


友則はそういうと、もう1本の缶を開け、自分が飲み始める。


「俺のでしょ、叔父さん」

「まだあるよ、そう焦るな」


友則はそういうと、『仕事にでも失敗したか』と声をかける。


「仕事の失敗? いやいや、全然。春にこっちに来てからは、仕事に関しては順調だって」


祥吾はそういうと、また飲み進める。

『だとすると女か』と、友則は祥吾に言った。

祥吾はその問いに答えず、黙ったままさらに飲んでいく。


「女?」


勇也のつぶやきに、友則は首を振る。


「そうか、女か。お前の良さがわからないような、不快な女とはさっさと別れちまえ。
無理なんてすることはない。クリスマスまではまだ日がある、次があるよ、次」


友則の言葉に、祥吾が飲み干した缶をまた手で潰す。


「うわ……祥吾、だからさぁ……」


勇也は缶から出たお酒の残りで汚れたテーブルを拭く。


「不快とか言うな……」

「ん?」

「不快じゃない!」


祥吾は、『すっかり酔っている』という表情を浮かべ、斜めに座った友則の服をつかむ。

勇也は、いつもとは明らかに違う祥吾の態度に、慌ててそばに来た。

友則はそれを制止し、大丈夫だと合図する。


「不快とか……知りもしないくせに言うなよ、叔父さん。
あ、そうだ、叔父さんにも責任がある。急に家に来て、出て行かないし……。
彼女はさぁ、そんな不快な相手じゃないからな」


祥吾は友則の服をつかんだまま、『違うんだ』を繰り返す。


「人に気を遣えるし、人に合わせることもうまい。
彼女がそこにいるだけで明るくなるし、
話しをするだけで時間があっという間に過ぎるんだ。
簡単なようで、簡単じゃ無いことを、彼女は当たり前に出来るんだよ、
だから好きになった!」


祥吾の突然の告白に、愛美は『まぁ』と言いながら口を手で覆う。


「互いに気持ちが通じた。これからと思っていた。
そう、確かに話しはしている。たくさん話をしているよ。何があった、
こんなことを見たって……。もちろん楽しいけれど、でも、それだけじゃないだろうが。
キスすればもっとそばにいたくなる、一緒にいようと言いたくなるだろうが!」


祥吾は心配そうに横に立つ勇也に、『酒!』と一言いう。


「あ、うん……」

「金曜だぞ、週末だっていうのに……掃除? 俺、掃除より下か。
なんだよ、これ」


勇也からすぐにお酒が来ないため、祥吾は友則の前にある途中の缶を持ち、

またさらに飲んでいく。


「ねぇ、誰のことを言っているの?」

「いいからお前は黙っていろ」

「何よ、もう!」


友則は愛美にそういうと、祥吾を見る。

東京に出てきてから、よく今川家に顔を出し、食事もしたことは何度もあったが、

こうして悪酔いするようなことは一度もなかったし、冷静さを欠くことも、

一度もなかった。何もかもがグチャグチャだと騒ぐ祥吾を見ながら、

彼女とうまくいかず、ここに発散しに来たのだと思うと、愛しい気持ちが強くなる。


「そんなもの、誰でも一緒だ。照れて理屈をつけられただけだよ。
来いって言って、強引に引っ張って、押し倒せばよかったんだ」


友則の挑発に、祥吾の視線が動く。


「強引?」

「あぁ、そうだ、女なんてな、みんな一緒。嫌だなんて言っても……」

「俺は叔父さんじゃない。何でもいいなんて、誰でも一緒だなんて思わない。
俺が好きなのは、『浅井ひかり』なんだ」

「エ……エ……ねぇ」

「おふくろ、うるさい!」


ひかりを知っている愛美は、『どうなっているの』と勇也を見る。

勇也は『黙って』という意味で、指を口の前に出す。


「知らないって……。こっちから戻ったら急に会社を辞めたとか、
何をしたんだとか言われて……」

「エ……あの人、会社を辞めたの?」


愛美に対して、勇也と友則が一緒に『シーッ』と指を口の前に置く。

愛美は『二人で何よ』と言いながら、別の空の缶を袋に入れた。


【18-5】



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