24 仲がいいことは問題ある? 【24-4】


【24-4】


祥吾は、何を言うのかと智恵を見る。


「私は……あなたに会って、初めてそういう気持ちになりました。
この人なら、きっと、受け止めてくれるって……」


智恵の告白を、祥吾は黙って聞き続ける。


「華やかなライトも浴びたけれど、大変な時間も味わった。
そんなところが、自分の心に響いたのだと思います」


智恵は自分の頬に軽く触れる。


「何だろう、私らしくない、こんなこと言ったりして……」

「いや……ありがとう」


祥吾は智恵の思いがわかるだけに、『ありがとう』の言葉を返した。

智恵は『言えた』という思いがあるからなのか、『ふぅ……』と息を吐く。


「でも、人生は仕事だけではないので……。『KURAU』でやり遂げてから、
田舎に戻って私も、自分をまるごと受け止めてくれるなって人を探そうと思います」


『仕事の面では祥吾にわがままを言うことが出来る』という智恵の言葉に、

祥吾は『最後までやり遂げよう』と、仲間としての返事をする。

ウエイトレスが食事を届けだし、そこからは『50周年企画』の方に話が動く。

二人はアイデアを出し合いながら、時折笑顔で食事を進めた。





「そうなんだ……智恵さんがそんなことを」

「うん。ひかりや島津が自分を表に出していくのを見ながら、
細川はうらやましくなったと言っていた。元々、しっかりした人だから、
さらに頑張ろうという気持ちもあっただろうし。でも、弱くなれないのが、
どこか辛かったところもあるのかな」


ひかりは、やはり智恵は祥吾を好きなのだと、あらためてそう思った。

『女性として』、祥吾になら受け止めてもらえるという気持ちがあったからこそ、

自分に弱い部分があるところも、表現できたはずだと思っていく。


「企画も年末までにはなんとか出来そうだし、年明けには吉川部長にも、
退社を話すと言っていた」

「そうですか……」


ひかりは、わかってはいるものの、やはり寂しいと感じてしまう。

今まで当たり前のようにしてきたランチのくだらない話が、

とても貴重な時間だったように、思えてきた。

ひかりは菜箸を持ったまま、あとどれくらいそんな時間が持てるだろうと考える。


「ひかり……なんか焦げてないか」

「あ……」


祥吾の言葉に、ひかりは慌てて鍋の蓋を取る。

すぐに菜箸を入れたが、焦げているのか、うまく素材が動かない。

火を止めてあらためて中身を動かすと、確かに焦げた部分が存在する。


「どう?」


祥吾がひかりのそばまで来て、様子を聞く。


「このあたりだけ取れば、なんとか……うん」


ひかりは申し訳なさそうに、祥吾を見る。

祥吾は『お腹が壊れなければいいよ』と笑い出した。


「多分……平気」


ひかりはそう言って笑うと、『次は頑張る』とすぐ前向きになった。





祥吾からの話を聞き、友則は『藤堂法律事務所』に向かった。

智之の先輩が担当となり、細かい話をあらためて聞いてくれる。

これからどんなふうに相手方に話を持って行くのか、こう言われたら、こう返すなど、

色々なパターンを考え、マニュアル作りをしてもらった。



「いやぁ……たいした人だった。向こうの言い分に対して、新しい面を発見し、
それをズバッと責めていくことになって」

「新しい面ですか」

「そうなんですよ。元々、向こう側の弁護士は、
うちの店のトラブルなどを解決するためにお願いしていた男なので、
その業務的に秘密にしなければならない売り上げの実態や、
店の経営の色々を女に話し、そこで作戦を立てていたことが、
『契約違反』に当たるのではないかと、そうズバッと!」

「まぁ……それは確かに」

「ですよね。だとすると、逆にこちらが訴える要素を持ちますよと……」


友則は、おちょこに入った日本酒を飲むと、スッと前に出す。

華絵はすぐに徳利を持ち、お酒を注いだ。


「あ、すみません」

「いえ……」

「あのさ……」


友則の横に座る祥吾が、そこで声を出す。


「なんだ」

「『かをり』で話すことじゃない気がするんだよね、俺」

「どうしてだ」

「いや、叔父さんさぁ、俺に報告をするって、電話でそう言ったよね」


祥吾は『俺だよね』という意味で、自分の胸を軽く叩く。


「あぁ、言ったよ。だから報告しているだろう」


友則は『ねぇ……』と華絵を見る。


「本当にすみません……」


祥吾は華絵に『申し訳ない』という顔を見せた。

華絵は『いいんですよ』と笑い返す。


「今川さんにしてみたら、ピンチが急に訪れて、それを祥吾さん始め、
みなさんの協力で乗り越えられそうだと、そういうお話なのでしょう。
嬉しくなって、話をしたくなるお気持ち、わかりますし」

「さすが女将! そうなんですよ、そう」


祥吾は『違うだろう』と思いながら、友則を見る。


「奥様も息子さんも、きっとほっとされましたよね」

「奥様? はて……誰のことか」


友則の『不思議そうな顔』を見ながら、華絵は『ダメですよ』と首を振る。


「叔母もほっとしたみたいです。これに懲りて、少しおとなしくなれと、
きっと思っていると……」

「いやいや、愛美はそんな小さいことは言わないよ。あいつは俺なんかより、
とてつもなく心が広いんだ。だから、これからもこんな感じだろう」


友則は余裕がある顔を見せ、華絵に笑いかける。


「いやいや叔父さん。今度ばかりは反省しろって」

「素敵なご夫婦ですね……」

「ご夫婦? はて……誰のことか」


友則はそう言って笑うと、何かを思い出したのか、『パチン』と両手を叩く。


「そうだ、祥吾。これも縁だと思って、『藤堂法律事務所』に、
うちの新しい契約の弁護士をお願いしたんだ。で、ほら、今回お世話になったから、
担当の先生と、あと……お前の同僚さん?」

「細川のこと?」

「そうそう、お兄さんも含めて、『カリーナ』に招待しようと、
勇也が、珍しく気をつかってな」

「珍しくないよ、あいつなりに今回はどうなるかと、結構大変だったんだから」


祥吾は、勇也にも『謝っておくように』と友則に迫る。


「はいはい」


友則はそういうと、じっと祥吾を見た。

祥吾は『何?』と聞き返す。


「いや、祥吾は俺と違って立派だなと思って」

「……なんか嫌みだな」

「いやいや、本当にそう思ってますよ」


友則は祥吾と顔を反対側に向けると、ニヤリと笑う。

ガラッと扉が開き、3人の男性が入ってきた。


「いらっしゃいませ……」


華絵はこちらにどうぞと、テーブル席を案内した。


【24-5】



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