25 見てください、こっちです! 【25-1】

25 見てください、こっちです!


【25-1】


そして、『カリーナ』での食事会の日がやってきた。

智恵の兄と、トラブルを担当してくれた先輩弁護士2人がビルの前に到着し、

それを出迎えた『KURAU』の5人が揃って挨拶をする。


「智恵の兄です。妹がお世話になっています」


そばに立つ智恵が、詳しい自己紹介などは後からでも出来るからと兄の智之に言い、

『KURAU』5名、『法律事務所』3名の計8名は、揃って『カリーナ』に入った。


「いらっしゃいませ」


『この日だから』と、一行を出迎えたのは、しっかりと制服を着た勇也になる。


「あれ? お前、自分の店は」


いるはずがないと思っていた勇也に会ったため、祥吾はそう尋ねた。


「自分の店はお願いしてきた。今日はこっちでしょう、今川家の息子として、
いや……最上祥吾の従兄弟として、どう考えたって」


勇也は『意味深』な台詞にもとれることを言い、

さらに、いつもならすることがない、『満面の笑み』を見せる。


「何?」

「だから、今川家総出で、『KURAU』のみなさまも接待しないと……」

「接待はこっちじゃないって」

「ほらほら、いいから、中に」


勇也は祥吾の反応は無視したまま、『奥へどうぞ』と全員を案内した。

メンバーたちは、おしゃれなお店だと口々に言いながら、席に向かう。


「どうも……オーナーの今川です。今回は色々とみなさんにお世話になり、
本当にありがとうございます」


弁護士事務所の3人は立ち上がって挨拶をしたが、

『KURAU』組は、出来事とは無関係のため、

どうしようかとそれぞれが顔を見合わせる。


「あの……」

「こちらのみなさんが『KURAU』のみなさんですね」

「はい。すみません、私の兄の流れで私たちまで……」


智恵は、メンバーを代表するように挨拶をする。


「いえいえ、何を。今日は来てくださって嬉しいです。
祥吾がいつもお世話になっています。叔父の今川友則です」


祥吾は立ち上がり、友則の横に立つ。


「こちらが今回、お兄さんの事務所を紹介してくれた細川さん。
で、隣にいるのが……」

「山内雄平です。最上さんと同じ『第2企画部』で働いています」


雄平の挨拶に、友則は小さく頷く。


「えっと……同じく島津小春です」


小春は立ち上がり、雄平の隣で挨拶をする。


「はい、あなたが島津さん」


小春が頭をあげたため、順番がひかりになる。


「同じく、『第2企画部』の浅井ひかりです」

「浅井さん」

「はい……」


友則は何も言わないまま、何度も頷き、とにかく座って下さいと椅子を引く。


「どうぞ、今日はコースを用意していますので、何も気にせず、考えず、
とにかくゆっくりしてください」


友則はそういうと祥吾を見て、『ニッコリ』と笑う。

祥吾には、勇也といい、友則といい、明らかにおかしな態度に見えてくる。

妙な仕掛けてもあるのではと店内を軽く見てみるが、二人の態度以外は、

何もおかしなところは感じない。


「何から何まで、あらゆるところを任せておけ、祥吾」

「は? あらゆるところって何」

「いいから、いいから」


友則は、祥吾の肩を軽くポンポンと叩くと、カウンターの奥へと消えていった。





『カリーナ』の料理は評判がいいこともあり、メンバー全員の箸も進んだ。

お酒もワインやビールが置かれ、自由に飲んでいく。

気分のよくなった智恵の兄の智之から、智恵が小さい頃の話などが披露された。

智恵は、『そういう恥ずかしいことを言わないでよ』と慌てて止めるが、

雄平が、『小さい頃から完璧なわけが無いだろう』と、ツッコミを入れていく。

会が始まって2時間くらい経とうかという頃、『こんばんは』と声がかかった。

祥吾が後ろを振り返ると、そこに愛美が立っていることがわかる。


「叔母さん……どうしてここに」

「あら、どうしてって当たり前でしょう。
今日はお世話になった人たちを接待する日だもの。今川家総出だと、そう言われたし」


愛美は『祥吾の叔母の、今川愛美です』と挨拶をする。

ひかりは以前、『みらいず』で会ったことがある人だと思いながら、軽く頭を下げた。



『ウソばかり書いてしまったので……今回は……』

『大丈夫ですよ。お相手はぜひと言われていますし……』

『いや、あの……』



ひかりは祥吾を見ながら、あのおかしな見合いのきっかけを作ってくれた人が、

この叔母さんだったことを思い出す。

後から『KURAU』で会うことになるとはいえ、『見合い』の出来事が、

互いにインパクトを残したことは間違いない。


「先生方も、たくさん食べて飲んでくださいね」

「あ、今日はありがとうございました。こんなふうに招待していただいて、
申し訳ないくらいです」

「いえいえ、こちらこそ、本当に助けていただきましたから。
これくらいでは足りないです」


恐縮した智之の挨拶に、愛美はしっかりと頭をさげる。


「自分勝手で、わがまま放題の『元主人』ですけれど、
息子がいるので一生縁が切れませんし……」


愛美はそういうと、楽しそうに笑う。


「少しはおとなしくなるよ、叔父さんも」


祥吾は愛美を見ながら、そう声をかけた。


「なるわけないでしょう、あの人が」


愛美は『友則は友則らしく生きたらいいのよ』と笑い出す。

祥吾は、元夫婦だろうが、夫婦だろうが、この2人は変わらないなと思いながら、

グラスに残ったワインを飲む。

食べ物もなくなり、そろそろという雰囲気が出始めたところで、智恵が立ち上がった。


「あの……すみません」


智恵は自分の携帯を出し、写真を撮ってもらえないかと愛美に頼んだ。


「すみません、私、来年の春に退社をするんので。こんなふうに集まる会も、
これからあるかわからないし、今日の会を思い出にしたくて……」

「あ、はいはい。そうよね、カメラよね」


愛美は奥にいる勇也を呼ぶと、『店のカメラ』を持ってくるように指示を出した。


【25-2】



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