25 見てください、こっちです! 【25-4】


【25-4】


「クシャン……」

「風邪ひいてないですか? さっきから、何度もくしゃみして」

「いや、そんなはずはないけど……」


愛美と勇也が言い合っていた時、ひかりと過ごしていた祥吾はくしゃみをし、

そばにあったティッシュの箱を持つと、軽く鼻をかむ。


「クシャン……」

「あ、ほら、もう」


ひかりは祥吾のおでこに手を当て、自分のおでこの熱さと比べてみる。


「どう?」

「全然わからない。でも、熱はないと思う」

「だろ、別に風邪だって意識ないしさ」


祥吾はもう一度ティッシュを数枚取り出すと、鼻をかんだ。


「あ、そうだ、これ、待ち受けにしました」

「待ち受け? あぁ、この間の写真か」

「そうです……って、そうだ。この間、会の最後に写真を撮って。
勇也さん……でしたっけ? ポラロイドで」

「あぁ……あれは店のサービスだからね。誰かもらってたよな」


祥吾はつかったティッシュを軽くまとめ、ゴミ箱の中に入れる。


「写真は、智恵さんのお兄さんが持ち帰ったと……」

「『カリーナ』は誕生日だとか『記念』だとか言うと、写真を撮ってくれたり、
前菜をサービスしたりするんだ」

「それはそうかもしれませんが、あの日、智恵さんが携帯出して、
私と小春も携帯を出したんです」

「うん……」

「だから今川さんの奥さん、あ……祥吾さんの叔母さんがシャッターを
押してくれたのですが、それが……」

「何かおかしいの?」

「押された回数、4回だった気が……」


ひかりは智恵と小春と自分なので、3回でいいのではないかと言いながら、祥吾を見る。


「4回?」

「そう……こっち見てって、確か4回」


ひかりは思い出しながら、指を折っていく。


「うん……やっぱり4回」

「それって、叔母さんが4回シャッターを押したってことだよな」

「あ……たぶん……」

「まずいぞ、それは」


祥吾は慌てて携帯を取り出すと、『みらいず』のサイトを開いた。

『入会希望ですか』など、文章が出てくるが、それを無視したままスクロールする。


「どうしました」

「叔母さんがもし、自分の携帯を使って、シャッターを押したとしたら、
また『みらいず』に無断使用される」

「エ……」

「言っただろ、俺はそもそも入会していないのに、
叔母さんが勝手にリビングで、人の写真を撮って、勝手に文章を書いていたって」

「それは聞きましたけど……」


ひかりは、全員が写っている写真では意味がないと言おうとしたが、

そういえばと思い出す。


「あ……そういえば、私、祥吾さんの隣になってました」

「あ……」


人がいたこと、バタバタしていたこと、

さらにあの後、友則のとんでもない発言が飛び出し、祥吾の頭も、ひかりの頭も、

そんなことはすっかり忘れていた。

あらためてひかりが写真を見てみると、祥吾とひかりは隣同士になっている。


「ほらほら、こういう連中なんだよ、あの今川家は」


祥吾は『みらいず』のサイトを隅々まで見ながら、

どこかに写真が出ていないかと探し続ける。

ひかりも『みらいず』のサイトを開き、自分の名前と祥吾の名前を、

あえて入力してみた。



『登録されておりません』



「登録、されていませんって出ますよ」


ひかりは、とりあえず使われていないのではないかと、祥吾に話す。


「しばらくチェックしないとな……。今はないにしても」

「きっとないですよ、そんなこと」

「甘いって……」


祥吾はそういうと、またむずかゆくなり、ひかりから顔をそらしてクシャミをする。

ひかりは『病院に行った方がいい』と、エアコンの温度をさらに上げた。



「はい、送信完了……写真とコメント、どちらも完璧」


祥吾が愛美に疑いの目を向け始め、サイトを見ている時、

本人はやるべきことをこなし、両手をあげそこで背伸びをしていた。

少し前までここで笑っていた勇也は、自分の部屋に入り、

マンションを引き払ってからよく来る友則も、稼ぎ時のためここにはいない。


「祥吾って……義姉さんに似てるかな? 口元は兄さんだと思うけどな」


愛美はそう言いながらしばらく写真を見ていたが、

インターフォンを鳴らす音がしたため、ノートパソコンを閉じた。





新年になり、秋から選抜メンバーが取り組んできた

『KURAU 50周年記念』の商品が正式に決定した。

そして、3月いっぱいで智恵が『KURAU』を去ることも、発表される。

頼りになる先輩として尊敬されていたため、鈴本をはじめとした後輩達も、

みんな寂しいという表情を見せた。


「大竹君が涙ぐむから、私まで泣けてきそうでした」

「本当、本当」


3人でのランチタイム。ひかりはそう話すと、智恵の顔を見る。


「何言っているの二人とも。まだ退社は3月だよ、ギリギリまで頑張るから」

「わかってますけど……」


ひかりは小春と顔を見合わせ、頷く。


「でもさ、なんだかね、最初は継がなくてもいいんだぞなんて言っていた親が、
私がこうすると決めてから、急にやる気になってしまって」

「お商売ですか?」

「そう」


智恵が、戻ってくることを考え、お父さんが仕事を引き継ぐ気持ちになっていると、

近況を語り出す。


「私もね、やるからにはやらないととそう思っているの。ネットでの注文とか、
これからは伝統だけではない部分に、力を入れていかないと」

「へぇ……ネットですか」

「そう。元々、日持ちもするし、出来るのよ、そういうこと」


智恵は、実際、気持ちが向こうに寄りつつあると笑い出す。


「あ、そうだ、向こうで落ち着いたら連絡するからさ、そうだな、夏頃かな。
ひかりも小春も、最上さんや山内さんを誘って、遊びに来て」

「長野にですか?」

「そう、いいでしょう」


ひかりと小春は『もちろんです』と返事をする。

智恵は田舎だけれどいいところだよと、地元を軽く宣伝した。


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