6 裏切りの恋 【6-2】


【6-2】


「プレゼント?」

「そうだよ、ラジコン飛行機、やったんだろ」


仙台は、恵利が歩いて行った方へ指を向ける。


「プレゼントというより、玉田さん、
僕がラジコン飛行機を飛ばす趣味があるって話をしたら、興味があるって、
何度か会に来てくれて。でも、飛行機持っていないし、
それじゃ、飽きてしまうだろうなと思ったので……」

「それはお前の理由だ、見ただろ、あのウキウキな顔」

「ウキウキ?」

「そうだよ。玉田にしてみたら、お前が自分と一緒に楽しみたいと思っているんだって、
絶対に考えているぞ」


陽人は、ラジコン飛行機を買った時のことを思い返した。



『いいでしょ、これ。初心者にはこれが向いてますよ。
でも、結構、壊れやすいんですよ。なので、スペアってことで2台どうかな』



2台購入すれば、1.5台分の金額でいいと言われ、購入に踏み切った。


「プレゼントしたのは……」


陽人の頭の中に、見事な花束を作り出す、栞の表情が浮かぶ。


「うーん……」

「まぁ、お前がそういういい意味での鈍感男だから、あの嫌みな部長の攻撃にも、
耐えていられるんだろうな」


仙台はそう言った後、誰もいないことを確認し、陽人のことを手招きする。

陽人はベンチから立ち上がり、仙台の横に立った。


「なぁ、ここだけの話だぞ。部長さぁ、趣味で『援助交際』しているらしい」

「趣味? 援助交際って、そんなこと趣味って言えますか。それって……」

「シーッ、声に出すなって」

「いや……でも」

「あの人、羽振りがいいだろう。部長職だから、それなりに給料はあるだろうけれど、
とてもそれだけじゃない金の使い方をするんだ。それも、年上の奥さんが、
相当、いい企業の株を持っているらしいんだよね。で、夫婦の仲は冷え切っているから、
どうぞ、ご自由に遊んで頂戴と、そう言われているって……」


仙台は、その噂が流れるようになったのは、この2年ほどだと話を付け足していく。


「援助交際って……」

「まぁ、見た目も結構いけてるし、金もあるだろ。元々会話もうまいから、
納得して着いてくる女も確かにいるだろうよ。でさ、ここのところ、
お前に辛く当たっていただろ。だからみんな言っていたんだよ、
新しい相手がまだ、見つからないんだってね」


仙台は、部長の機嫌がいい時は、相手が見つかったときだとそう言うと、

吸っていたタバコを灰皿に押し当てる。


「相手……」

「あぁ……」


すると、営業部の扉が開き、中から噂になった部長が姿を見せた。

仙台はすぐに陽人の背中をポンと叩く。

それを合図に陽人は向きを変え、通り過ぎそうになる部長に、

お疲れ様ですと頭を下げる。


「おぉ、新堂。どうだ、それから」

「あ……はい」


陽人は、頑張ってはいるものの、なかなか成果が出ないのだと、正直に語った。

いつものように、また、嫌みのひとつを言われるのだろうと考える。


「うーん……」

「すみません」

「いや、なかなか思うようにはいかないさ。お前の仕事は、時間がかかるものだから、
まぁ、じっくりやりなさい」


あまりにも、あっさりと拍子抜けするようなセリフが飛び出たために、

陽人は思わず仙台の表情を確かめる。仙台は、黙ったまま小さく頷いた。


「仙台」

「はい」

「お前は営業がうまいからな、新堂にアドバイスをしてやってくれ」

「はい……」


過ぎ去っていく上司の姿が見えなくなり、仙台は『ふぅ』と息を吐き出した。

陽人は、黙ったままで言葉が出なくなる。


「はい、決まりましたよ、次の相手が」

「仙台さん」

「見ればわかるだろう。あの機嫌の良さ。
まぁ、しばらく面倒なことは振られないんじゃないの?」


仙台はまた新しいタバコを1本取り出し、火をつける。



「……多田部長」



仙台の言葉に、陽人は黙ったまま、返事をすることが出来なかった。





『もう一度、会ってください。話したいことがあります』



栞は、仕事中だと思える多田に対して、そのメールを送信した。

月曜日の雰囲気から、別れを切り出されたのに、こうしてもう一度と言うことが、

どういう意味を示すのかも十分理解し、考えてのことだった。

父親と言えるくらい年の離れている男性。しかも、多田には守るべき家族がいる。

長い幸せが続くとも思えないし、ゴチャゴチャした争いの中に巻き込まれるのも、

のぞみではなかったが、『求めている』という多田からの思いが、

栞の気持ちをまっすぐに走らせた。



『明日かあさって、栞ちゃんの都合で構わないよ』



多田からの返信メールは、30分後に届けられた。





「いらっしゃいませ……」

「いらっしゃいました」

「……なんだ、朱音か」


昼過ぎの『ライムライト』に顔を出したのは、朱音だった。

良牙は、好きなところに座れと合図を出す。


「栞だと思ったでしょ、良ちゃん」

「思わないよ。あいつならこの時間に来ないから」

「ウソ、ウソ、私か……って、ちょっとがっかりしていたでしょ」

「するか!」


良牙は食事くらいしていけよと、メニューを前に置く。

朱音は、栞がいつも美味しいと言っているからと、『ナポリタン』を注文した。


「栞、あれから来ないの?」

「あれ?」

「そう、ほら。良ちゃんから連絡もらったでしょ。栞のことで。
私、その夜にさっそく言ったよ。で、それからってこと」

「あぁ……来てないね」


多田と個人的に外で会うことに、良牙も朱音も反対をした。

栞は、それから店にまた顔を出さなくなったと、良牙はフライパンを動かし始める。


「ふーん……」

「あいつ、その男と会っているのか」

「食事はしたみたいだよ」


良牙は、一度つけた火を、素早く消した。


「あいつ、会ったのか」

「1回だけだって」

「1回って……」

「良ちゃん、『ナポリタン』作って」


朱音の指摘に、あらためて良牙は、コンロの火をつける。

フライパンがカシャカシャと動き、分けてある具材を中に入れていく。

油と麺と具材がバラバラの状態から、少しずつ混ざり始めた。


【6-3】



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