11 サンタの贈り物 【11-5】


【11-5】


「乾杯!」

「もう、何度目だ」

「いいから、いいから」


忘年会をしようと言われ、『ダイヤモンド』に入る。

隣にはお決まりの『まりか』が座り、ヘルプの女の子が1人、俺の隣に座った。


「で……何だ、話って」

「もう話すのか?」

「当たり前だろう。何しに来たんだ」


俺は部屋でいいと言ったのに、『ダイヤモンドでないと……』と設定したのは、

瑛士の方だ。まさか『まりか』といちゃつきたいという理由じゃないだろうな。


「ほら、まりか、出してやってくれ。俺のせっかちな友人に」

「はぁ~い」


まりかは返事をして立ち上がると、一度裏に消える。


「何があるんだ」

「数日前に、『ダイヤモンド』に来た店の客が、
『なちゅあ』のことを悪く言っていたらしい」

「『なちゅあ』を」

「あぁ……弁当を買ったら、髪の毛が入っていたとか、
ご飯が軟らかすぎて食べられなかったとか……。まぁ、周りに、聞こえるような声で」

「は?」


今度は『口』での攻撃。

ビラなどと違って、証拠が全く残らない。


「で、まりかは、俺たちが前に『なちゅあ』のことを話していたのをわかっていたから、
その客にどこの店なのか、どんな人がやっているのかと、あえて聞いたらしい」


瑛士の隣にまりかが戻ってくる。


「なぁ……相手、近所の人間だったんだろ」

「あ……そうみたい、これ」


まりかはコースターを持ってきて、その裏を見せてくれる。


「そんなにひどいものを売るの? と聞いたら、『絶対に買ったらだめだよ』って。
文句を言ったのは、『ヴォルクスタワー』の東通りにある、不動産屋の息子さん」


その男は、まりかの営業トークにすっかり気分をよくして、

頼んでもいないのに、店の名前、電話番号を残していった。


「引っ越しとかする気持ちがあったら、ぜひって。
まぁ、電話番号を残すことはよくあるから、ほとんど捨てちゃうけれど、
『なちゅあ』がらみだったし」

「よしよし……お前は偉い」


瑛士はまりかの頭を、何度かなでてやる。


不動産屋の息子か。

つまり、地元の人間。

やはり『べにのや』がらみという予想は、間違いないだろう。

それにしても『ダイヤモンド』で話しているのだとしたら、

ここより赤坂井に近い店でも、確実に言われているだろう。


「探偵に頼んだのか? 調査」

「あぁ……年が明けたら、報告が入るはずだ」

「そうか」


俺は、彼女が警察に出て行くつもりはなく、

ビデオを撮って、客にデマだとアピールするつもりになっていることを話す。


「ビデオ?」

「あぁ……だからそれは無駄だって教えて。で……」

「へぇ……結構会って、話をしているんだな、なんだかんだと」


瑛士は『なかなかやるねぇ』とからかってくる。

それにしても、どうして『なちゅあ』がそこまで嫌がらせをされるのだろう。

もしかしたら、『七王子』の叔母さんが……



いや、それはあまりにもおかしな話だ。



「そういえば、お前、まりかとは距離を置くとか言っていなかったか」


まりかが席を外した時に、そう聞いてみる。


「あ……話していなかったか」

「何を」

「ほら、親父が紹介しようとしていたお嬢さんのこと」

「何も聞いていないけれど」


そう、駐車場などを持つ、母親の知り合いの娘。

瑛士もそろそろなんて、覚悟を決めるようなことを言っていたのだが。


「それがさ、あれからお嬢様、妊娠していることが判明したそうで」


お嬢さんは、大学時代の同級生と再会し、

恋の熱を燃え上がらせてしまったのだと、瑛士は説明する。


「人生は、どうなるのかわからないからおもしろい。
ま、そんなこことで話が流れたわけだ」

「ほぉ……」

「まだしばらく自由に暮らすよ。俺は俺」


瑛士はそういうと、来年早々、交渉でスペインに行ってくると話をする。


「スペインか」

「そう、情熱の街で暴れてくるよ」

「はいはい、どうぞ」


俺は、まりかからもらったコースターの電話番号と名前を見ながら、

絶対に捕まえてやると、決意をあらたにした。





仕事を終え、新しい年を迎える『七王子』の村井家。

毎年のように、ゴロゴロと過ごし、昼なのか夜なのかわからない生活を……



と思っていたのに、ここは『箱根』。

真新しい畳の匂いと、何もしなくたって24時間温泉入り放題。

とりあえずテーブルの上にある小さな和菓子の袋を……



指で弾いてみる。



「なぁ、年末年始だぞ、いつ予約していたんだよ、ここ」

「あら、話しをしていなかったかしら」

「記憶にある限りでは、何も聞いておりませんが」


いつも、正月は家で寝て起きてを繰り返す両親が、

なぜか今年は『箱根』に予約を取っていた。

俺は家に一人でいると最初は断ったが、『ヴォルクスタワー』と違い、

建物の中で、全てがまかなえるほど、まだ『七王子』は発展していない。

家で過ごす予定のなかった両親は、冷蔵庫はできるだけ空にしたらしく、

お袋がいないとなると、食べ物を買いに行くことが面倒になりそうだったので、

仕方なく着いてきたが……


「あ、お父さん、もうこんな時間。ほら、急いでください」

「わかっているよ」


日本の風情、除夜の鐘を聞き、さらに今日はまだ2日だと言うのに、

朝から張りきって起きている両親。

そう、今日は2日。

何をするのか、出かける格好でなんとなく予想がつくが、とりあえず聞いてみる。


「朝早くから、どこにお出かけで?」

「早くはないわよ、彼らはもう走り出しているもの」


『彼ら』?


「……この日のために必死の練習をしてきた学生達」


正月恒例の『箱根駅伝』。

どうも、その応援に向かうらしい。


「誰か知り合いでも出るのか」

「特に……」




知らない人を応援するのか、ご苦労なことだ……


【12-1】




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