26 『環境』を変えよう 【26-1】

26 『環境』を変えよう


【26-1】


『あまりにも、かわいくて……』



昨日の今日、涼太郎さんに会うのは少し照れくさい。

こういうとき、職場が同じというのは、いいような悪いような。


「尾田さん、ちょっといい?」

「はい」


『P』に呼ばれて奥に入る。


「レジ、1台増えるからね」


『P』は『ハウスフレンド』が目の前に出来たのにも関わらず、

売り上げを下げずに頑張っているこの店を、本部も非常に評価していると、

機嫌良さそうに話し出した。


「涼太郎さんは本当にたいしたものだよ。若くてまだ年数もそれほどではないのに、
成績はいいし。切り替えも早くしてくれるから、在庫で奥があふれかえることもない」


そこは私もしっかり頷く。


「どこに入りますか、一番奥の……」

「だね、フライヤーの位置とか、綺麗に動かしていって、3台入れないと。
夕方以降は結構、厳しいらしいし」

「近頃、朝と昼も……」

「あ、そうそう。『タグマート』潰れちゃったし」


『P』なら知っているだろうか、閉店の理由。


「売り上げがよくなかったのですか、そのお店」

「ん? いや……ここだけの話、揉めたらしいよ」

「揉めた? お客様とですか」

「いやいや、『タグマート』側と、土地の持ち主が」


この『柚原駅前店』のように、マンションの下にある店舗もあるし、

駐車場を持ち、独立した店舗もあるのがコンビニ。

上で経営していた店舗は、独立型だったらしく。


「『タグマート』はどちらかというと、昔からのやり方を強要するからな。
他でも揉めたって聞いたことがあります」


本部側とオーナー側。


「うちもね、『柚原駅前店』のように優秀なお店が揃ってくれたらいいですけど、
世の中、そううまくはいかないですよ」


『P』はそういうと、何やらパソコンで打ち始める。


「すみません」

「あ、こちらこそ、すみません……急がせて」


涼太郎さん……


「こんにちは」


あなたは……誰?


目の前に現れたのは、涼太郎さんプラス、知らない女性だった。





『プロフェッショナルパーソン』は、数年に1度変わるので、

今日から新しい人だと連れてきたのかもしれないけれど、それにしてはまだ若い気がする。

私は一度店内に戻った。


「ねぇ……今女の人が来たけれど、誰」

「わかりません」

「今の『丘野1丁目店』の娘さんじゃないかな」

「『丘野1丁目』?」

「ほら、今話をしていた水田家のマンションの……」

「あぁ……あそこ」


鶴田さんと藤田さんの会話がよく見えないまま、私はお客様の対応をする。

『丘野1丁目店』というのだから、別の『スコッチーズ』の人ということだよね。

そろそろ、時間的には私の休憩タイムだけれど、

事務所の雰囲気を考えても、どうだろう。


「すみません……」


涼太郎さんが連れてきた女性は、いつの間にか『スコッチーズ』の制服に着替え、

店内に出てきた。胸にもしっかりバッチがある。


「あ、そうだよね、やっぱり『丘野1丁目店』の」

「はい。お店にいらしていただいたことがありますか」


涼太郎さんが一緒に来た女性は、『柳田夏希』さん。

藤田さん達が話していた通り、『丘野1丁目店』の娘さんだった。


「休憩を取りますよね、私がいますからどうぞ」


夏希さんは、その間自分が立ちますのでとそう言ってくれる。

他の店舗の方なら、当然大丈夫だろうけれど。


「尾田さん……ちょっと」

「はい」


涼太郎さんに声をかけられたため、お店は3人に任せて中に入る。

涼太郎さんと『P』が向かい合って座っているところに入るのはと思い、

空になったドリンクケースを裏にして座った。


「彼女も『TARO』の社員だから、今の話、彼女にもしてもらいたい」

「そうでしたね、わかりました。それなら水田さんとしては、
前向きだと言うことで……」

「いや、俺は……」


涼太郎さんは、少し表情を曇らせる。

何の話をしていたのだろう。


「そう言わないでくださいよ。本部の方針としては、
ここは水田家にとそう言われていまして。
新しい『丘野1丁目店』が入る予定のマンションは、水田家のものですし」

「確かにそれは……まぁ、とにかく」


涼太郎さんは、私にわかるように最初から説明をしてくださいと、『P』に言った。


「あの……お昼を食べながらでもいいですか」

「あ、どうぞ、どうぞ」


ただ話を聞いているだけではもったいないので、私はおにぎりを出す。


「いいよ尾田さん。休憩はまた別で」

「いえ、大丈夫です」


その方が落ち着いて聞ける気がする。


「実は……」


『P』が話をしたのは、『スコッチーズ 丘野1丁目店』のこと。

今朝、藤田さん達との会話で少し話に出ていた『坂上小学校』の近くに、

水田家が建てたマンションがあり、そこの1階には、別の店舗が入っていたが、

夏くらいから商売を辞める話があり、それを聞いた『スコッチーズ』本部が、

『丘野1丁目店』を移転する話を持ってきた。


【26-2】



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